書き出したら止まらない

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【アニメ化決定】牧野圭祐『月とライカと吸血姫』ラノベ第1巻の感想

「連合王国よりも先に、人類を宇宙へ到達させよ」

 

どうも、トフィーです。

 

今回は、牧野圭祐先生の『月とライカと吸血鬼』第1巻の内容について紹介していきます。

 

16年12月に購入して以来、ずっと積んでしまっていたのですが(本当に申し訳ございません!)、アニメ化決定ということで掘り出してみました。
「いや、なんでこれを積んでしまっていたんだ……」と後悔するくらい面白い物語でした。

 

ということで、今さらながら感想などをまとめましたので、よければご覧ください。 


月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 

 

1.あらすじ

宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女の物語。

人類史上初の宇宙飛行士は、吸血鬼の少女だった――。
いまだ有人宇宙飛行が成功していなかった時代。
共和国の最高指導者は、ロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。『連合王国よりも先に、人類を宇宙へ到達させよ!』と息巻いていた。

その裏では、共和国の雪原の果て、秘密都市<ライカ44>において、ロケットの実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。とある事件をきっかけに、宇宙飛行士候補生<落第>を押されかけていたレフ・レプス中尉。彼は、ひょんなことから実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナ・ルミネスクの監視係を命じられる。

厳しい訓練。失敗続きの実験。本当に人類は宇宙にたどり着けるのか。チームがそんな空気に包まれた。
「誰よりも先に、私は宇宙を旅するの。誰も行ったことのないあの宇宙から月を見てみたいの」
イリナの確かな想い。彼らの胸にあるのは、宇宙への純粋な憧れ。

上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を目指す彼らがそこにはいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティがここに。

 

【編集担当からのおすすめ情報】
『HiGH&LOW』や『ペルソナ5』などの脚本・シナリオに携わった、牧野圭祐が送る最新シリーズ! 宙に憧れる人間の青年と吸血鬼の少女が人類史上初の有人宇宙飛行を目指します。〈飛空士シリーズ〉のような切なさと爽やかさのある宇宙と青春の物語にご注目!

引用:月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 

2.『月とライカと吸血姫』ラノベ第1巻のレビューと内容紹介

a.評価と情報

個人的な評価:★★★★★
ガガガ文庫
2016年12月刊
『このライトノベルがすごい!2018』文庫4位
2021年アニメTVアニメ化(制作:アルボアニメーション)

 

作者は牧野圭祐(まきの けいすけ)先生。
牧野先生は、今作と同じくガガガ文庫から『フリック&ブレイク』を発表されていたり、他にもゲーム『ペルソナ5』のシナリオチームなどを担当されている方です。

 

イラストは、かれい先生。
電撃文庫より刊行されている『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求』のイラストも担当されています。

 

さて、『月とライカと吸血姫』の話へと戻りましょう。

 

冒頭でも触れたように、今作はアニメ化が発表されています。
このラノ文庫部門4位にも選ばれていることから注目されていた作品ではありましたが、アニメ化発表時のPVで、ヒロインのイリナ・ルミネスクを林原めぐみさんが演じることが判明し、それも含めて話題になっていました。

 

個人的にはPVを見た感じ、期待大です。

 


www.youtube.com

 

b.ストーリー・キャラクター紹介

心の機微の描き方が非常に丁寧で、先へ先へと読ませる力の強い、読み応えのある物語でした。
主人公とヒロインのやり取りにユーモアがあり、最後では感動のあまり手が震えました

 

ぼくは、気に入った表現や面白かった箇所にちくいち付箋を貼っていくという、ちょっと変わった読書スタイルをしているのですが、今回の付箋の量は過去最高クラスだったと思います。


それくらいに大満足の作品で、まごうことなき傑作だと感じています。
マジでもっと早く読んでおくべきだった……。

 

 

それでは感想はこのあたりにして、あらすじとも若干被りますが以下がストーリーの内容紹介です。

 

主人公は、幼い頃から宇宙に憧れ続けている青年レフ・レプス
彼はとある理由から上官に暴力を振るってしまい、共和国の宇宙飛行士候補生から補欠に成り下がってしまっていました。

 

そんなレフですが、突然中将に声を懸けられ、所長室へと呼び出され、ある計画を聞かされます。
その内容は、敵対国よりも早くに人類を宇宙へと到達させるため、吸血鬼(ノスフェラトゥ)を宇宙へ打ち上げるというもの。
共和国はいち早くの『祖国の人間』の宇宙到達にこだわる一方で、万一搭乗員が亡くなってしまった際の世界からの非難を気にしていました。


そこで白羽の矢が立ったのが、吸血鬼。
吸血鬼は人ではないため万一のことがあっても非難されず、また『人類初の偉業』にはカウントされないため、安心してリスクの分析に使用できるという判断です。
レフはどういうわけか、その吸血鬼の訓練を担当するマネージャーに抜擢されたのでした。

 

吸血鬼は『呪われし種』として認識されており、レフ自身も幼いころから様々な言い伝えを聞かされていたため、内心ビクビクです。

 

しかし、吸血鬼の少女ーーイリナ・ルミネスクに実際に会って話をしてみれば、聞かされていた内容のほとんどが誤解であり、吸血鬼のイメージが勝手に人間により作られたものであることに気づきます。

 

実験体である吸血鬼はモノ扱いせよ。


そのような命令を受けていた主人公ですが、意地っ張りでツンツンした態度のイリナと一緒に時間を過ごしていくなかで、葛藤を抱えていきます。
またイリナも人間嫌いの吸血鬼でしたが、徐々に態度を変化させていくのでした。

はてさて、策謀渦巻く世界の中で、二人の関係はどのように変化していくのか。
そして、イリナは無事に宇宙へと到達できるのか。
それは、ぜひ本編でご覧ください。

 

 
以下に、すでに読み終えた方や結末を知ってからでないと読めないという方に向けて、ネタバレありの感想もつづっています。
 
未読の方はご注意ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

3.『月とライカと吸血姫』ラノベ第1巻ネタバレありの感想

感動できるポイントやグッとくるポイントがいくつもあったので、中でも印象に残った箇所をピックアップしていきます。

 

➀P195のイリナの台詞

「私が熱さに弱いの知ってるわよね?」

引用:『月とライカと吸血姫』第1巻

吸血鬼の熱さに弱いという特性と、熱く語るレフの姿に心を傾かせているようなニュアンスがおそらく含まれていて、グッときつつも「うまいなぁ」と唸らされました。
このようなセリフ回しも本作の見どころだと思います。

 

➁P256で明かされるナタリアの正体

ナタリアが「運送屋」であることは、検査のシーンでうすうす、バーのシーンで「これ、やっぱり……」と勘づきはしました。
(と言いつつも、牢に足を運んだ人物がレフの恩師の可能性も考えました。)


それでも、鳥肌が立つほどに面白い。
わかっていても面白く感じるってこれは相当のことで、このあたりで★5が確定した感があります。

 

➂P279のナストイカ

……つぎに、おいしい飲み物を、皆さんに教えてあげるわ

引用:『月とライカと吸血姫』第1巻

 

説明不要。
ここからの流れが、本当にもうセンスの塊

 

 

……と、こんな感じで個人的にはこの3つのシーンがとりわけ印象に残りました。
イリナも無事に宇宙から帰還できて、感動のハッピーエンド。

 

この続きを2巻を購入して読むか、それともアニメを見てから原作に戻るのかは、もう少し悩むことにします。

 

『恋は双子で割り切れない』感想|個性とフェチの暴力【ふたきれ】

 

こんなラブコメが読みたかった!

 

どうも、トフィーです。
今回は高村資本先生の 『恋は双子で割り切れない』を紹介させていただきます。
「尖ったラブコメが読みたい!」という方に、強くオススメしたいラノベでした。

 


恋は双子で割り切れない (電撃文庫)

 

1.あらすじ

 我が家が神宮寺家の隣に引っ越してきたのは僕が六歳の頃。それから高校一年の現在に至るまで両家両親共々仲が良く、そこの双子姉妹とは家族同然で一緒に育った親友だった。
 見た目ボーイッシュで中身乙女な姉・琉実と、外面カワイイ本性地雷なサブカルオタの妹・那織。そして性格対照の美人姉妹に挟まれてまんざらでもない、僕こと白崎純。いつからか芽生えた恋心を抱えてはいても、特定の関係を持つでもなく交流は続いていたのだけれど――。
「わたしと付き合ってみない? お試しみたいな感じでどう?」
 ――琉実が発したこの一言が、やがて僕達を妙な三角関係へと導いていく。
 初恋こじらせ系双子ラブコメ開幕!

引用:恋は双子で割り切れない (電撃文庫)

 

2.『恋は双子で割り切れない』感想・レビュー

a.作品評価と関連情報

個人的評価:★★★★★
レーベル:電撃文庫
刊行:2021年5月
略称:ふたきれ

 

作者は、高村資本(たかむらしほん)先生。
イラストは、あるみっく先生。

 

高村先生は、第27回電撃小説大賞で4次選考を通過したのち、いわゆる拾い上げによってデビューをされています。
投稿時点では『神宮寺那織は、そんな結末(ラスト)じゃ許さない』というタイトルでした。

 

電撃からの拾い上げデビューとなると、『君が、仲間を殺した数-魔塔に挑む者たちの咎-』有象利路先生や、もう少し前だと『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』二丸修一先生がいらっしゃいます。

 

ちなみに両作品とも、当ブログでも取り上げさせていただいています。

www.kakidashitaratomaranai.info

 

www.kakidashitaratomaranai.info

 

 

また、略称は『ふたきれ』のようです。

 

b.作品内容・キャラクター紹介

ラブコメブームが続く昨今ですが、数ある物語の中でも『ふたきれ』はかなり独特に感じる部分が多い作品でした。
読み進めているうちに、特に気になったのが以下の3点。

 

①物語開始時点で、恋愛関係がかなり進んでいる

②47ページまで3人分の独白が続いている

③フェチズムの暴力

 

今回はこの3ポイントを詳しく掘り下げる形式で感想・レビューをまとめていきます。
なお、プロローグのネタバレを少々含みますので、その点はお気をつけください。

 

①物語開始時点で、恋愛関係がかなり進んでいる

まずは、ざっくりとキャラクターの紹介をしておきましょう。

 

白崎純(しろさき じゅん)

主人公
学年主席で読書家。
負けず嫌い。

 

小学生の頃に、神宮寺家の隣に引っ越してきて以来家族ぐるみで親密な付き合いをもつようになる。
つまり、姉妹とは幼なじみの関係。

 

神宮寺琉実(じんぐうじ るみ)

ダブルヒロインのの方。

明るい性格で、バスケ部に所属しており、ひたむきに練習に打ち込むスポーツ女子

主人公の元カノで、互いに失恋を引きずっている。

 

 

神宮寺那織(じんぐうじ なおり)

ダブルヒロインのの方。

重度のオタクで、色々こじらせているありのまま系(?)女子。

主人公の初恋の女の子で、今カノ

ぼくの推し。

 

 

……とこんな感じでざっくりと紹介してしまいましたが、赤字の部分を見ていただければ、見出しの意味をご理解いただけるかと思います。

 

ダブルヒロインもので、片方のヒロインとすでに別れていて、もう一人のヒロインと付き合っているところから始まっている作品は、ここ最近のラブコメラノベには恐らくないのではないかと思います。
(もし該当作がありましたら、Twitterや問い合わせフォームなどからお教えいただけると幸いです。)

 

そもそもラブコメって、主人公とヒロインがカップルになってゴールという作品が多いですしね。
でもこの作品は、プロローグの時点でカップルが出来上がっていて、そこから三角関係によるあれこれが広がっていく。
一つの物語としてちゃんと楽しめる内容となっているんです。

 

②47ページまで3人分の独白が続いている

はい、これまた見出しの通りなのですけれど、より詳細に説明させていただきます。

 

『ふたきれ』は47ページまでが、一人称による独白で占められています。
しかも、純・琉実・那織の3キャラ分です。
序盤での掴みが重視される傾向にあるラノベにおいて、今作には「かなりチャレンジングな構成をされているなぁ」と驚かされました。

 

しかも、各キャラの個性がしっかりと伝わってきて、それがなんとも面白いという……。

また、プロローグに限らず全体を通して独白の癖が強めです。
ぼくが今まで触れてきたライトノベルの中でも、モノローグのユニークさにおいてトップ5には確実に入ってくるかと思います。

 

各キャラ個性的なのですが、強烈だったのは那織のモノローグ。

ぼくとしてはメチャクチャ好きなのですが、人によっては苦手意識を持ってしまうかもしれませんね。

 

以下、作中からの引用に、太字加工をしたものです。
「自分で購入してから読みたい!」という方は、グッとスクロールしちゃってください。

 

ところで私は、どうやら純君をして、サブカル女子という括りになるらしい。いやいやメインカルチャーも好きですけど。何故にそうなった? ともかく、私はそういう扱いらしいようである。全く以て諾了できぬ。

(中略)

私は幼い頃から数多の本を読み、色んな映画を観、様々な音楽とともに育ってきた。
端的に言おう。私のお父さんがそういうタイプなのだ。絵本や映画が好きだった私を、お父さんは照準線(レティクル)の真ん中に据えた。そして、英才教育を施した……と本人は思っている。
思い通りになんてなるか、このSFオタク(トレツキー)め

引用:恋は双子で割り切れない (電撃文庫)

 

③フェチズムの暴力

『ふたきれ』ですが、まだまだ個性的なところがございます。
書くことが多くてブロガー的には助かりますね。

 

この作品には、要所要所で「フェチ」が詰め込まれているところです。
具体的に言えば、「足」の描写が本当に多い! 笑
琉実の締まったふくらはぎについての言及や、那織のムチっとした太ももの描写など……。
詳しくお話したいところですが、Googleの規約的に危うい皆さんが読まれる際のお楽しにとっておいた方がいいと判断したため、まあとりあえずそんな感じです。(雑)

 

ちなみに高村先生も、「足の描写が多い」とTwitterで言及されていますね。 

 

 

 

また「足」だけでなく「匂い」フェチを覗かせるような描写があったり、SFや文学・サブカルなどのネタが豊富に詰め込まれていたりと、あらゆる「好き」が散りばめられていて、メインストーリー以外の部分でもワクワクさせられる作品でした。

このあたりのポイントを意識して読み進めていくのも、面白いかもしれませんね。

 


恋は双子で割り切れない (電撃文庫)

 

www.kakidashitaratomaranai.info

 

 

瀬尾順『死に至る恋は嘘から始まる』感想・レビュー|命がけの恋物語

 

命がけで恋をする、不思議な男女の物語

 

どうも、トフィーです。
今回は瀬尾順先生の『死に至る恋は嘘から始まる』を紹介します。


読み終わるまではライト文芸だと思って見ていたんですが、ブックウォーカーなどをチェックしていると、分類的にはライトノベルとして売り出していたことが発覚。
というよりも、新潮NEXじたいがラノベレーベルのようですね。
ということで、今回より新潮NEXの作品には「読書‐ライトノベル」タグを付けることにしました。
 


死に至る恋は嘘から始まる(新潮文庫nex)

 

 

 

1.あらすじ

「あんただけが、私の恋(うそ)を信じてくれた」一週間だけ、恋人になってあげる――傷だらけの嘘から、永遠(とわ)と刹那(せつな)の恋が始まる――。にがくて甘い究極の「恋と嘘」の物語。
高二の夏、教室で透明なクラゲのように息を潜めて日々をやり過ごしていた宮下永遠の前に、ひとりの目立ちすぎる転校生が現れた。長瀬刹那――人形のような整った容姿に高慢な態度、色めき立つクラスメイトを無視して、まっすぐ永遠へと歩み寄り、そしてその首筋に嚙みついて、ささやいた。「私、人魚なんだ」「君はすごくおいしそうな匂いがする」自称・人魚で傍若無人な美少女転校生・刹那と、心を閉ざし続ける傷だらけの永遠。正反対の「嘘」で武装した二人が運命的に出会い、そして、命がけの「恋」の物語がいまはじまる――。
人を好きになるって、命がけなんだよ――。

引用:死に至る恋は嘘から始まる(新潮文庫nex)

 

 

2.『死に至る恋は嘘から始まる』感想・レビュー

a.評価と情報

評価:★★★★
新潮文庫(NEX)
2021年4月発行

 

作者は瀬尾順(せお じゅん)先生。
著書に『一ナノ秒のリリス』『妹はサイコパス』などがあります。

 


一ナノ秒のリリス (講談社ラノベ文庫)

 

本作の略称ですが、瀬尾先生のTwitterを拝見した感じ、おそらく『死に恋』でいいのかなと思います。

 

b.ストーリー・人物紹介

ざっくりと言うと、今作はもう一度読み返したくなるタイプの物語でした。
ネタバレ防止のため抽象的な言い回しになってしまいますが、読み進めていくにつれて、「あの時のあのシーンはこのためにあったのか」と振り返って驚愕するようなそんなタイプの作風なんです。

 

ただその一方で、わりと人を選ぶ作品でもあるかと思います。
というのも、ヒロインがかなり尖っていて、基本的に主人公以外の人間に対しては攻撃的に突っかかっていきます。
男相手には手や足がでることもしばしば。
そのためこの手のヒロインが苦手な方や、倫理感強めの方には少々あわない作品かもしれません。

 

この物語は、宮下永遠(みやした とわ)長瀬刹那(ながせ せつな)一人称によって進んでいきます。

 

永遠は体中にケガを負い、存在感と潜めてひっそりと生きている男子高校生。
そんな彼のクラスに、長瀬刹那が転入してきます。
刹那は、天上天下唯我独尊を地で行くような、自称「人魚」の女の子。

 

彼女はぶっきらぼうに自己紹介を済ませると、いきなり永遠の近くに寄ってきて頬にキスしてくるのでした。
刹那は赤茶色にオッドアイで、さらには過激な言動を繰り広げることから「痛いやつ」認定されていきますが、永遠に対してだけはグイグイと距離を縮めようとしていきます。

 

永遠は彼女から距離を取ろうとし続けていましたが、あることがきっかけで、刹那と恋人関係になるのでした。 
「一週間だけ僕の彼女になってほしい」
「その後、僕を食い殺してくれ」

 

以上が序盤の内容です。
これより先は「命がけの恋」を繰り広げる男女の物語が展開されていきます。
もし興味を持たれた方は、ぜひチェックしてみてください。


死に至る恋は嘘から始まる(新潮文庫nex)

 

www.kakidashitaratomaranai.info

 

 

 

3.『死に至る恋は嘘から始まる』ネタバレありの感想

名前と同じく真逆の属性のように見える永遠と刹那ですが、クラスメイトたちからすれば2人ともある意味で腫物的な扱いであり、そういった意味でも惹かれ合っていくのは自然な流れだったのかなと思います。

 

一方で気になった点は、姉の人脈とその彼氏でもある探偵の存在そのものが、話を展開上させるために無理やり出てきているようで、そこがちょっと引っかかりはしました。

 

ただ、それでも次々と謎が明かされて結びついていくのが面白かったです。
また、くるりくるりと変わっていくキャラ造形と、プロローグがエピローグでもあったことが判明するラストシーンには心の底から唸らされました。
冒頭の通夜は、永遠のものだったというわけですね。

 

他にも、永遠が母親に虐待されていたという事実や、春日部がいじめをしていたこと、美帆がいじめに加担していたことなど、終盤になって衝撃的な事実が出るわ出るわ。
それらの事実を胸にしまってひとり死のうとしていた永遠の覚悟もなかなかに悲壮で印象的でした。(列挙するとすごいな……)

 

あと、水野くん普通にいいやつだったな……。

三河ごーすと『義妹生活』第1巻の感想|ラノベ初心者にもおすすめ

家族ってええなあ とふぃお

 

どうも、トフィーです。
今回は三河ごーすと先生によるライトノベル『義妹生活』第1巻の紹介をさせていただきます。

 

この作品ですが、他のライトノベルと比べても、かなり異色な内容となっています。

たとえば、1番分かりやすいところでいえば、「タイトル」です。

ライトノベルのタイトル長文化が進んでいく昨今ですが、今回紹介させていただく『義妹生活』はシンプルに4文字。
むしろ逆に違和感があります(毒されてきているラノベ読者)

 

様々な理由から、ライトノベルを読みなれている方にはもちろんのこと、ライトノベルに興味はあるけれど手に取ったことがない……という方にもおすすめで、ライトノベルの入門書としてぜひ手に取っていただきたい物語でした。

 

より詳しい内容などについては、以下で取り上げさせていただくのでよければそのままご覧ください。

 

 


義妹生活【電子特典付き】 (MF文庫J)

 

1.あらすじ

 

同級生から、兄妹へ。一つ屋根の下の日々。

高校生の浅村悠太は、親の再婚をきっかけに、学年で一番の美少女・綾瀬沙季と一つ屋根の下で兄妹として暮らすことになった。
互いに両親の不仲を見てきたため男女関係に慎重な価値観を持つ二人は、歩み寄りすぎず、対立もせず、適度な距離感を保とうと約束する。
家族の愛情に飢え孤独に努力を重ねてきたがゆえに他人に甘える術を知らない沙季と、彼女の兄としての関わり方に戸惑う悠太。
どこか似た者同士だった二人は、次第に互いとの生活に居心地の良さを感じていき……。
これはいつか恋に至るかもしれない物語。
赤の他人だった男女の関係が、少しずつ、近づいていき、ゆっくりと、変わっていく日々を綴った、恋愛生活小説。

引用:義妹生活【電子特典付き】 (MF文庫J)

 

 

2.『義妹生活』感想・レビュー

 

a.評価と情報

 評価:★★★★★
MF文庫J
2021年1月刊行
YouTubeチャンネル『義妹生活』発

 

(色んな意味で)単なるノベライズではなく、チャンネルの運営や原作自体も三河先生が行われているんです。
すでに小説や漫画原作と複数シリーズを刊行されているというのに、この圧倒的なバイタリティ……‼
はたしていつ寝ていらっしゃるのでしょうか……?

 


www.youtube.com

ちなみにこちらがYouTubeのリンクです。
1巻発売前から声優さんがついている作品というのも、電撃小説大賞の『ユア・フォルマ』やスニーカー文庫の『アーリャさん』の宣伝PVなど、ちょくちょくとあったかとは思います。
しかし作家がYouTubeを運営していて、声優さんを起用し、シチュエーションごとに声を当てているというパターンはかなり変わった事例であるといえるでしょう。

アニメ化前から声のイメージが決まっているというのは、初めてライトノベルに触れる方にとっては、頭の中で想像するのに非常に役に立つため、読みやすくなるのではないかなと思います。

 

色んな意味でとカッコを付けたのにはこれまた理由がありまして、YouTube版とライトノベル版では空気感がまた異なるんですよね。
YouTubeはコメディチック、一方でライトノベルは現実に寄せられたような空気感です。
これについては、以下の「作品内容・キャラクター」でより詳しく触れます。

 

刊行されている作品がえげつなく、いつものように紹介するとリンクだらけになってしまうため、今回はタイトルだけにとどめます。


三河ごーすと先生の作品については、過去に『友達の妹が俺にだけウザい』も取り上げさせていただいていますので、よければそちらもご覧ください。

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b.作品内容と感想

今回はネタバレの見出しを用意していません。
というよりも、取り立ててネタバレをする必要がないと感じています。

 

内容としては、ある日、主人公・浅村悠太(あさむら ゆうた)の父が再婚して義理の母と妹ができた。
しかしその妹・綾瀬沙季(あやせ さき)は自分と同じ年齢で、派手な格好をした女の子ーーいわゆるギャルだった。
ただ意外なことに、2人ともドライな一面という共通点があり、互いにうまくすり合わせを行いながら家族としての日々を送っていく、といった感じの物語。

 

最近ラブコメがかなり増えてきており、私自身何冊か手に取って読了しているのですが、『義妹生活』に関しては他の作品と比べても毛色の違う印象を受けました。

 

 

この物語は1日ずつ丁寧に、悠太の1人称で沙季が義妹となってからの日常が描かれていきます。
6月7日、6月8日、6月9日……というように、日付が急に飛んだりすることがないのです。

 

※一日一日が丁寧に描かれていく作品で私の記憶に残っているものだと、『きのうの春で、君を待つ』が挙げられます。
ただこちらはタイムトラベルものなうえに、1日ずつ戻っていく形式なので、単純に比較するのには適さないかと思いますが……。

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『義妹生活』に話題を戻します。
本作にはもう一つ特徴的な点があって、その日その日に起こったことがリアルな空気感で描かれています。
三河先生の著作の『友達の妹が俺にだけウザい』などと比べても、やや文芸チックな文体で、ひょっとしたら現実にもありそうなリアルな空気感がありました。

 

ただ、ライトノベルとしてのとっつきやすさも残っているので、今までライトノベルを手に取ったことのない方にも、初めての1冊として読み進めやすい内容なのかなぁと感じました。

 

余談ですが、自分は読売栞(よみうり しおり)先輩が好きです。
アルバイト先の優しくてちょっぴりウザい先輩とかもう最高ですよね。

 

リンク先で試し読みもできます。
気になった方は、ぜひチェックしてみてください。


義妹生活【電子特典付き】 (MF文庫J)

 

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『隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった』感想

どうも、トフィーです。


今回は雪仁先生のライトノベル『隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった』 を紹介させていただこうかと思います。

 


隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった (電撃文庫)

 

 

 

1.あらすじ

「こちらのお弁当は、どうして半額なのかと思いまして」
 一人暮らし二年目の高校生、片桐夏臣の隣室に黒髪碧眼の美少女が引っ越してきた。その少女、ユイは本物の貴族令嬢らしく、学校でのそっけない反応から付いたあだ名は「クーデレラ」。他人を頼ろうとしないユイだが、実はかなり世間知らずなところがあるのを知った夏臣は、彼女を手助けしていくことを決意する。
「今日の晩御飯は……鶏のからあげ?」
「鶏肉が安かったからな」
「ん、夏臣のからあげ大好きだからすっごく楽しみ」
 お隣同士の立場から、甘々でじれったくなるような関係への日々が始まる――

引用:隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった (電撃文庫)

 

 

2.『隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった』感想・レビュー(ネタバレ少なめ)

a.評価と情報

個人的評価:★★★☆☆
電撃文庫
2020年12月刊行

 

今回は簡潔にいきます。

 

作者は、雪仁(ゆきひと)先生。
雪仁先生は、ゲームライターをされており、今回が初のライトノベルとなります。

 

イラストは、かがちさく先生。
白黒になると印象が変わるイラストも少なくありませんが、今作に関してはカラーイラストと比べても本当にズレがありません。

 

b.作品内容・キャラクター

まずは簡単に、ストーリーを紹介していきます。

 

物語は、隣の部屋に引っ越してきた美少女がベランダで歌っている様を目にしたところから動き出します。
彼女の名前は、ユイ・エリヤ・ヴィリアーズ
彼女ははイギリス人とのハーフで、主人公のクラスへの転入生だったのです。

 

彼女は誰に対してもクールに壁を作り、距離をとろうとしていました。
主人公はそんな彼女と、偶然にも学内の教会で一緒にバイトをすることになります。


そうしてユイと接しているうちに、彼女は単身で渡ってきたこと、世間に疎く放っておけない危うさがあることが判明します。
世話焼きな主人公は、彼女をフォローするようになり、少しずつ仲良くなっていきます。
クールだったユイの態度はしだいに軟化していき、無二の友だちの関係となり、そしてーー。

 

と、こういった感じのストーリーです。

 
「みんなが知らない彼女の一面を自分だけが知っている」、みたいな特別感を押し出したタイプの物語で、それを演出するために定番のイベントが盛り込まれています。


たとえばお隣さんの関係から半同棲状態になったり、ヒロインの食生活を気にして2人で一緒に料理をして夕飯を食べるようになったり、看病シチュがあったり。
そういった王道的な要素をこれでもかと詰め込んだ物語で、この系譜を探している方にはオススメできます。

 

読みながら「なろう発のラブコメ作品なのかな?」と思いましたが、調べてみるとどうやら違うみたいです。
あまりいい例え方ではないかもしれませんが、『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』『氷の令嬢の溶かし方』を足して2で割ったような作品といえば、ラブコメ好きの方にはわかりやすいでしょうか?

 

楽しく読み進めることのできた本作ですが、ネガティブな面について語るのであれば、文章が少々気になりました。


人称が混在している箇所があったところと、誤字がとにかく多かった印象です。
自分は気にせず受け流す方ではありますが、今回は気が散って没入感を損なってしまうほどで……。
おそらく校正さんがついていなかったのかなと予想しますが、2版以降で直っていることを祈りましょう。

 

ただ、物語そのものに関しては十分に面白かったです。
個人的には、カラーイラストにもなっている猫と戯れるシーンと、同じく一緒に寝落ちしてしまうシーンが印象に残っています。
基本クールなユイが、表紙のような笑顔を見せてくれるようになるまでの過程が甘々で魅力的でした。

上でも触れましたが、『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』や『氷の令嬢の溶かし方』のような、1人のヒロインと関係を深めていきつつ、日常を過ごしていくようなラブコメが好きな方にはオススメですので、気になった方はチェックしてみてくださいね。

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『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』感想・レビュー

どうも、トフィーです。


今回は第27回電撃大賞《大賞》受賞作、『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』を紹介していきます。


ロボット嫌いの女捜査官と、ロボットらしからぬ言動をするロボットが、バディを組んで世界規模の電子犯罪に挑む物語です。
受賞作発表の段階では、「本格SFクライムドラマ」と称されていました。
『PSYCHO‐PASS』『攻殻機動隊』などが好きな方には、特にオススメできるかと思います。

 


ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫)

 

1.あらすじ

★第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作!!★
最強の凸凹バディが贈る、SFクライムドラマが堂々開幕!! 

 脳の縫い糸――通称〈ユア・フォルマ〉ウイルス性脳炎の流行から人々を救った医療技術は、日常に不可欠な情報端末へと進化をとげた。
 縫い糸は全てを記録する。見たもの、聴いたこと、そして感情までも。そんな記録にダイブし、重大事件解決の糸口を探るのが、電索官・エチカの仕事だ。
 電索能力が釣り合わない同僚の脳を焼き切っては、病院送りにしてばかりのエチカにあてがわれた新しい相棒ハロルドは、ヒト型ロボット〈アミクス〉だった。
 過去のトラウマからアミクスを嫌うエチカと、構わず距離を詰めるハロルド。稀代の凸凹バディが、世界を襲う電子犯罪に挑む! 
 第27回電撃大賞《大賞》受賞のバディクライムドラマ、堂々開幕!!

 引用:ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫)

 

 

2.『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』感想・レビュー

a.評価と情報

個人的評価:★★★★☆
電撃文庫
2021年3月刊行
第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作

 

作者は、菊石まれほ先生。
イラストは、野崎つばた先生。

 

菊石まれほ先生に関しては、本作がデビュー作となります。

電撃大賞といえば、多くのライトノベル読者や作家志望、さらにはプロ作家も含めて注目する最も有名なライトノベルの賞です。
第27回も4355作品が投稿されており、今作『ユア・フォルマ』はその頂点に君臨した物語ということになります。

そんな感じで元から注目されやすい電撃大賞発の作品ですが、金賞の『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』ともども、発売前に公開されたPVの反響が大きかった印象です。


花澤香菜×小野賢章『ユア・フォルマ』PV【電撃小説大賞《大賞》】 

 

またこちらは過去の電撃大賞《大賞》受賞作の感想記事です。
『声優ラジオのウラオモテ』は昨年の受賞作で、『86-エイティシックス-』は今作と同じ重めのSF(※ミリタリーアクション)です。

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b.ストーリー・キャラクター紹介&感想

今作はユア・フォルマ(「脳の縫い糸」とも呼ばれるスマートデバイス)を、頭に埋め込むことが当たり前になった世界で、電子犯罪の解決に走るバディの物語です。

主人公の少女、エチカ・ヒエダは、国際警察機構(インターポール)、電子犯罪捜査局本部に属する電索官
電索官(ダイバー)は、対象のユア・フォルマに専用のコードを繋ぐことで、記憶を覗き見ることができる特殊な役目です。


そんな電索官の肩書を持つエチカですが、彼女は特別秀でた才能を有しており、それが裏目に働いて、パートナーをことごとく病院送りにしてきました。
というのも、電索は一人では行うことができず、電索補助管(ビレイヤー)によるサポートが必要になるのですが、補助管には電索官と同等の実力が求められます。
能力の釣り合っていない相手と潜ってしまうと、補助官の脳を焼き切ってしまうこともままあり、そのためエチカは何人ものパートナーを病院に送っては恨まれ、不愛想に振る舞うような日々を送ってきました。

 

今作の冒頭でも、さっそくパートナーをダウンさせてしまいます。
そこで新たな相棒があてがわれることとなるのですが、彼女の元へとやって来たのは、なんとロボットの青年だったのです。


ヒエダはとある事情により、ロボットを苦手としており、極力彼から距離を置こうとします。
しかし、青年、ハロルド・ルークラフトは、卓越した観察眼を利用してヒエダの心理を見抜き、ロボットらしからぬフランクな態度で接してきます。


能力はヒエダと釣り合うほどに超優秀、けれども性格の愛称は超最悪。
そんな機械系少女紳士系機械による凸凹コンビが、世界を騒がせる大事件に挑みつつ徐々に心の距離を縮めていく、というのがこの物語のあらすじです。

 

 

面白かったです。
ぼくは冒頭でも挙げたような、『PSYCHO‐PASS』『ハーモニー』みたいな、近未来を舞台にした暗めの物語が大好物なので、同じような趣向の方には刺さりやすいかと思われます。
(ただ、SFが苦手な人や最近の明るめのラブコメ以外は手に取らない方には、相性的に少々厳しいかもしれません。)

 

序盤でなされた、パンデミックによる文明変革の説明はどこか『ハーモニー』を想像させましたし、プロファイリングをもとに真相へと迫っていく様は『PSYCHO‐PASS』と被るところがあります。
そういった作品にもある面白い要素を取り入れつつ、この作品独自の世界観凸凹バディが魅力的で、ワクワクが止まりませんでした。

 

また、序盤といえば、この作品は本文が始まる前に、新聞記事の切り抜きが添付されています。
こうしたライトノベルらしい斬新な演出も相まって、物語へとすんなり入ることができました。

 

もう一点だけいえば、エチカの過去の見せ方が独特で面白かったです。
電索で他人の記憶に潜るたびに、彼女自身の過去が逆流して明かされていくのですが、その見せ方というか魅せ方にオリジナリティがあり、こういった手法も参考になるなぁ……と書き手視点でも楽しめました。

 

あんまり語ると、うっかりネタバレしてしまいそうなので、この続きは以下の、「ネタバレアリの感想」にて語らせていただきます。
最近ではあまりないタイプの作品なので、他の作風に飽きてきた方や硬派な作風を好む方は一度手に取ってみることをオススメします。

 


ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫)

 

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※この先、本作のネタバレがガッツリと含まれていますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

3.『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』ネタバレありの感想

機械系少女紳士系機械」と銘打たれていましたが、読み終えてみれば2人の印象はガラリと変わりました。
エチカは過去のトラウマから自分を押し殺して生きていたただけで、どこまでも人間らしい繊細な少女でしたし、ハロルドには事件解決のために打算的に人間らしく振る舞っていたクールな側面がありました。


そういった「人間と機械」であったり、「それぞれの心の有り様」であったりといった、対照的な性質を持つ2人の関係に着目すると、タイトルの「ユア・フォルマ(あなたのカタチ)」がとてもしっくりときます。
こういった二重三重に意味がかかっているタイトルのセンスは、素直に羨ましいです。

 

世界観と文章がカッチリとハマった作品でしたが、他方で個人的には終盤での盛り上がりにやや欠けている感じはありました。
ただ物語は手堅くまとまっていますし、エチカが自分の意志で電索官に戻る選択をしたのもシミジミとくるものがありましたし、彼女たちの活躍をもっと見てみたいというよう想いもあります。


完成度が高く、好みの作風なので、次巻も手に取ってみます。
第2巻は2021年夏発売予定とのことです。)

 

この手の作品、流行ってほしいなあ……。

海空りく『カノジョの妹とキスをした。』1巻の感想|いもキス

 

 

時には、不純愛ラブコメもいいじゃない 

 

どうも、トフィーです。

 

今回は、海空りく先生のライトノベル、『カノジョの妹とキスをした。』第1巻を紹介していきたいと思います。

 

『このライトノベルがすごい! 2021』文庫部門・第8位にも選ばれた作品ということで、大衆的な面白さは保証済み。
自分はとある理由から、この作品に手を出すことがなかなかできなかったのですが、いざ読んでみると刺さりに刺さりまくりました。

 


カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫)

 

 

1.あらすじ

 

俺が人生で初めての恋人・晴香と、交際一ヵ月にしてやっと手を繋げた日、親が再婚し晴香そっくりな義妹が出来た。名前は時雨。似てるのも当然。時雨は家庭事情で晴香と離ればなれになった双子の妹だったのだ。

「情けない声。ホント可愛いなぁ、おにーさん」
「いけない彼氏さんですね。彼女と手を繋いでいる時に双子の妹のことを考えるだなんて」
「顔も体も彼女と同じ妹にドキドキしちゃうのは仕方ない。おにーさんは悪くない。悪くないんですよ」

淡い初恋に忍び込む甘い猛毒(あいじょう)。
奥手な恋人にはとても教えられない、小悪魔で甘えん坊な義妹との甘々"不"純愛ラブコメ――開幕!

引用:カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫)

 

 

2.『カノジョの妹とキスをした。』1巻の感想・レビュー

 

a.評価と情報

個人的評価:★★★★★
GA文庫
2020年4月刊行
『このライトノベルがすごい! 2021』文庫部門・第8位/新作部門第5位
略称:『いもキス』

 

作者は、海空りく先生。
海空先生は、第2回GA文庫大賞《優秀賞》を受賞し『断罪のイクシード』でデビュー、その後に様々な作品を発表されています。
中でも『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』は、アニメ化もされています。


超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! (1) (ヤングガンガンコミックス)

 


イラストは、さばみぞれ先生。
複数のライトノベルのイラストを手掛けられており、過去にこのブログで紹介した作品の中だと『声優ラジオのウラオモテ』も担当されています。

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さて、『カノジョの妹とキスをした。』に話を戻しますが、上述の通りこちらは『このラノ 2021』において、文庫部門・第8位を獲得した作品です。
確かにめちゃくちゃ面白い物語ではありましたが、このような作風も10代にウケるんだなぁと……という驚いた覚えがあります。
またポイントの比率的には協力者票がかなり高かったことから、多くのラノベを読まれている方たちからしても満足のいく内容であることが分かります。


『このラノ 2021』のノミネート作品については、以下の記事でも触れていますので、もしよければご覧ください。

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b.キャラクター紹介

佐藤博道(さとう ひろみち)

ルックス・運動能力ともに中の下で、勉強はそこそこできる平凡な男子高校生。
中学時代からの念願だったカノジョをに入れ、幸せな日々を送っていたが……。

 

 

才川晴香(さいかわ はるか)

ヒロインであり、博道の恋人
やさしく、かわいく、天然と文句なしの美少女うらやましい
主人公にぞっこんで、告白も晴香の方から。
勉強は苦手。

 

佐藤時雨(さとう しぐれ)

メインヒロイン
そう、カノジョはいるけどこの子がメインヒロイン。

博道とは同年代であり、物語の序盤で主人公の義妹となる。
また、両親(博道の父と時雨の母)が仕事のため海外に残り家を空けているため、1年間博道と2人で生活することになる。

 

晴香は両親の離婚により生き別れた実の姉で、姉妹の関係ねえこれなんて昼ドラ?
その容姿は晴香と瓜二つだが、純真無垢な姉とは異なり、揶揄い癖があり、小悪魔的な性格で、博道もドギマギさせられている。S気のある女の子っていいよね。


晴香のことを心の底から大切に思っており、彼女を不安にさせないために、少なくとも両親が帰ってきて2人暮らしの状況ではなくなるまでは、博道と家族関係になってしまったことは隠し通すことに。


 

姉の名前が「香」なのに対して、この子の名前は「時」なのは、タイトルも合わさって不穏な予感しかしません。

 

c.感想

さて超真面目なキャラクター紹介が終わったところで、次は読み終えての感想を。

 

ラブコメの勢いが熱く、多くの作品が生み出されている近年ですが、この作品はまた違う角度から攻めた内容となっていました。

 

タイトルだけの印象だと、カノジョの妹に惚れられてキスされて、「うわー!どうしようー!」とワタワタするような話だと想像していました。
しかし、キャラクター紹介で触れた通り、この『いもキス』はさらに一捻りも二捻りも加わった内容となっていました。
いやまさか、カノジョの妹というだけでなく、自分の義理の妹にもなるだなんて、さすがに予想できませんよ。

 

それからタイトルが『カノジョの妹とキスをした。』ということで、ネタバレにならないかと思うので言ってしまいますが、この作品には主人公にカノジョがいるにも関わらず、その妹とキスをしてしまうという浮気的な要素が含まれています。

 

時雨は自身の容姿が晴香と瓜二つであることを利用して、あの手この手で博道を揶揄っていきますが、そうしているうちに……というのがこの物語の大筋です。

 

そんな危険極まりない題材を扱っているのに、コメディの部分とラブ要素の演出、そして不純な愛の魅せ方が絶妙で、全体を通して高クオリティでまとめられています。
下手したら主人公・ヒロイン双方にヘイトが向きそうな内容なのに、各キャラが魅力的に描かれているのは、さすがとしか言いようがありません。

 

上で評価は☆5としましたが、ぶっちゃけ☆6をつけたいくらいには突き刺さったラブコメでした。
未読の方にはぜひ、読んでいただきたいです。

 


カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫)

 

 

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また、当ブログでは他にも様々な物語を紹介しています。
もしよければ、次に読む作品探しにご利用ください。

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※この先、『カノジョの妹とキスをした。』1巻の重大なネタバレが含まれています。
未読の方はお気を付けください。

 

 

 

 

 

 

 

3.『カノジョの妹とキスをした。』1巻のネタバレありの感想

 

昼ドラのようにドロッドロな愛憎劇が繰り広げられるかと思いきや、意外にも清純な(?)作風でした。
爆弾こそ抱えてはいるものの、暗黒系ラブコメじゃなくて、むしろ健全(?)なボーイミーツガールだなというような印象を持ったまま読み進めていきましたが、12話あたりから不穏な空気に
そして最終14話でついに、時雨の想いが爆発してしまいます。

 

雨の中ずぶ濡れで帰宅した時雨が、なんとデートの疲れで眠りこけている博道にキスをしてしまうのです。
それにより、自身が博道に対して「恋」をしていることをはっきりと自覚し、2度目のキス。
ここで、博道は目を覚ましますが彼女は引かず、告白してから3度目のキスをし物語が締めくくられました。

 

時雨の一人称による、不穏で背徳的で破滅的で淫靡なこの描写には、思わず背筋がゾクゾクとしましたね。
それまでの日常シーンの描写も見どころ満載で、面白おかしく読み進めてはいましたが、最後の鮮やかなタイトル回収と臨場感あふれるキスシーンによって、自分の中でこの作品の総評が決定的なものとなりました。
いやこれ、ライトノベル作品のラブコメで、1番面白いと思いました。

 

あとがきでも触れられている通り、1巻は人間関係の構築回で、まだ一つ目の爆弾が投下されただけ。
カノジョとの本格的な板挟みも、ドロドロとした愛憎劇も、この段階ではほとんど描かれていません。
ただ、それでもインパクトのある終わり方でしたし、この1冊だけでも1つの物語として完結しているため、納得のいくエンディングだったかと思います。

 

タイトルに「妹」って付いているからって、食わず嫌いせずにさっさと読めばよかったです。
この作品を薦めてくださった知人の方には、最上級の感謝を。
2巻以降も絶対に買います。

 

PSあとがきの勢い好きです。

 


カノジョの妹とキスをした。2 (GA文庫)

 

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【ろしでれ】『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』感想

 

どうもトフィーです。


今日は燦々SUN先生のライトノベル、『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』を紹介していこうかと思います。


この小説ですが、実は発売前から色々と話題になっていて、ぼくにしては珍しく予約してまで購入しました。


以下でどのように話題になっていたのか、またどういった内容のストーリーなのかを詳しく紹介していきます。

 


時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん (角川スニーカー文庫)

 

 

1.あらすじ

 

ただし、彼女は俺がロシア語わかることを知らない。

「И наменятоже обрати внимание」
「え、なに?」「別に? 『こいつホント馬鹿だわ』って言っただけ」「ロシア語で罵倒やめてくれる!?」
俺の隣の席に座る絶世の銀髪美少女、アーリャさんはフッと勝ち誇った笑みを浮かべていた。
……だが、事実は違う。さっきのロシア語、彼女は「私のことかまってよ」と言っていたのだ!
実は俺、久瀬政近のロシア語リスニングはネイティブレベルなのである。
そんな事とは露知らず、今日も甘々なロシア語でデレてくるアーリャさんにニヤニヤが止まらない!?
全生徒憧れの的、超ハイスペックなロシアンJKとの青春ラブコメディ!

引用:時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん (角川スニーカー文庫)

 

 

2.『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(『ろしでれ』)感想・レビュー

 

a.評価と情報

個人的評価:★★★★★
角川スニーカー文庫
2021年3月刊行

 

作者は、燦々SUN(サンサンサン)先生。
イラストは、ももこ先生。

 

略称は『ろしでれ』
発売前から、多くのラノベ読みや関係者に注目されていた作品。
発売前に公式Twitterのフォロワー数が1万5千人を突破し、同じくTwitter上で公開された漫画も大反響。

 

これで重版しなければおかしいくらいに、期待度マックスで世に放たれた『アーリャさん』ですが、ぼくもちゃっかりとAmazonで予約して購入しました。

 

 

【追記1】3月1日に即重版決定、また2巻の発売も発表されました。
絶対に売れるだろうと予想はしていましたが、まさか初日にこれらの発表が来るとは衝撃的です。

 

【追記2】 破竹の勢いで売れまくっていた『ろしでれ』ですが、5月19日に第6刷目・第7万部突破となることが発表されました。
これは最近のライトノベル史において、伝説級といっても過言ではありません。

 

わかりやすい押しポイントに、美麗なイラスト、さらにはアニメなどでの人気も根強かった「ロシア語」要素。
ちゃんと物語自体もしっかりと面白く仕上げられていますし、売れるのも納得だなぁと思います。
また最初からPVなどでガンガンと宣伝もかけられており、プロモーションの力を感じた一冊でもありました。

 

 

なんでこんなに売れるのかといえば、ヒロインが「銀髪&碧眼(通称:約束された勝利のルックス)」なんですもん。
それもこのイラスト、かなりの戦闘力。
今までの銀髪ヒロインの中でも、(当社比)トップクラスのビジュアルです。
こんなん買うっきゃないやないですか⁉

 

……テンションをもとに戻して続けます。
さて、そんな期待度マックスで購入した今作ですが、肝心の中身の方も文句なし、完成度の高い作品でした。
ハラショー‼
 

またあとがきによると、今作は燦々SUN先生のデビュー作で、小説家になろうで出していた短編がたまたま編集さんの目にとまった結果、出版にまで至ったようです。
なろうから書籍化されている作品は、近年ではそれほど珍しくなくなってきていますが、短編からの書籍化は比較的少ないほうかと思います。

 

b.キャラクター・ストーリー紹介

 

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん (角川スニーカー文庫)

引用:時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん (角川スニーカー文庫)

ヒロインの少女、アリサ・ミハイロヴナ・九条日本人とロシア人のハーフ

タイトルにもなっているアーリャ』とは彼女の愛称で、学園内だと姉を除けば主人公の久世政近(くぜ まさちか)のみが、呼ぶことを許されています。


誰に対しても壁を作っているアーリャですが、不真面目なところがある政近に対してだけはツンツンとした態度で厳しく当たります。
周りの生徒たちもそれをヒヤヒヤとした様子で見届けますが、当の政近にはダメージはありません。 


なぜなら、政近にはロシア語がわかるから。
アーリャさんはロシア語でボソリとデレ発言を口にしますが、政近にはそれがすべて伝わっていて、時々こぼす彼女の本音が筒抜けになってしまっているのです。

 

「ただのバカじゃなくて、救いようがないバカだったみたいね」と言いながらも、バレていないと思って【かわいい】とロシア語でこぼしてしまったりしてしまうわけです。
(なんだこのかわいい生き物は!)

 

そんな2人によるラブコメを、3人称視点で追っていきます。

 

はい、優勝。
こんなのズルです。
コンセプトの勝利です。
対戦ありがとうございました。

 

とこれだけで、投げ出すとあまりにアレなので、もう少し語ることにします。

今作は非常に高い筆力で描かれていました。
臨場的で、感情表現が豊かな文章に、まるで自分がそこにいるのではないかと錯覚してしまうほど、ドギマギさせられます。

 

またアリサが政近に対して、興味を持つようになったきっかけが描かれる、P85からのアーリャ視点の過去の描写がとにかく秀逸で素晴らしい
彼女がデレるようになったその動機に、しっかりと説得力を加えてくれていました。

 

いや、本当に買ってよかったです。
個人的な『2021年に読んだ本10選』には、ほぼ確定で入り込んでくるかと思います。

 


時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん (角川スニーカー文庫)

 

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※この先、『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』に関する重大なネタバレが含まれています。
未読の方、読みかけの方はお気をつけください。

 

 

 

 

 

3.『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』ネタバレありの感想

ニーソックスを穿かせたり脱がせたりするくだりはめっさ最高でした、はい。

 

激辛ラーメンに悶えるアーリャさんだったり、ファッションショーで自爆するアーリャさんだったり、上でも紹介したニーソックスのくだりで自爆するアーリャさんだったり、本作は「とにかくアーリャさんがポンコツで可愛い」1冊でした。

 

周防有希(すおう ゆき)が幼なじみではなく実の妹であったことや、逆にアーリャが幼なじみであったことなど、「ほへー」と驚かされる設定もあって読みごたえもありました。

 

そういう理由で☆5をつけた今作ですが、あえて気になる点を挙げるとするのであれば、物語の尺でしょうか。
ページ数が少なかったからか、あるいは続編を見越してのことなのか、2人が恐らく幼なじみであったことは明かされず、最近ヒロインとのイベントが多めなラブコメばかりを読んできた身としては少しだけ物足りなさも感じました。

 

ただ、1巻としては政近が事件を解決し、生徒会入りが決定、アーリャとともに会長選に出馬することを宣言もして、きれいにまとめられていますし、次巻以降に期待というところでしょうか。
すでに2巻が出ることも確定しているため、そういった感じで、この作品については引き続きチェックしていこうかと思います。

 

 

『ろしでれ』にハマった方には、以下の『氷の令嬢の溶かし方』『隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった』あたりもオススメかと思います。
どちらもメインヒロインがはっきりとしていて、また距離の詰め方が丁寧な作品です。

 

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串木野たんぼ『泥酔彼女「弟クンだいしゅきー」「帰れ」』感想

どうも、トフィーです。


突然ですが、生きていると、誰にだって疲れてしまう時があります
それは学生であろうと、社会人であろうと、あるいはニートの方であろうと変わりません。
そして心身の疲れをため込んだままにしておくと、やがてだめになっていってしまいます。

 

だから人間という生き物は、定期的に息抜きをする必要があるのです。
ゲームをするなり、音楽を聴くなり、美味しいものを食べるなり。
大人の方ならアルコールに頼って息を抜くのも一つの手でしょう。


また、この記事までたどり着いていただけた方は、ライトノベルを読むことこそが息抜きだという方も少なくないはず。


ぼくは、そんな方たちに向けて、1冊のラノベをオススメさせていただきたい。

 

その1冊とは……デン‼
お姉さんのヤツ‼


泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」 (GA文庫)

 

ということで今回は、年上のお姉さん好きなあなたにピッタリのライトノベル、『泥酔彼女「弟クンだいしゅきー」「帰れ」』を紹介していくわ。

さあ、この作品を読んで、あなたも一緒に優勝しましょう。

 

……はい、すみません。
ここからは、いつも通り真面目に(?)語っていきます。

 

 

1.あらすじ

 

姉の友達襲来! 距離感激近宅飲みラブコメ!

聖夜に近所の年上美人と二人で過ごすことになった。全男子にとって、夢のようなシチュだと思う。相手が泥酔一歩手前でさえなければだけど。
「弟ク~ン、おつまみま~だ~?」
ありえないほど顔がいいのに、それが霞むレベルのお気楽マイペースなダメ女・和泉七瀬。聖夜に俺と残念なかたちで出会ったこの人は、勝手に家に来るしやたら酒好きだし隙あらば弄り倒してくるし、とにかくひたすら面倒くさい。いくら顔がよくても、距離感バグってるタイプの近所のお姉さんって普通に悪夢だろ。
無自覚&無頓着。顔がいいくせに絶妙にガードが緩いハタチのダメ女に男子高校生が付き合わされまくる、酒ヒロイン特化型宅飲みラブコメ!

引用:泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」 (GA文庫)

 

 

2.『泥酔彼女「弟クンだいしゅきー」「帰れ」』感想・レビュー

 

a.評価と情報

個人的評価:★★★★★
GA文庫
2021年2月刊行 

 

作者は、串木野反保(くしきの たんぼ)先生。
イラストは、加川壱互(かがわ いちご)先生。

 

串木野先生は、第9回GA文庫大賞《優秀賞》を受賞され、『キングメイカー!-戦野の隅の大英雄-』でデビューされています。

他にも同じくGA文庫より『七代勇者は謝れない』を刊行されています。

 

 

さて、『泥酔彼女「弟クンだいしゅきー」「帰れ」』に話を戻しましょう。
最近よく見る、大人のお姉さんヒロインもののラブコメ
小さな本屋で店員さんに在庫確認してもらう時には、なかなか口に出しにくいタイトルの作品。


けれど、個人的にこのタイトルは割と好きです。
簡潔かつわかりやすいメインタイトル、キャラクターの性格がなんとなく把握できるサブタイトル。
長すぎず、また最近特に多いなろう系のタイトルともまた違った趣があるなと。

 

ちなみに帯には、同じGA文庫の『友達の妹が俺にだけウザい』のヒロイン彩羽よりコメントが寄せられています。(初版分。2刷目以降は不明です)
『いもウザ』についても、過去にこのブログで紹介させていただいておりますので、もしよければこちらもご覧ください。 

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さて、次の項では『泥酔彼女「弟クンだいしゅきー」「帰れ」』の内容と感想をより詳しく紹介していきます。
ネタバレ少なめで、極力序盤のみの内容だけで説明していきます。
これから読もうかどうか迷われている方のご参考になれば幸いです。 

 

b.キャラクター

 

こちら、キャラクター紹介です。

 

瀬戸穂澄(せと ほずみ)

主人公。
仕事のため、ほとんど家に帰ってこない姉と2人暮らしの高校2年生。
酒飲みが嫌い。

 

クリスマスの夜に出来上がった姉に呼び出され、これまた出来上がった状態の七瀬を預けられ、自宅で介抱することになる。
その日以来、毎日のように穂澄の家を訪ねては飲んだくれる七瀬に呆れつつも、高校の演劇部に献上するための脚本の素材になればと、彼女の習性を観察してメモに残している。

0202

引用:泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」 (GA文庫)

 

和泉七瀬(いずみ ななせ)

ヒロイン。
20歳の、お酒大好きお姉さん
ちゃんぽん派。


酒を飲むとハイテンションでウザがらみしてくる。
ルックス以外はダメダメで、酒飲みを嫌う穂澄からすれば「蚊」のような存在らしい。
穂澄の姉の後輩で、姉が留守の日も酒を持ち込んで入り浸るようになる。
なにかの仕事をしているが、物語序盤では不明。

0403

引用:泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」 (GA文庫)

 

c.ストーリー

 

いや、素晴らしい。
実に素晴らしい作品でした。
イラストに惹かれて買った作品ではありましたが、読んでみれば中身も面白い。
特に七瀬(以下、お姉さん)のキャラクターが、ドストライク過ぎてもうダメでした。

 

内容のほどんどは、ただ酔っ払ったお姉さんにウザ絡みされるというもの。
お姉さんからすれば穂澄はあくまでも「先輩の弟」であり、恋愛感情などなしに揶揄っていた感じですし、穂澄も酒飲みは嫌いだと基本的には雑に対応するだけ。

しかし、ページが進むにつれて、穂澄はお姉さんのいいところを見つけていき、お姉さんとの日々が当たり前のように馴染んできて、その存在が彼の中で大きくなっていきます。
お姉さんもお姉さんで、穂澄のことを仲のいい先輩の「弟くん」から、一緒にいて落ち着くような異性へと認識を変えていきます。


このように、関係性が変わっていく様子が丁寧に描かれていて、タイトルからウケる印象とは裏腹に、ラブコメとしては非常に丁寧なつくりになっています。

 

またネタバレになるため詳細には語りませんが、「関係性の変化」の過程以外にも、本作はストーリーラインもしっかりとしていますし、なによりもヒロインのお姉さんが魅力的
2人の軽快な掛け合いは、ずっと見ていたくなるほどに面白く、正直今作を読んでいる時のぼくの顔は、人様には見せられないくらいには弛緩していたと思います。
それくらいには、個人的には刺さりまくりでした。

ポンコツ可愛い年上のお姉さんが好きな方には、必見の一冊だと思います。

 

以上がネタバレ少な目の内容紹介となります。 

 

また余談ですが、表紙で手に持っているのは、『水曜日のネコ』でしょう。
水曜日のネコは何度か口にしたことがありますが、ビールでありながらフルーティでなかなか飲みやすかった覚えがあります。
コンビニにも置いているところがあるので、大人の方は試してみてはいかがでしょうか。 


泥酔彼女 「弟クンだいしゅきー」「帰れ」 (GA文庫)

 

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※この先、『泥酔彼女「弟クンだいしゅきー」「帰れ」』に関する重大なネタバレが含まれています。
未読の方、読みかけの方はお気をつけください。
 
 

3.『泥酔彼女「弟クンだいしゅきー」「帰れ」』ネタバレありの感想

『泥酔彼女』ですが、元カノの正体が月浦水守だったことといい、酔っていないとうまく演技ができないお姉さんのために走って駆け付けるシーンといい、わかりやすく伏線が貼られていたため、後半の展開事態はだいたい予想することができました。

 

ええ、予想できはしましたが、だからどうしたという感じで、それでもなお面白かったです。
個人的にはさり気ない伏線が貼られているうえでの驚きの展開が続くような意外性のある物語が好みではあります。
ただ、それはそれとして、やっぱり「王道」の展開って、実力のある作家さんが書けば面白くなるよなぁ……ということを実感させられましたね。

 

またもう一点、自分の仕事、与えられた役に対しては、たとえどんな端役であれど、真摯に向き合って取り組むお姉さんの姿はシンプルにカッコよかったです。
プライベートではダメダメで、主人公の前ではゆるみきっている彼女ですが、役者としての自覚はしっかりと持ち合わせていて、そういったところにギャップを感じられて、より一層好感度が増しました。 

 

物語は水守が主人公宅を訪れたところで締められていて、非常に続きが気になる終わり方です。
なので、次巻も買ってみようと思います。

落葉沙夢『ー異能ー』感想|第15回審査員特別賞作

どうも、トフィーです。


今回は落葉沙夢先生の『ー異能ー』を紹介させていただきます。
タイトルの通り、この物語のキャラクターは異能を有しています。
そんな彼ら彼女らが、自身の能力を駆使しながら1対1での命を懸けた試合を続けていく、異能バトルものの物語です。

MF文庫Jライトノベル新人賞において《審査員特別賞》を受賞した作品で、ラノベとしてはかなり変わった作風となっていました。

 


―異能―【電子特典付き】 (MF文庫J)

 

 

 

1.あらすじ

自分の凡庸さを自覚している大迫祐樹(おおさこゆうき)には、成績優秀で野球部エースの赤根凜空(あかねりく)と学校一可愛い月摘知海(るつみちひろ)という友人がいる。二人は誰が見てもお似合いで、自分は間を取り持つモブキャラなのだ、と認識する大迫だが、なぜか月摘と2人で映画に行くことになってしまう。「デートだね」とはにかむ月摘に戸惑いながら帰宅した大迫の前に、見知らぬ少年が現れて問う。「君の願いは、なにかな?」それは異能を秘めたモノたちへのバトルロワイヤルへの招待だった。「僕……の中にも異能があるのか?」しかしそれすらも「完全な勘違い」だったのかもしれない――!! 予想を覆す怒濤の展開。審査員評が完全に割れた事件的怪作、刊行。

引用:―異能― (MF文庫J)

 

 

2.『ー異能ー』感想・レビュー

 

a.評価と情報

評価:★★★☆☆
MF文庫J
2020年1月刊行  
第15回MF文庫Jライトノベル新人賞《審査員特別賞》

MF文庫Jライトノベル新人賞受賞作。
その中でも、《審査員特別賞》に選ばれ、「審査員評が完全に割れた事件的怪作」として売り出しているのは、作風が良くも悪くも従来のライトノベルっぽくないからでしょう。


具体的にどういったところが、ということに関しては次の作品内容の項でお話ししますが、星を3つにしたのは万人受けする作風ではないという理由が大きいです。

 

ちなみに、同じ回の受賞作には、『探偵はもう、死んでいる。』などがあります。

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また以下の記事でも、第15回MF文庫Jライトノベル新人賞について軽く触れています。
こちらは新人賞受賞作が、刊行前後でどのようにタイトルが変化したのかを調べたものとなります。
ちなみに今作に関しては、『異能モノ』『―異能―』といった具合に変更されています。

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b.作品内容・キャラクター

本作は異能バトルもの。

 

謎の人物、和抄造(にぎ しょうぞう)によって選ばれた13人の異能者が、毎週土曜日にクジを引き、当たりを手にした2人が翌日の夜に命を懸けた死闘を繰り広げる。
最後の1人にまで残れば何でも願いが叶えられるというその大会に、主人公の少年・大迫祐樹(おおさこ ゆうき)も半強制的に参加させられてしまう。

 

しかし、祐樹には自分の異能が分からない
基本的に、異能を持つ者であれば、人生のどこかで自分の能力に気づくはず。
それに今まで気づかなかったということは、自分の能力は「異能を打ち消す異能」なのではないかとふんで、祐樹は大会へと挑むが――というのが第一章です。

 

『ー異能ー』を読んでいるうちに、ぼくはなんとなく『未来日記』を思いだしました。
ちなみに『未来日記』はライトノベルではなくコミックですが、アニメ化もされています。

 

 

さて、先ほど良くも悪くも従来のラノベっぽくないと述べた理由ですが、ざっと挙げると以下の通り。

 

①群像劇である

主人公やヒロインを活躍させることに重きを置いたライトノベルにおいて、群像劇というスタイルはあまり選ばれていません。

※もちろん全く無いわけではないですし、最近だと『魔女と猟犬』のように群像劇っぽい作風のものもあります。

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また本作は全部で13章の構成となっていますが、それが8人の視点により描き分けられています。

そういうわけで、まず多くのライトノベルと毛色が異なっていると言えます。 

 

②主人公がほとんど登場しない

群像劇というスタイルを選択されていることから、「当たり前では?」と思われるかもしれませんが、本作はとある理由から、一章以降、大迫くんは名前すらほとんど登場しません
そのため、「主人公やヒロインの活躍を見たい‼」という方にはあまりオススメできず、逆に色んなキャラクターの活躍を見たいという方には向いている1冊です。

 

③文章が淡々としている

本作は一人称ですが、文章が非常に淡々としています
そう感じた理由としては、文末が基本「る」か「た」で終わることや、心情描写が少なめであることなどが挙げられます。
ただ、文章自体は読みやすく、淡々とした文章が好きな方には向いているかと思います。
ラノベではないのですが、どことなく中村文則先生のような印象を受けました。

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他にも細かな理由はありますが、ライトノベルっぽくはないと感じたのはこの3点によるところが大きいのではないかと思いました。 


また余談ですが、ぼくがこの作品を読み終えて一番意外だと感じたのは、この作品が電撃文庫からではなく、MF文庫Jから刊行されたということ。
新人賞作品ですし、変わった作風のものを取り入れようとされたのでしょうか?

 

上述のようにかなり変わった作風ではありますが、1冊で完結していて手に取りやすいので、気になった方はまずは読んでみることをオススメします。

 

 

 

 

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 ※この先、『ー異能ー』に関する重大なネタバレが含まれています。
未読の方、読みかけの方はお気をつけください。

 

 

 

 

3.『ー異能ー』ネタバレありの感想

最後はヒロインの知海(ちひろ)が、最後まで勝ち残って、「願いを使って元通り‼」という展開や祐樹を生き返らせるような展開を想像していました。
勝ち残った知海と祐樹以外のキャラクターが死んだままで終わるというのは少し予想外ではありましたが、むやみやたらと生き返りまくるとそれはそれで命が軽く感じられてしまうかと思うので、これはこれでアリだなと。

 

あと祐樹が自分のことを「主人公」だと認めて、胸を張って生きていけるようになったのは彼にとっていい終わり方だなぁと思いました。
そのため、「後味の良い終わり方だなぁ」と思ったわけですがそれも束の間、そのあとに重護視点で本物の橘の腐敗した死体を発見する描写が続き、物語が締めくくられたので、ちょっとだけモヤモヤが残りました。
とはいえ、本物の橘さんがどうなってしまったのかは、少しだけ気になるところではあったので、それを描いてくださったのはよかったなぁと。

 

あと振り返ってみれば、ソシャゲのガチャが好きだったりとタチバナが黒幕・和抄造である伏線自体は描かれていましたが、「タチバナ」だけカタカナ表記だったのは、重護の違和感を演出するためでもあったのかなぁとも思いました。

 

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