どうも、KADOKAWAの回し者のトフィーです。……いえ、違うんです。たまたま、レビューしようとした小説が全部KADOKAWAだっただけなんです。次回はちゃんと(?)他のところの作品なので‼
今回は二月公先生の『声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?』を紹介したいと思います。栄えある第26回電撃小説大賞《大賞》を受賞したライトノベルです。声優について詳しく知らない自分でも、十分に楽しめる一冊でした。
声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない? (電撃文庫)
※ 表紙の左が夕陽(千佳)、右がやすみ(由美子)です。
1.あらすじ
ギャル&地味子の放課後は、超清純派のアイドル声優!?
第26回電撃小説大賞選考会において、選考委員満場一致で2年ぶりの《大賞》を受賞!
電撃文庫が今とどけたい、青春声優エンタテインメント!
「夕陽と~」「やすみの! せーのっ!」 「「コーコーセーラジオ~!」」
偶然にも同じ高校に通う仲良し声優コンビが教室の空気をそのままお届けしちゃう、ほんわかラジオ番組がスタート!
でもパーソナリティふたりの素顔は、アイドル声優とは真逆も真逆、相性最悪なギャル×根暗地味子で!?
「……何その眩しさ。本当びっくりするぐらい普段とキャラ違うな『夕暮夕陽』、いつもの根暗はどうしたよ?」
「……あなたこそ、その頭わるそうな見た目で『歌種やすみ』の可愛い声を出すのはやめてほしいわ」
オモテは仲良し、ウラでは修羅場、収録が終われば罵倒の嵐!こんなやつとコンビなんて絶対無理、でもオンエアは待ってくれない…!
プロ根性で世界をダマせ! バレたら終わりの青春声優エンタテインメント、NOW ON AIR!!
2.ネタバレなしの感想 / 続刊発売日情報
評価:★★★★★
電撃文庫(第26回電撃小説大賞《大賞》受賞作)
2020年2月刊行
普段この手のジャンルにはあまり手を出さないけれども、大賞作ということで購入。
読み終わっての感想としては、「ああ、そりゃ受賞するわー……」というものでした。
余談だけれど、自分もちょくちょくと小説もどきを書いています(いわゆるワナビ)。そんな自分のような境遇の身からすれば、電撃大賞の、それも《大賞》受賞作は頂点に君臨する存在です。
自分は今年の電撃大賞に応募しています。昨年は応募しなかったけれど、それでも動向には注目していました。
そんな読者の中でも少数派の感想ですが、もし自分の作品も投稿していたとしたら、打ちのめされて、才能に嫉妬して、結局は納得したのだろうと思う、そんな一冊でした。
もしシリーズが続くのであれば、間違いなくアニメ化するでしょう。おそらく過去にないくらいに宣伝にも力を入れていますし、純粋に中身が面白いですから。
この物語を一言で表現するのならば、「王道」という言葉こそが相応しいでしょう。
とにかく王道のストーリー展開を、非常に読みやすい文章で綴っていきます。声優(というよりも有名人全般)が抱える問題にもサラッと触れつつも、青春ど真ん中の物語をぶつけてくる今作はまさしくライトノベルの教科書のようです。
相性の悪い二人が一緒にラジオをすることになって、でもその仕事を通して距離が少しだけ縮まって、それでも互いに口が悪くて……。そんな二人のコントのような遠慮のない掛け合いがとにかく面白い。「喧嘩するほど仲がいい」、まさしくこの言葉通りだと思います。仕事仲間であり、ライバルでもあり、友人(…はちょっと違うか?)でもある二人のやりとりはいつまででも見ていたくあります。
展開は取り立ててて珍しいものはありません。山場の前の段階(いわゆるための箇所)で、「えっ?」と意外に思うところはあったものの、概ね予想通りではありました。
でも、予想できたとしても、それはなにも悪いことじゃありません。
当たり前のことだけど、王道は多くの人が面白いと思うから王道なのです。このラノベもお手本のような王道。だからこそ、多くの人が楽しめるはずです。
(王道と書きすぎて、そろそろゲシュタルト崩壊気味)
それから、この作品のジャンルについて、個人的には職業ものではないんじゃないかなと思います。なによりも、「少女同士の友情と青春」がテーマに据えられていて、声優業はそれらを彩るための一要素。だからこそ、声優についてあまり詳しくない自分でも楽しめましたし、逆に言えばそこに期待してしまうと物足りなさを感じてしまうかもしれません。
なにはともあれ非常に面白く、かつスピーディに楽しめる珠玉の作品でした。
『声優ラジオのウラオモテ』二巻は6月10日に発売予定らしいです。ちなみに、ぼくは間違いなく買います。
3.ネタバレアリの感想と分析
『声優ラジオのウラオモテ』の分析を述べるのであれば、キャラクターの作り込みに触れないわけにはいかないと思いました。この作品を読んでみれば、生き生きとしたキャラクター設定こそが物語を魅せるというのがわかります。
この小説、本当に展開が丁寧なんですよねえ……。夕陽(千佳)の「せめて嘘を減らす努力はしたい」という姿勢のおかげで、お肉屋さんのコロッケを一緒に食べに行ったり、厭々ながらもお泊り会をしたりと、二人が打ち解けていくためのイベントを自然な流れで持ってきています。やすみ(由美子)のコンプレックスを抱きつつも、夕陽のポテンシャルに惹かれてしまうという心情も、しっかりと物語を展開するうえで活きていますし。
由美子が心にもないことをぶちまけてしまったり、千佳が清水を殴り飛ばしたりするのも、きちんとした関係の積み重ねがあるから納得できる。終盤の二人が抱きしめ合うシーンでも、しっかりとした感動を覚えます。
「いかに違和感なく自然な展開にできるか」、この問題は小説の完成度を上げるためには、決して避けては通れない項目なので、参考にしていきたいところです。
電撃に限らず、ライトノベル新人賞に投稿しようとしている方は、絶対に読んだ方がいいと思います。
最後にもう少し描写が欲しかったというのが正直な感想。それも含めて次巻に期待です。きっと買うので、読み終わり次第またレビューします。
追伸
木村ぁぁぁぁあああああああ‼ 「絶対なんかやらかすぞ」って、疑ってごめんよぉぉぉぉおおおおお‼
まあ、高校張り込みしたり個人情報を握ろうとしたりと、彼のガチストーカー行為には、さすがにドン引きましたけどね。