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『君が、仲間を殺した数―魔塔に挑む者たちの咎―』1巻の感想

嘆きと贖罪の物語

 

どうもトフィーです。
今回紹介させていただくライトノベル、もといヘヴィーノベルは有象利路先生の『君が、仲間を殺した数―魔塔に挑む者たちの咎―』です。

 

仲間を喰らって生き返るという恐ろしい異能の力をもった少年の物語。
数あるライトノベルの中でも屈指の重さを有した作品でした。
その暗さといったらあの『86―エイティシックス―』を彷彿とさせるほど。
重厚で読み応えのあるストーリーを求める方に対して、ぜひともおすすめしたい一冊です。 

 

また1巻のみで綺麗にまとまっていますので、かなり手に取りやすいかと思います。

 


君が、仲間を殺した数 ‐魔塔に挑む者たちの咎‐ (電撃文庫)

 

 

1.あらすじ

その日、ある少年が死んだ。
 仲間思いで心優しい、少しだけ照れ屋な……そんな彼はいなくなり、瞳に仄暗い光を宿した狂戦士のような男が、ただ一人立っていた。
 少年の名はスカイツ。彼は、幼馴染たちで構成されたパーティである《塔》を攻略するさなかに、魔の祝福を受けてしまう。
「自分が死ぬと、その場に居合わせた仲間の“能力”と――“存在そのもの”を吸収して、時間を戻し復活する」能力。
 親しい友を意図せず自らの力で「喰らい」、失意の彼は次第に心を擦り減らしていく。そして、その身を削る苦しみの果て、彼は【鬼】へとその身を堕とす。
 《塔》に挑む者たちの異常な日々と、彼らの罪と咎を描くダークファンタジー。

引用:君が、仲間を殺した数 ‐魔塔に挑む者たちの咎‐ (電撃文庫)

 

2.『君が、仲間を殺した数―魔塔に挑む者たちの咎―』1巻の感想・レビュー

 

a.評価と情報

評価:★★★★★
電撃文庫
2020年10月刊行 

 

作者は有象利路(うぞう としみち)先生。
イラストは叶世べんち(かなせ べんち)先生。

 

有象利路先生は、電撃大賞の中では珍しい、いわゆる拾い上げの作家です。

『ぼくたちの青春は覇権を取れない。-昇陽高校アニメーション研究部・活動録-』が最終選考まで残ったものの落選。
しかし出版へと至りました。

 

電撃大賞において拾い上げ*1というのはそこまで珍しいものではありません。
たとえば『とある魔術の禁書目録』の鎌池和馬先生、『さくら荘のペットな彼女』の鴨志田一先生、『ビブリア古書堂の事件手帖』の三上延先生など、他にも大ヒット作を生 み出した数多くの作家先生が、拾い上げを通してデビュー・活躍しています。
(ビッグネームばかりですごい)

 

 

 

 

それから有象先生といえば、『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 ~愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド~』が有名でしょうか。

以下の引用を見ていただければわかりますが、かなりの問題作。
詳細はリンク先でご確認ください。

「ところでコレ、ホントに出版するの?」
 編集長の鋭い眼光とその言葉に、担当編集の命は風前の灯火であった。

引用:賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 ~愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド~ (電撃文庫)

 

そんな有象先生の新たなる作品が、『君が、仲間を殺した数―魔塔に挑む者たちの咎―』。
今まで発表されてきた物語とはずいぶんとテイストが違いますが、あとがきでは「元々私はこういう暗い作品ばかり作っていた」と明かされていました。

 

本領発揮ということですね。
いい意味でのため息が出るほど、非常に面白い作品でした。

 

b.作品内容・キャラクター

今まで手に取ってきたラノベの中でも、最高クラスに緊張感のある物語でした。

 

この作品についてある程度のネタバレを避けつつ説明するとなると、正直あらすじだけで十分かとは思います。
ただ、それだけだとあまりにも味気ないので、もう少し詳しくその内容について明かしていきましょう。

 

 

本作には《塔》と呼ばれる不思議なダンジョンが登場します。
《塔》は毎日内部構造が変化し、また上に行くほどに強力なンスターが登場しますが、外の世界ではとれない多くの恵みが手に入ります。
そんな富や名声を求めて《塔》に挑む人々のことは、《昇降者》と呼ばれています。
主人公の少年・クライツも昇降者のうちの一人です。

 

『君が、仲間を殺した数』の作中で、クライツは悲劇を経験し、超常の存在・イェリコによって特別な能力を与えられてしまいます。
それは《塔》 の中であれば、死んでも次の日に生き返るという、《礎》という名の異能の力です。

 

上の解説だけを聞けば「おいおい死んでもやり直せるなんてチートじゃねえかよ」と思う方もいるかもしれませんが、《礎》はそんな甘い能力ではありません。
強大な力には、えてして代償や苦痛が伴うものです。


いわゆる「死に戻りの力」で連想されるものとしては、『Re:ゼロから始める異世界生活』がまっ先に挙げられるかと思いますが、この作品にはリゼロとはまた違った辛さがあります。

 

では《礎》の代償とはなんなのか、それは仲間です。

そもそも《礎》が、正しくはどういった能力なのかというと……。

 

発動条件:仲間とともに《塔》の中にいる状況で、クライツが死ぬことによって発動する


代償:その仲間を喰らい、クライツ以外の人間の記憶から存在を抹消したうえで、喰らった相手の能力を吸収して翌日に生き返る

……といったものです。

 

いや、えぐい。
えぐすぎますって……。
こんなの、どうあがいても闇堕ちまっしぐらなじゃないですかやだー。

 

タイトルからも十分に推し量れるかと思うのでぶっちゃけてしまいますが、『君が、仲間を殺した数』ではクライツの大切な仲間が何人も消えてしまいます。

 

クライツには同じ孤児院で暮らし、家族同然のように育ってきた4人の幼なじみがいます。
以下に超簡易的なプロフィールを掲載します。

クアラ:ヒロインその1。昇降者見習いのため《塔》には入れず、ギルドの家事周りを担当している。珍しい回復系の能力の持ち主。とびぬけて明るく、優しい性格。

シア:ヒロインその2。火を操る能力を持つ。表情の変化が少なく、幼なじみの中でも一番思考が読めないミステリアスな少女。

ベイト:二刀流の猪突猛進スタイル。お調子者のムードメーカー。

アル:ダンジョン内の構造を把握する能力を持つ。内気な性格の男の娘。


また、そんな彼らを引き取って鍛え上げてくれた、もはや父親のような存在の恩師もいます。

アブラージュ:闘気を刃に返る珍しい能力を持つベテラン。

 


誰もが主人公にとって、かけがえのない仲間です。

 

この物語には、上記のようなクライツにとってかけがえのない5人の仲間が登場しますが、そんな仲間たちを意図せずに喰らうことになってしまうのです。
(何人喰らってしまうのかまでは、伏せさせていただきます)

 

そしてイェリコは囁きます。
「誰よりも早く《塔》の最上階へと至れば、消えた仲間をもとに戻してやる」と。

 

その後、主人公がどのように動くのか、最終的にどのような結末へと至るのかは、それはぜひあなたの目でご覧ください。

 

 
 
以下は『君が、仲間を殺した数―魔塔に挑む者たちの咎―』のネタバレになります。
読み終えた方、あるいはどうしても結末を知ってからでないと読めないという方以外は、 先に本作をご覧いただくことを強くおすすめします
 
 
 
 
 

3.『君が、仲間を殺した数―魔塔に挑む者たちの咎―』1巻のネタバレありの感想

まさかクアラが消えるなんて……。
というか初期メンバーが、シアしか生き残れなかったなんてむご過ぎる(絶望)。

 

特にクアラに関しては、物語の終盤でスカイツが因縁の宿敵を相手に辛くも勝利を獲得し、「みんな生き延びることができてよかったー」という喜びの中での帰り道に強盗に殺されてしまうという、あまりにも悲惨な最期。
序盤を見るにどこかで死ぬ可能性大だなと覚悟はしていたのですが、それでも「ああ、一巻時点ではヒロインが二人とも生き残ることができてよかった」、とすっかり安心しきっていたので、よりいっそう愕然としてしまいました。

 

そしてもう一つ、シアもクライツと同じように、超常の存在に力を与えられていましたね。
シアが契約した存在と手に入れた能力については、クライツとは異なりはしますが、そういった境遇のために《礎》の力の影響外にいることができ、ベイトたちと一緒に食われることはなかったわけです。
1人だけ残っていたということで、絶対なにかある、下手したら彼女自身がイェリコかもしれないという最悪の想像までしてしまいましたが、さすがにそこまで残酷ではなかったようでその点に関してはホッとしました。


ただ、そのせいでずっと消えてしまった仲間のことを覚えていたわけで、能力による制約のために真実をクライツに打ち明けることができなかったというのは、またなんとも苦しい……。

 

シアによる真相の告白を受けてから、大切だからこそ彼女を突き放すというクライツの覚悟、そして失った仲間のことを思いながらたった一人で《塔》へと挑むラストは数あるラノベの中でも、個人的にはトップクラスに胸にくるエンディングでした。

 

綺麗なエンディングを迎えましたが、それでも続巻が出たら絶対に買います。

 

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
他にも様々なライトノベルを紹介していますので、もしよければチェックしてみてください。

www.kakidashitaratomaranai.info

 

 

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*1:一度は落選した作品群の中から、編集者が「これは‼」と思った作品を刊行にまでもっていくという、そこそこ珍しい事例