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どうも、トフィーです。
今回は第27回電撃大賞《大賞》受賞作、『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』を紹介していきます。
ロボット嫌いの女捜査官と、ロボットらしからぬ言動をするロボットが、バディを組んで世界規模の電子犯罪に挑む物語です。
受賞作発表の段階では、「本格SFクライムドラマ」と称されていました。
『PSYCHO‐PASS』や『攻殻機動隊』などが好きな方には、特にオススメできるかと思います。
ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫)
1.あらすじ
★第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作!!★
最強の凸凹バディが贈る、SFクライムドラマが堂々開幕!!脳の縫い糸――通称〈ユア・フォルマ〉ウイルス性脳炎の流行から人々を救った医療技術は、日常に不可欠な情報端末へと進化をとげた。
縫い糸は全てを記録する。見たもの、聴いたこと、そして感情までも。そんな記録にダイブし、重大事件解決の糸口を探るのが、電索官・エチカの仕事だ。
電索能力が釣り合わない同僚の脳を焼き切っては、病院送りにしてばかりのエチカにあてがわれた新しい相棒ハロルドは、ヒト型ロボット〈アミクス〉だった。
過去のトラウマからアミクスを嫌うエチカと、構わず距離を詰めるハロルド。稀代の凸凹バディが、世界を襲う電子犯罪に挑む!
第27回電撃大賞《大賞》受賞のバディクライムドラマ、堂々開幕!!
2.『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』感想・レビュー
a.評価と情報
個人的評価:★★★★☆
電撃文庫
2021年3月刊行
第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作
作者は、菊石まれほ先生。
イラストは、野崎つばた先生。
菊石まれほ先生に関しては、本作がデビュー作となります。
電撃大賞といえば、多くのライトノベル読者や作家志望、さらにはプロ作家も含めて注目する最も有名なライトノベルの賞です。
第27回も4355作品が投稿されており、今作『ユア・フォルマ』はその頂点に君臨した物語ということになります。
そんな感じで元から注目されやすい電撃大賞発の作品ですが、金賞の『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』ともども、発売前に公開されたPVの反響が大きかった印象です。
花澤香菜×小野賢章『ユア・フォルマ』PV【電撃小説大賞《大賞》】
またこちらは過去の電撃大賞《大賞》受賞作の感想記事です。
『声優ラジオのウラオモテ』は昨年の受賞作で、『86-エイティシックス-』は今作と同じ重めのSF(※ミリタリーアクション)です。
www.kakidashitaratomaranai.info
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b.ストーリー・キャラクター紹介&感想
今作はユア・フォルマ(「脳の縫い糸」とも呼ばれるスマートデバイス)を、頭に埋め込むことが当たり前になった世界で、電子犯罪の解決に走るバディの物語です。
主人公の少女、エチカ・ヒエダは、国際警察機構(インターポール)、電子犯罪捜査局本部に属する電索官。
電索官(ダイバー)は、対象のユア・フォルマに専用のコードを繋ぐことで、記憶を覗き見ることができる特殊な役目です。
そんな電索官の肩書を持つエチカですが、彼女は特別秀でた才能を有しており、それが裏目に働いて、パートナーをことごとく病院送りにしてきました。
というのも、電索は一人では行うことができず、電索補助管(ビレイヤー)によるサポートが必要になるのですが、補助管には電索官と同等の実力が求められます。
能力の釣り合っていない相手と潜ってしまうと、補助官の脳を焼き切ってしまうこともままあり、そのためエチカは何人ものパートナーを病院に送っては恨まれ、不愛想に振る舞うような日々を送ってきました。
今作の冒頭でも、さっそくパートナーをダウンさせてしまいます。
そこで新たな相棒があてがわれることとなるのですが、彼女の元へとやって来たのは、なんとロボットの青年だったのです。
ヒエダはとある事情により、ロボットを苦手としており、極力彼から距離を置こうとします。
しかし、青年、ハロルド・ルークラフトは、卓越した観察眼を利用してヒエダの心理を見抜き、ロボットらしからぬフランクな態度で接してきます。
能力はヒエダと釣り合うほどに超優秀、けれども性格の愛称は超最悪。
そんな機械系少女と紳士系機械による凸凹コンビが、世界を騒がせる大事件に挑みつつ徐々に心の距離を縮めていく、というのがこの物語のあらすじです。
面白かったです。
ぼくは冒頭でも挙げたような、『PSYCHO‐PASS』や『ハーモニー』みたいな、近未来を舞台にした暗めの物語が大好物なので、同じような趣向の方には刺さりやすいかと思われます。
(ただ、SFが苦手な人や最近の明るめのラブコメ以外は手に取らない方には、相性的に少々厳しいかもしれません。)
序盤でなされた、パンデミックによる文明変革の説明はどこか『ハーモニー』を想像させましたし、プロファイリングをもとに真相へと迫っていく様は『PSYCHO‐PASS』と被るところがあります。
そういった作品にもある面白い要素を取り入れつつ、この作品独自の世界観や凸凹バディが魅力的で、ワクワクが止まりませんでした。
また、序盤といえば、この作品は本文が始まる前に、新聞記事の切り抜きが添付されています。
こうしたライトノベルらしい斬新な演出も相まって、物語へとすんなり入ることができました。
もう一点だけいえば、エチカの過去の見せ方が独特で面白かったです。
電索で他人の記憶に潜るたびに、彼女自身の過去が逆流して明かされていくのですが、その見せ方というか魅せ方にオリジナリティがあり、こういった手法も参考になるなぁ……と書き手視点でも楽しめました。
あんまり語ると、うっかりネタバレしてしまいそうなので、この続きは以下の、「ネタバレアリの感想」にて語らせていただきます。
最近ではあまりないタイプの作品なので、他の作風に飽きてきた方や硬派な作風を好む方は一度手に取ってみることをオススメします。
ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫)
www.kakidashitaratomaranai.info
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※この先、本作のネタバレがガッツリと含まれていますので、未読の方はご注意ください。
3.『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』ネタバレありの感想
「機械系少女と紳士系機械」と銘打たれていましたが、読み終えてみれば2人の印象はガラリと変わりました。
エチカは過去のトラウマから自分を押し殺して生きていたただけで、どこまでも人間らしい繊細な少女でしたし、ハロルドには事件解決のために打算的に人間らしく振る舞っていたクールな側面がありました。
そういった「人間と機械」であったり、「それぞれの心の有り様」であったりといった、対照的な性質を持つ2人の関係に着目すると、タイトルの「ユア・フォルマ(あなたのカタチ)」がとてもしっくりときます。
こういった二重三重に意味がかかっているタイトルのセンスは、素直に羨ましいです。
世界観と文章がカッチリとハマった作品でしたが、他方で個人的には終盤での盛り上がりにやや欠けている感じはありました。
ただ物語は手堅くまとまっていますし、エチカが自分の意志で電索官に戻る選択をしたのもシミジミとくるものがありましたし、彼女たちの活躍をもっと見てみたいというよう想いもあります。
完成度が高く、好みの作風なので、次巻も手に取ってみます。
(第2巻は2021年夏発売予定とのことです。)
この手の作品、流行ってほしいなあ……。