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【アニメ化】ハードSF『86-エイティシックス-』紹介|感想・レビュー

どうも、先ほど電撃大賞に応募してきたトフィーです。
いやあ、今回は余裕をもって投稿できました(締め切り一日前)



さっそくですが、その電撃文庫の中でもぼくのお気に入りのライトノベルを紹介させていただきます。

第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作、『86-エイティシックス-』です。

 


86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

 

1.『86-エイティシックス-』あらすじ

 

“その戦場に死者はいない”――だが、彼らは確かにあそこで散った。サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。そう――表向きは。本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)”となった少女・レーナ。二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる――!第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作、堂々発進!
引用元:86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

2.『86-エイティシックス-』感想・内容紹介


『86-エイティシックス』は、SF・キャラクターが多い・(一巻は)女性主人公というライトノベルではウケにくい要素が詰め込まれた作品です。

それにも関わらず近年のライトノベル作品ではかなり売れていて、電撃小説大賞《大賞》作ということもあり、多くのライトノベル読者に一目置かれています。
ちょうど今年の3月にアニメ化も発表されたこともあり、勢いに乗っている作品です。

ライトノベルでありながら、『86-エイティシックス』は決して「ライト」な小説ではありません。
娯楽としての小説でありながら、こちら側へと強く訴えかけてくるテーマがあります。

そのテーマとは、「差別と戦争」という非常にハードなもの。
『86-エイティシックス』では差別する側、される側双方にフォーカスが当てられており、あらゆる角度から差別について描かれています。

たとえばヒロインのレーナの視点から。
彼女は帝国の中では珍しく、エイティシックスに対しても心優しい善良な指揮官です。しかしながら、当初のエイティシックス達は彼女に対して冷めた目を向けていました。
その理由は彼女が共和国民であるからというだけではありません。
なんと、レーナは自身でも気づかぬうちに彼らへの差別を行っていたのです。
そのことに気づかされた彼女は、エイティシックスたちとの向き合い方を改めて考え、少しずつではありますが信頼関係を築いていくように努めていくのです。

差別にもいろいろな形があり、自分にそのつもりがなくても無自覚な差別を行っていることもある。
このように『86-エイティシックス』はライトノベルでありながらも、差別問題における一つの核心を突いたストーリーになっているのです。
そしてそれが戦時下というひっ迫した環境の中で展開されていて、多くの人の死を通して戦争と差別の悲惨さをこれでもかと訴えかけてきます。

またこの作品では、それぞれのキャラクターの信念が描かれています。
たとえ差別され、使い捨てにされる存在だとしても、エイティシックスには彼らなりの信念がある。
普通の暮らしをしていたころの平穏な日常の記憶や、エイティシックスと呼ばれるようになってからの人間関係など各々に人生があり、家畜として扱われながらも積み上げてきた信念があるのです。

それはプライドであるとともに呪いでもあります。
そんな彼らの信念に対し、レーナがどのように反応し行動するのかもこの作品の大きな見どころです。

ようするに『86-エイティシックス』は、娯楽としてのミリタリーSFの枠を飛び越えた作品なのです。
やがて死にゆく者たちにとっての救いとはなにか、立場がまったく異なる者たちの、真の意味での相互理解は可能なのか、その結末は自身の目で確かめてみてください。


一巻だけでも完成されているため、とりあえずこの一冊だけでもキリよく読み終えることができるのもおススメポイントです。

一つだけこの作品の欠点をあげるとするならば難解な言い回しや語彙が多く、読みにくいところが欠点でしょうか。
けれどもその難解な書き方も、物語の雰囲気作りに寄与していることもまた事実です。良くも悪くも非常に読み応えのある文章だと言えるでしょう。

あらゆる意味でイレギュラーな『86-エイティシックス-』ですが、その読後感は屈指のもの。
『キノの旅』で有名で最終選考委員でもある時雨沢恵一先生に、「ラストの一文まで、文句なし」と言わしめたほどです。


この作品、実は一次落ちを経験しています。
ある意味一次選考というものは、たとえ作品のクオリティがあろうが、下読みとのミスマッチが起こりうるために一番難関だとささやかれています。
そして再度投稿する際に、現在のラストシーンを付け加えたという経緯があります。
『86-エイティシックス-』の結末が評価されたことから考えると、『電撃大賞』ではライトノベルとしてはやはり希望を持たせる締め方が望ましいというスタンスを取っているのでしょうか。
その真偽はわかりませんが、『電撃大賞』を狙うのであれば分析する価値はおおいにあります。

未読の方はどうか一度目を通してみてください。


86―エイティシックス― (電撃文庫)

 

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