書き出したら止まらない

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村瀬健『西由比ヶ浜駅の神様』感想・レビュー

どうも、トフィーです。


今回はメディアワークス文庫刊行のライト文芸小説、村瀬健先生の『西由比ヶ浜駅の神様』を紹介させていただきます。 
幽霊電車の中で、亡くなってしまった最愛の人に心残りの言葉を告げる連作短編(各章の登場人物がたびたび別の章で顔を出す形式)です。

 

 

【追記】
タイトルの「西由比ヶ浜」の読み方は、「にしゆいがはま」です。
「読み方」や「ふりがな」について検索されている方が、多かったため追記させていただきました。


確かに駅名や地名って、初見だと分からなかったりすることがままありますよね。
上挙母駅(うわごろもえき/愛知県)とか、安足間駅(あんたろまえき/北海道)とか、まず読めませんよね……。

 


西由比ヶ浜駅の神様 (メディアワークス文庫)

 

 

1.あらすじ 

過去は変えられないが、未来は変えられる――

鎌倉に春一番が吹いた日、一台の快速電車が脱線し、多くの死傷者が出てしまう。
事故から二ヶ月ほど経った頃、嘆き悲しむ遺族たちは、ある噂を耳にする。事故現場の最寄り駅である西由比ヶ浜駅に女性の幽霊がいて、彼女に頼むと、過去に戻って事故当日の電車に乗ることができるという。遺族の誰もが会いにいった。婚約者を亡くした女性が、父親を亡くした青年が、片思いの女性を亡くした少年が……。
愛する人に再会した彼らがとる行動とは――。

引用:西由比ヶ浜駅の神様 (メディアワークス文庫)

……と、あらすじはこんな感じです。
以下で、より詳しく紹介していきます。 

 

2.『西由比ヶ浜の神様』感想・レビュー 

a.評価と情報

評価:★★★★★
メディアワークス文庫
2020年6月刊行 

 

『西由比ヶ浜駅の神様』は上述した通り連作短編の形式をとっていて、プロローグを除いて4つの物語がつづられています。

 

作者は村瀬健(むらせ たけし)先生。
第24回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》を受賞され、『噺家ものがたり~浅草は今日もにぎやかです~』でデビューされています。
こちらは、新人落語家の物語で、『西由比ヶ浜の神様』同様に温かな人間模様を描いた物語です。

 


噺家ものがたり ~浅草は今日もにぎやかです~ (メディアワークス文庫)

 

b.Tik Tokでバズった?

 

 

『西由比ヶ浜駅の神様』ですが、Tik Tokでバズって売り上げを伸ばしていたようです。
その当時のぼくは、まだこの小説を読んでいなかったため、どれほどの影響があったのかは詳しくは存じあげません。


ただ、過去に当ブログで紹介させていただいた『恋に至る病』も同じようにTik Tokでバズって、Amazonなどで在庫が1日で完売するなど、重版に少なくない影響を与えていたことから、今作に関してもそれなり以上の宣伝効果があったのではないかと想像できます。
(『恋に至る病』のTik Tok事変については、以下のリンク先で紹介しています)

 

時代の変化かなぁ……。

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c.作品内容・キャラクター

脱線事故により、「大切な人の死」を失ってしまった人たちに焦点を当てた物語。

 

全4話の中で、婚約者を亡くした女性、父を失った青年、想い人と死に別れた少年、そして運転手だった伴侶を失い加害者家族となってしまった妻の物語が描かれています。 

 

物語の進み方としては、1話「彼へ。」4話「お父さんへ。」は、訃報を受けるところから描かれ、故人との思い出を回想していきます。
対して2話「父へ。」3話「あなたへ。」は、亡くなる前の日常から始まり、事故の起こる日に向かって進んでいきます。

そうしていずれの章でも、遺族は幽霊電車の噂を聞きつけ、西由比ヶ浜駅に現れる「雪穂」という名の幽霊のもとを訪ねます。

 

幽霊電車には以下のルールがあります。

 

・亡くなった被害者が乗った駅からしか乗車できない。

・亡くなった被害者に、もうすぐ死ぬことを伝えてはいけない。

・西由比ヶ浜駅を通り過ぎるまでに、どこかの駅で降りなければならない。西由比ヶ浜駅を通過してしまうと、その人も事故に遭って死ぬ。

・亡くなった被害者に会っても、現実は何一つ変わらない。何をしても、事故で亡くなった者は生き返らない。脱線するまでに車内の人を降ろそうとしたら、元の現実に戻る。

(『西由比ヶ浜駅の神様』本文より引用)

 

ルールにもある通り、現実は何一つ変わらない。

それでも、遺族たちは過去に戻って事故当日の電車の中に乗り込んでいくのです。

 


どれも胸に迫る内容になっているのですが、ぼくは中でも第二話の「父へ。」が最も印象に残りました。

 

 

主人公は社会人に成りたての青年
彼は、子どものころから地元の小さな工務店に勤める父を軽蔑していました。
父親とは違う人生を歩むために、上京して大学に進学し、商社に就職します。

さあ、平均年収1,200万の華やかな未来が始まるぞ‼
……という感じにはならず、上司に目を付けられてしまい、会社では全然うまくいきません

 

疲弊し続ける日々の中で、父からの留守電が入ってくるわけですが、もちろん無視
それでも父は明るい調子で、ちょっとした用事を見つけては、連絡を入れてくるのです。

はぁ……。
辛い、辛いです。
疎遠になってしまった息子を心配し、コミュニケーションを図ろうと頑張る父親の姿を想像すると本当に胸が締め付けられてしまいます。


そして、その後に待ち受ける『別れ』のことを考えると、いっそのこと読むのをやめてしまいたくなるわけですが、なんとか読破‼
案の定、最後には涙を流すこととなりました。

 

昔は映画やら小説やらで泣くことはなかったのに、最近涙もろくなってきているなぁ……という個人的なつぶやきはさておいて。

 

『西由比ヶ浜の神様』は涙を誘うようなお話ばかりで、感動系の小説を読みたい方には本当におすすめの一冊となっていますので、気になった方はぜひ手に取ってみてください。

 


西由比ヶ浜駅の神様 (メディアワークス文庫)

 

 

 

※次の項目ではネタバレを含んだちょっとした感想も載せていますので、未読の方はご注意ください。

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3.『西由比ヶ浜の神様』ネタバレありの感想

「脱線事故により、「大切な人の死」を失ってしまった人たちに焦点を当てた物語」と述べましたが、最後の章まで読み終えると、各エピソードの見方が変わってきます

 

というのも、第4話の雪穂によってこれまでの認識がガラリと変えられてしまうからです。

 

「この電車にいる人たちは、魂が成仏できずにこの世に居残っている。幽霊電車に乗っている人間は、脱線事故で死んだことを覚えている。事故の際の記憶を保持したまま、この電車に乗っているの。けれど、幽霊は幽霊。何をしたところで事故は起きてしまうし、現実は何も変わらないの」

(『西由比ヶ浜駅の神様』本文より引用)

 

最後の最後で、亡くなった人たちが運命を自覚していると明かされるわけです。
そして、「だから、お父さんはあんな話をしたのか」といった感じで物語の見方が変わってきます。

 

「遺族目線で見てきた物語を、今度は被害者目線でもう一度読みたい」と思えるような内容になっていて、一冊で何度も楽しめるような構成になっているのはさすがだなぁと思いました。

 

 

4.この物語を読んだ方におすすめの小説

 今回は感動路線の小説を3冊紹介させていただきます。

『15歳のテロリスト』

少年犯罪をテーマにした物語。
『西由比ヶ浜駅の神様』と同じく、被害者家族と加害者家族の双方に焦点を当てられており、いろいろと感情をかき乱された名作でした。

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 『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』

【金塊病】という病を患う女子大生と、彼女に惹かれてしまった少年の物語です。
片田舎のサナトリウムを舞台に、二人は「家庭と金」「愛の証明」などの問題にかき乱されていきます。

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『恋する寄生虫』

潔癖症の青年と、視線恐怖症の少女の物語。
そんな二人が惹かれ合うのは必然的――――彼らもぼくも途中まではそう思っていました。
プラトニックな恋愛切なく苦しい真実が描かれます。
やるせない空気感が好きな方におすすめの一冊です。

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このブログでは他にも色々な小説を紹介していますので、もしよければ次の一冊を選ぶ際の参考にご活用ください。

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【アニメ化決定!】二五十『探偵はもう、死んでいる。』1巻の感想

故人系ヒロインも意外とアリですね……

 

どうも、トフィーです。

 

今回は、二五十先生の『探偵はもう、死んでいる。』の第1巻を紹介させていただきます。
上でも触れている通り、ヒロインがすでに死んでしまっているという異色の物語。
今とても勢いに載っている作品で、『このライトノベルがすごい! 2021』文庫部門・第4位にも選ばれています。

 

【追記】この記事を投稿した翌日、1月20日にアニメ化が発表されました! 
なかなかアニメ映えしそうな作品ですし、この物語を映像で見れるとなるとワクワクしてきますね。

 


探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)

1.あらすじ

 高校三年生の俺・君塚君彦は、かつて名探偵の助手だった。「君、私の助手になってよ」―始まりは四年前、地上一万メートルの空の上。ハイジャックされた飛行機の中で、俺は天使のような探偵・シエスタの助手に選ばれた。それから―「いい?助手が蜂の巣にされている間に、私が敵の首を取る」「おい名探偵、俺の死が前提のプランを立てるな」俺たちは三年にもわたる目も眩むような冒険劇を繰り広げ―そして、死に別れた。一人生き残った俺は、日常という名のぬるま湯に浸っている。…それでいいのかって?いいさ、誰に迷惑をかけるわけでもない。だってそうだろ?探偵はもう、死んでいる。第15回MF文庫Jライトノベル新人賞“最優秀賞”受賞作。

引用:探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)

 

 

2.『探偵はもう、死んでいる。』感想・レビュー

a.評価と情報

評価:★★★★★
MF文庫J
2019年11月刊行 
第15回MF文庫Jライトノベル新人賞《最優秀賞》
『このライトノベルがすごい! 2021』文庫部門・第4位 


作者は二五十(にごじゅう)先生、イラストはうみぼうず先生です。
略称は『たんもし』


上述の通りこのラノ4位の作品ですが、ヒロインのシエスタは『このライトノベルがすごい! 2021』のキャラクター女性部門でも第4位を獲得しています。

 

このラノ2021の作品については、以前まとめ記事にも書きましたのでよければそちらもご覧ください。

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また、冒頭でも触れた通りアニメ化も発表されています!

 

 

b.ストーリー


タイトルに『探偵』とつくことから初見の方は「推理ものなのかな?」と思うかもしれません。
しかし、この作品はミステリー小説ではありません。
ストーリー中にある程度の謎は含まれていますが、それがメインというわけではなく、ラブコメだったり、アクションだったり、SF要素があったり、《人造人間》が登場したりと、ジャンルにとらわれないお祭りのような作品でした。

 

この手の現代ベースのバトルものは、MF文庫だけでも『緋弾のアリア』だったり、『アブソリュート・デュオ』であったり、『学戦都市アスタリスク』だったりと多くの作品がありますが、『たんもし』にはまた違った個性があります。

それは冒頭でも触れた通り、ヒロインの探偵・シエスタがすでに死んでいること。
体の一部が武器のように発達した《人造人間》が所属する秘密組織《SPES》(スペース)との戦いの中で、一年前に彼女は命を落としてしまったのです。

詳しくは次の項目で解説します。 

 

 

C.キャラクター

まさかの故人系ヒロイン。 

探偵はもう、死んでいる。

 引用:探偵はもう、死んでいる。 (MF文庫J)

いや、現在軸にももう一人のメインヒロインが登場するわけではありますが、それでもダブルヒロインのうちの片方がすでに亡くなっているというのは、他のライトノベルではなかなか見られない設定です。

 

そんな故人系ヒロインのシエスタですが、決して空気というわけではなく、しっかりと物語に影響を与えていきます。
作中では彼女の助手だった主人公の少年・君塚君彦(きみづか きみひこ)によって、彼女と過ごした日々が回想され、その数々のエピソードが現在の事件にも絡んでくるため、死後もなお存在感を放ち続けているのです。

 

そして現在の時間軸のメインヒロイン、夏凪渚(なつなぎ なぎさ)も重要な役を担っており、シエスタに負けず劣らず存在感のあるキャラクターです。
ネタバレになるためになるためここで詳しくは説明しませんが、君塚は彼女と関わることによってシエスタの死から止まっていた時間が動き始めることとなります。

 

 

 

※ここから先はネタバレを含んだ感想となりますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

3.『探偵はもう、死んでいる。』ネタバレありの感想

個人的に一番盛り上がったのは、なんといっても292ページ目の挿絵ですね。


渚の心臓の中に宿っていたシエスタの意識が表に出て、君塚のもとへと駆け付け手を伸ばすあのシーン。
そこで表紙と全く同じイラストを採用するとは本当にニクイ演出です。
こんなの、これから一巻の表紙を見るたびに思い出すに決まってますやん……。
こういう魅せ方もまた、人気に拍車をかけている一つの要因なんじゃないのかなぁと思います。

 

そして、君塚とシエスタとのやり取りも、なかなかエモかったですね。
君塚は恋愛感情はなかったと言いつつも、シエスタの「実のところ、一度くらい、君となら寝てもいいと思ってたんだけどね」という台詞に対して、「そういう大事なことは、今度から早く言ってくれ」と返したりと探偵と助手にの関係にとどまらない感じでした。

 

1巻時点では彼女の詳細な死因を含めて、まだまだ明かされていない謎がたくさんあるので続きに期待です。
続きといえば、シエスタから探偵の役割を受け継いだ渚が、これからどのような人生を歩んでいくかについても必見です。

 

 

4.この物語を読んだ方におすすめの小説

『緋弾のアリア』

先ほどいくつかのラノベのタイトルを挙げましたが、その中でも特に『緋弾のアリア』がおすすめです。


現代に近い世界観で、銃火器を用いて戦ったり、秘密組織が登場したり、超常の力を持った人間や化け物が敵として立ち塞がったりと、刊行年数こそ離れてはいるものの性質的にはかなり近い作品かと思います。
「探偵」を要素の一部として組み込みつつも、推理がメインではないところも似ていますしね。


現在までMF文庫を支えてきた長寿シリーズということもあり、とにかく数が多いものの、まずは1巻だけ手に取ってみて、もし楽しめるようであればキリのいい5巻まで読んでみてはいかがでしょうか。
ちなみに3巻までアニメ化もされていています。

 

 

2020年に読んだライトノベル・ライト文芸ベスト10

どうも、トフィーです。
みなさん、あけましておめでとうございます。

 

昨年はこのブログを始めたり、ライトノベル新人賞応募にむけて新作を研究し始めたこともあり、例年よりも多くの作品に触れることができたかと思います。


今年はより多くの物語に触れようという抱負を掲げつつ、昨年読んだ中でも特に面白かったなーと感じたラノベ・ライト文芸10作を振り返りつつまとめてみようと思い、この記事を作成しました。

 

作品探しの参考になるように簡単な紹介文も載せておりますので、お時間のある方はぜひご覧ください。

 

※シリーズものも含みますが、このランキングはすべて1巻のみの内容で決定しています。

※2020年以前に発売された作品も含みます。

 

 

 

【第10位】高峰翔『氷の令嬢の溶かし方』 

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第10位には『氷の令嬢の溶かし方』を選びました。

 

単体ヒロインもののラブストーリーです。
誰に対しても氷のように冷たい少女――氷室冬華(ひむろふゆか)。
本書は、そんな「氷の令嬢」とも呼ばれる一人の少女の壁を溶かしていく物語です。

 

ヒロインとの距離の縮めていくまでの過程が非常に丁寧で、甘酸っぱく、じれったく、もどかしい。
『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』が好きな方は、またこちらも楽しめるかと思います。

 

 

【第9位】二丸修一『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』

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第9位は『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』

 

復讐を題材にしたラブコメで、アニメ化も決まっています。

 

初恋の相手に彼氏がいることが発覚した主人公。
主人公に告白したものの振られてしまった幼なじみのヒロイン。
そして、主人公の初恋の相手であり、他の男性に対してはキツく当たっているのに、なぜか主人公に対しては態度を軟化させているもう一人のヒロイン。

 

この3人が織りなすラブコメディは非常に見ごたえがあって、「あー、そうきたかぁ」と思わず口にしてしまうような展開が先に用意されています。

 

【第8位】八目迷『きのうの春で、君を待つ』

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第8位には『きのうの春で、君を待つ』を選びました。

 

本作はタイムリープを利用して、幼なじみの少女の兄を死の運命から救いだそうとする物語です。
この説明だけだと割とありがちな作風のように思えますが、この作品のタイムリープは「ロールバック」の形式をとっています。


1日18時→5日18時~6日18時→4日18時~5日18時→3日18時~……
という感じで、空白の4日間を埋めるかのように、翌日の18時になると一昨日の18時へと戻るという形式です。

この展開方法によって、情報が少しずつ開示されていき、事件の真相に迫っていくため、先の展開が非常に気になった一冊でした。

 

ちなみに本作は1巻で完結するため、手が出しやすいかと思います。

 

 

【第7位】有象利路『君が、仲間を殺した数ー魔塔に挑む者たちの咎ー』

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第7位『君が、仲間を殺した数ー魔塔に挑む者たちの咎ー』です。

重厚で読み応えのあるファンタジー小説。

 

危険な魔物が生息するダンジョンーー《塔》に挑むことを強いられた主人公の物語。

主人公の少年・クライツにはある特殊な能力が発現してしまいす。

 

発動条件:仲間とともに《塔》の中にいる状況で、クライツが死ぬことによって発動する


代償:その仲間を喰らい、クライツ以外の人間の記憶から存在を抹消したうえで、喰らった相手の能力を吸収して翌日に生き返る。

 

いやぁ……エグイ、エグイ。


要するに仲間を犠牲にして死に戻る物語ですね。

 

【第6位】杉井光『楽園ノイズ』

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第6位は『楽園ノイズ』です。 

 

 問題を抱えている少女たちと、音楽を通して心を通わせていく青春ストーリー。

 

「このライトノベルがすごい! 文庫部門 第6位」にも選ばれた作品で、特にラノベを多く読む協力者票を集めていました。
実際に読んでみるとそれも納得の面白さ。

 

主人公とヒロインの掛け合いはテンポよくてクスリと笑えますし、短編連作形式の各ヒロインとの物語にはしっかりとしたドラマがあります。

 

そして最後はしっかりと感情をかき乱してきて、ラストのニクイ演出も手伝って、ほろりとをこぼしてしまいました。

 

【第5位】斜線堂有紀『私が大好きな小説家を殺すまで』

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第5位は『私が大好きな小説家を殺すまで』です。
ここからのランキングは特に悩みました。

 

依存関係にある少女と青年の、破滅へ向かうドラマ。 

 

この作品は、以下の告白から始まります。

『憧れの相手が見る影なく落ちぶれてしまったのを見て、「頼むから死んでくれ」と思うのが敬愛で「それでも生きてくれ」と願うのが執着だと思っていた。だから私は、遥川悠真に死んでほしかった』

引用:『私が大好きな小説家を殺すまで』

 

もうこれだけで気になったら買って損はないと思います。

 

【第4位】斜線堂有紀『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』

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第4位は『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』 です。
引き続き斜線堂有紀先生によるライト文芸です。

 

片田舎に暮らし、困窮した家庭に縛られる少年が、身体が金塊に変わってしまう致死の病ーー金塊病を患う女子大生と出会い、サナトリウムの中で交流していくといったストーリーです。

難病・家庭問題・感情の証明などといった一見すると難しそうなテーマを含んでいますが非常に読みやすく、また心に訴えかけてくるような感情描写が魅力的で、心に刺さりまくった作品でした。

 

【第3位】八目迷『夏へのトンネル、さよならの出口』

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第3位は『夏へのトンネル、さよならの出口』です。 

『きのうの春で、君を待つ』と同じく八目迷先生による1巻完結の物語。

ノスタルジー

田舎の夏

ボーイミーツガール

ライトなSF

これらの要素を好む方には必見の一冊。 

 


幼少期に経験した妹の死を未だに実感できない主人公の少年が、都会から転校してきたヒロインと協力し、「欲しいものがなんでも手に入る」と噂されているウラシマトンネルを調査するストーリーです。

 

【第2位】村松涼哉『15歳のテロリスト』 

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第2位は『15歳のテロリスト』です。
メディアワークス文庫より刊行されているライト文芸です。

 

なぜ15歳の少年がテロリストになってしまったのか、その謎にせまりつつ、「少年犯罪」の抱える問題にも迫る物語です。


少年犯罪を軸に被害者家族加害者家族の少年少女に焦点を当て、それぞれの悲惨な境遇を描かれています。
彼ら彼女らの心からの叫びには差し迫ったものがあり、グッと作中へと引き込まれました。

またこの小説の感想記事に関しては、「読書感想文」と検索してたどり着いてくださった方が多かったです。
(そういった事情から、記事中にその旨を加筆いたしました)


ライト文芸ということもあり読みやすく、またそれでいて社会問題をテーマに掲げていることから、確かに課題にはうってつけかもしれません。

 

 

【第1位】斜線堂有紀『恋に至る病』

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さて、いよいよ第1位。
君臨したのは『恋に至る病』です。

はい、またまた斜線堂先生の作品です。
基本作者買いをしない自分ですが、こうして振り返ると、2020年は推しの作家を見つけることができた年であったことが認識できます。

 

この本に感じた魅力は以下の3つ。

 

①読んでいる最中のハラハラ感。
ヒロインの少女・寄河景は社会からすれば犯罪者であり、悪女と言える存在です。
そんなヒロインに惹かれてしまい、共犯者の関係となってしまっている主人公の葛藤や終わりへと向かっていくハラハラ感は見ごたえ満点でした。

 

②ヒロイン寄河景のカリスマ性。
ぼくは『ハーモニー』の御冷ミァハや、アニメ『PSYCHO-PASS』の槙島聖護のような危険なカリスマ性を持ったパンチのあるキャラクターが大好物。
この2人に似つつもまた異なる雰囲気が寄河景にはあり、ぶっ刺さりました。

 

③読んだ後も気持ちをかき乱され、またいろいろと考察が捗る圧倒的読後感。

ネタバレになるのでここでは書けませんが、読まれた方や先にネタバレを知ってから読み進めたい方は上の過去記事をご覧ください。

 

 

2020年の振り返り

 

今までどんな価値基準で作品に触れてきたかはあまり深く考えてはきませんでしたが、昨年読んだ物語から10冊を選びランキングを考える中で、ぼんやりと次のような軸が見えてきました。

 

それは、「コメディチックなものよりもシリアスよりな作風を好み、キャラクター以上にストーリーで評価する傾向にある」といったもの。

なので、もしこの記事を読んでくださっている人の中に、似たような感性をお持ちの方がいらっしゃったら、このランキングの作品もドンピシャにハマるかと思うので、気になるものがあればぜひチェックしてみてください。

それでは、今年もよろしくお願いします。

【メンタリスト】やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく|第1巻の感想

もはやメンタリスト級の読心術

 

どうも、トフィーです。

 

今回はGA文庫刊行のライトノベル、『やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく』を紹介させていただきます。

 

……タイトルが長いっ‼
初見の方でも、なんとなく察せられるかとは思いますが、『小説家になろう』発の作品です。
ページタイトルを32文字以内に収めたい、ブロガー泣かせのタイトルですね()

 


やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく (GA文庫)

 

 

 

1.あらすじ

「猛毒の白雪姫」こと白金小雪。美少女だが毒舌家な彼女をナンパから救った笹原直哉は、その日から小雪につきまとわれる。得意の毒舌で直哉をからかおうとする小雪だが…。直哉にはまったく効かなかった!やたらと察しがいい直哉は、小雪の言葉の裏にある心を読み取りグイグイ距離を詰めていく。お互いの「好き」を確かめるために。WEB小説発。ハッピーエンドが約束された、すれ違いゼロの甘々ラブコメディ。

引用:やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく (GA文庫)

 

 

2.『やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく』第1巻の感想・レビュー

a.評価と情報

個人的評価:★★★☆☆
GA文庫
2020年7月刊行
小説家になろう原作

 

作者はふか田さめたろう先生。 
こちらはなろう用の別名義で、元々は霜野おつかいという名義で書かれていた方で、第5回GA文庫大賞《奨励賞》を受賞しデビューされています。
今回の作品や『元勇者、印税生活はじめました。~担当編集はかつての宿敵~』など、GA文庫から何種類かの作品を出されているようです。

 

 


イラストはふーみ先生。
ぶっちゃけますと、ぼくは表紙買いしました。
ぼくは無類の銀髪好きとして、ごく一部の界隈で知られていたりいなかったりするのですが、少し前に書店でピンと来て購入したわけです。

 

 なろう発の作品は、『氷の令嬢の溶かし方』以来になりますね。 

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b.作品内容・キャラクター

主人公の笹原直哉(ささはら なおや)は、とてつもなく察しがいい少年です。
どれくらい察しがいいかというと、相手のことを少し見ただけで、心情はもちろんのこと素性なども見抜いてしまうほど。
もはや超高校級のメンタリストと言われてしまいそうなレベルです。
メンタリストNaoYaと呼ぶべきかもしれません。

 

そんな直哉ですが、銀色の髪の少女がスーツ姿のチャラ男に絡まれているところを目撃します。
彼は持ち前のメンタリズムを駆使して、チャラ男を撃退しますが、その日はバイト中でだったためそれっきり。
少女の顔をちゃんと見ることもなく別れます。

 

そして次の日に、学校で顔を合わせることになり正体が判明。
彼女は、「猛毒の白雪姫」と噂される少女・白金小雪(しろがね こゆき)だったのでした。

 

「猛毒」という言葉を含んでいることからも想像がつくかとは思いますが、彼女の言動にはトゲがふんだんに含まれています。
そのことから周りの生徒はみな距離を置いていたわけですが、直哉はもちまえの読心術で小雪が本心では自分に対して好意を抱いていることを見抜きます

 

その後、いろいろとあり、小雪との距離が縮まったのですが……。
彼は察しがいいだけでなく、思ったことはズバズバと言ってしまうタイプ。
さらには耳までいいものだから、いわゆる難聴系主人公とは真逆の性質のキャラクターです。

 

「あの程度で恩を売ったと思わないことね!」
「つまり、放課後どこかに誘いたいんだな?」
「ち、違わなくも、ないっていうかぁ……。ま、待ってるから!」

引用:『やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく』第1巻・カラー絵より

 

クーデレというよりはツンデレな気もしますが、強気な口調で毒を吐くにも関わらず即座に見抜かれて撃沈する様は、なかなかに可愛らしいですね。

 

要するに、両想い系ラブコメです。
直哉は人の心情を見抜けるから、小雪が自分に対して恋愛感情を抱いていることをヒシヒシと感じ取れてしまっている。
そして、小雪に対してもグイグイと好意を伝えていくわけです。


ラノベに限らず、ラブコメ全般でよくある難聴系主人公に対してモヤモヤとした想いを抱えている方にはおすすめできるかなと思います。

 

一方で気になる点としては、物語にあまりおおきな起伏がなかったことが挙げられます。
そのため「ハラハラした展開が欲しいなぁ」という方には、あまり向かないかもしれません。
これについては、『小説家になろう』でのニーズの関係上しょうがないのかなぁとも思います。

 

ただ、起伏がないことは、裏返せば「安心して読める、ストレスフリーの物語」と捉えることもできるので、この点に関しては普段読んでいる作品によって評価が分かれるのかなあと思います。

 

 

ちなみに、こちらが帯のイラスト。
これイラスト1枚に、今作品の魅力がグッと詰まっています。

 

01

引用:やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく (GA文庫)

 

 

 
 

 

3.この物語を読んだ方におすすめの小説

『お隣の天子様にいつの間にか駄目人間にされていた件』

まずは、定番どころから行きましょう。
こちらもなろう発・GA文庫刊行の作品で、 いちゃあまが続くタイプの物語になっています。
ただ話の展開の仕方が慎重で、お互いに好意を示すことはほとんどありません。
じれったいラブコメを読みたいかたにはおすすめの一冊です。

 

 

 

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』

続いて紹介するのは『おさまけ』と略されるこの物語。
テレビアニメ化も決まった作品です。
未読であれば、とにかく読んでいただきたい。
お姉さんぶって接してくるヒロインが返り討ちにあって赤面する姿は、小雪と通じるところがあります。

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『友達の妹が俺にだけウザい』
少し系統は変わりますが、ライトノベルらしいラブコメ作品をひとつ紹介。
タイトルがすべてを物語っていますが、さらにプラスアルファで同人サークルのようなノリであったり、それぞれが抱える問題などが描かれています。
1巻時点では表紙の子の他にももう1人のヒロインが登場するため、ハーレム的な空気感が好きな方にはおすすめです。

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杉井光『楽園ノイズ』感想と評価|このライトノベルがすごい!第6位

『さよならピアノソナタ』をもう一度

 

どうも、トフィーです。

 

今回は、杉井光先生の『楽園ノイズ』を紹介させていただきます。
音楽と青春を題材にした物語です。
音楽の知識がからっきしのぼくでも、十分に楽しむことができました。
読み味重めのボーイミーツガールを好まれる方には、高確率で刺さるのではないかと思います。

 

『このライトノベルがすごい! 2021』、文庫部門・第6位に選ばれた作品でもあります。

 

 

 

1.あらすじ

出来心で女装して演奏動画をネットにあげた僕は、謎の女子高生(男だけど)ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまう。顔は出してないから大丈夫、と思いきや、高校の音楽教師・華園美沙緒先生に正体がバレてしまい、弱みを握られてこき使われる羽目になる。
 無味無臭だったはずの僕の高校生活は、華園先生を通じて巡り逢う三人の少女たち――ひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音――によって騒がしく悩ましく彩られていく。
 恋と青春とバンドに明け暮れる、ボーイ・ミーツ・ガールズ!

引用:楽園ノイズ (電撃文庫)

 

2.『楽園ノイズ』1巻の感想・レビュー

 

a.評価と情報

評価:★★★★★
電撃文庫
2020年5月刊行
『このライトノベルがすごい! 2021』、文庫部門・第6位 

 
『楽園ノイズ』の作者は杉井光(すぎい ひかる)先生、イラストは春夏冬ゆう(あきなし ゆう)先生。
 
杉井先生の著作は数多くありますが、代表格といえば『さよならピアノソナタ』やアニメ化もした『神様のメモ帳』などが挙げられるでしょうか。
どちらも非常に有名な作品なので、読んだことがなくてもタイトルだけは聞いたことがあるという方も多いかと思います。

特に『さよならピアノソナタ』に関しては、『楽園ノイズ』と通じる部分の多い作品なので*1、どちらかにはまった方は続けて手を出してみてもいいかと思います。
 
そしてまた本作は、『このライトノベルがすごい! 2021』文庫部門・第6位に選ばれました。
ラブコメがとにかく強かったこの回ですが、青春小説で、しかもたった一巻のみの刊行で上位に食い込んでいるからこそ、地力の高さがうかがえますね。

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b.作品内容・キャラクター

主人公の少年・村瀬真琴(むらせ まこと)は、ネットミュージシャンとして細々と活動していたけれども、再生数に伸び悩んでいました。
ある日、姉の提案で女装して動画をあげることを提案されます。
しぶしぶ、従ったところ再生数が爆発! (表紙中央のキャラ)
あわてて、プレイヤーネームを『Musa男』に変更し、男であることを明かしても、「逆にそれがいい‼」とより一層人気に拍車がかかってしまったのです。

 

そうして知名度をあげつつも、顔を隠していたために身バレはせず進学。
しかし、進学した高校の音楽教師華園美沙緒(はなぞの みさお)に正体を見抜かれてしまったのです。(表紙右端の女性)
そして『Musa男』であることを明かさないことと引き換えに、真琴は授業の手伝いや雑用に駆り出されることになったのでした。

 

そんな中で、彼は3人の少女に出会います。

 

ピアノ界の元神童で、ツンドラ属性の冴島凛子(さえじま りんこ)
全キャラを通しても、掛け合いがもっともお気に入りです。(表紙・主人公の左隣のキャラ)
おしとやかだけど、ドラムのことになると早口になる百合坂詩月(ゆりさか しづき)。(表紙・主人公の右隣のキャラ)
不登校だけど、音楽活動を心から愛する無邪気な少女・宮藤朱音(くどう あかね)。(表紙・左端のパーカーの女子)

 

彼女たちは真琴とくらべて、圧倒的な才能を持ちながらも、それぞれの理由により音楽から離れていこうとしていました。
『楽園ノイズ』は、連作短編のような形式で、彼女たち一人ひとりと関わっていく物語なのです。

 

 

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※次項は作品のネタバレを含むため、未読の方はご注意ください。
 
 
 
 
 
 

3.『楽園ノイズ』ネタバレありの感想

みなさん、335ページ目を実際に読み込まれましたか? 
QRコードの演出、あれはずるいですよね。


美沙緒先生が持病のせいで退職してしまって、それでも先生に届けるためにライブに出て、アンコールでMusa男自身がボーカルまでやり遂げて、ウルッときていたところにアレですよ。
自分は最後まで読み切ったところで例のページに跳びましたけど、正直涙腺がやられかけました。

 

美沙緒が真琴を筆頭とした生徒たちに授業の多くを任せていたのも、自分がいなくなってからのことを考えていたから。
やたらと休んでいたのも、通院のためだったと考えると胸に来るものがあります。
ある程度読み進めたところで、あくまでも生徒がメインで、先生は彼ら彼女らを導くために活躍してましたよー、といったことがそれとなく描かれる展開を予想していました。
それがまさか、終盤にあんな爆弾が残されていたなんてね……。

 

そして、2巻が出るとのことはすでに決定しているようです。
凛子らの恋愛面での動きも気になるところではありますが、美沙緒先生は再登場するのか、そこがとにかく楽しみですね。

 

 

4.この物語を読んだ方におすすめの小説

ここでは、『楽園ノイズ』が刺さった方に向けて、おすすめの小説を紹介しております。
今回はライトノベルから一般文芸まで、区分を問わずに掲載しました。

 

 『さよならピアノソナタ』

あとがきでも触れられていましたし、うえでも取り上げさせていただいたので、わざわざここに掲載する必要もないかとは思いますが……。

 

 

『蜜蜂と遠雷』

本屋大賞と直木賞を受賞し、映画化もされた小説です。
文庫版なら上下巻です。


とあるピアノコンクールに挑む4人の物語。
女子音大生・天才少年・年齢制限ギリギリの社会人・王子様と呼ばれる優勝候補。
群像劇の形式で、それぞれの目から見たピアノへの思いがつづられていきます。

 

 

『夏へのトンネル、さよならの出口』

こちらは、ガガガ文庫のライトノベルです。
上の2冊と違って音楽とは関係のない物語ではありますが、『楽園ノイズ』後半の空気感が刺さった方には、こちらの物語も合うのではないかと思います。

 

世界から置いて行かれることと代償に、欲しいものが手に入るトンネルへと潜る少年少女のボーイ・ミーツガール。
過去とのけじめ、やり切れない思いと向き合う青春小説という形式は一致しております。

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ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
当ブログでは、他にも様々な物語を紹介しています。
作品探しのお役に立てれば幸いです。

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*1:『このライトノベルがすごい! 2021』の著者インタビューにて、先代の担当編集からの提案を受けて、『さよならピアノソナタ』をもう一度書いてみたと述べられています

森林梢『殺したガールと他殺志願者』1巻の感想とレビュー

「生きている=幸せ」と言えるのだろうか?

 

どうも、トフィーです。
今回は森林梢先生の小説、『殺したガールと他殺志願者』 を紹介させていただきます。

 

MF文庫の新人賞に選ばれた作品ですが、ライトノベルの中ではかなり独特な作風でした。
本作は、「理想の死に方」を求める物語です。 
冒頭の文は、あとがきを参考にさせていただいております。


殺したガールと他殺志願者【電子特典付き】 (MF文庫J)

 

1.あらすじ

『最愛の人に殺されたい』と願う高校生・淀川水面は、死神を名乗る女から一人の少女を紹介される。「貴方が殺されたい人ですか?」出会い頭にそんなことを尋ねる少女。名前は浦見みぎり。『最愛の人を殺したい』という願望を持つ少女だった。互いの望みを叶えるために、二人は協力関係を結ぶ。水面はみぎりに愛されるため。みぎりは水面を愛するため。「貴方には、私の理想の男性になってもらいます」「…分かった」「殺したくなるくらい魅力的な男性にしてあげますから、覚悟して下さい」こうして始まった、歪な二人の歪な恋路。病的で猟奇的で不器用な少年少女が最高のデッドエンドを手に入れる物語、開幕。

引用:殺したガールと他殺志願者【電子特典付き】 (MF文庫J) 

 

2.『殺したガールと他殺志願者』感想・レビュー

a.評価と情報

評価:★★★☆☆
MF文庫J
2020年11月刊行 
第16回MF文庫Jライトノベル新人賞《優秀賞》

 

まず☆3としましたが、この記事の執筆時にはAmazonレビューでは☆5オンリーとなっていました。(11月30日では、5/5が☆5)
そのため「刺さる人には、本当に刺さる作品である」ということをあらかじめ言及させていただいたうえで、次項ではぼく自身の感想を述べさせていただきました。

 

その前に、いつも通り作品の情報をさらっと紹介させていただきます。


作者は、森林梢(もりばやし こずえ)先生。
イラストは、はくり先生。

 

受賞時点での評価については、「 ライトノベル新人賞結果発表|MF文庫J オフィシャルウェブサイト」で確認することができます。
以下、引用文です。

 

今回の受賞作では、たとえば『殺したガールと他殺志願者』は読んでいくとのめり込んで行く魅力がありましたが、序盤に提示される設定が共感しにくいため導入がとにかく弱かったですし、

(榎宮祐先生)

 

優秀賞の『殺したガールと他殺志願者』は、独特の空気感と文章のセンス、そしてヒロインの可愛さが飛び抜けていました。個人的には結構好きなタイプのお話なのですが、危ういバランスの上に成立している作品であることは確かだと思います。

(さがら総先生)

 

優秀賞の『殺したガールと他殺志願者』は挑戦的なタイトルで、読む前は異常性癖の主人公とヒロインに感情移入できるかどうか正直不安でしたが、読み進めているうちに、自然とこの不器用なバカップルを応援していました。二人のイチャイチャした会話がとにかくエモくて悶え転がります。また心情や風景の描写に独自のセンスとこだわりがあるのも高評価でした。

(志瑞祐先生)

 

『殺したガールと他殺志願者』
 主人公とヒロインのやり取りだけで延々と読んでいられる。得がたい才能。このセンスを、いつまでも磨き続けてほしい。

(三浦勇雄先生)

 

独特な空気感と、主人公とヒロインの掛け合いが評価されたようですね。
また、2巻が出ることがすでに決定しています。

 

b.作品内容・キャラクター

「愛している人に殺されたい」という願望を持つ少年と、「最愛の人を殺したい」という願望を持つ少女の物語。 

 

主人公の少年・淀川水面(よどがわ みなも)は、自身のことを「死神」と名乗る女性と出会います。

 

「殺してほしいの?」
「いや、結構だ」
「ふーん」

(中略)

「俺は、俺のことを愛している人に殺されたいんだ」

引用:『殺したガールと他殺志願者』1巻

 

こうして怪しさ全開の死神相手に、水面は思いを打ち明けますが、彼女の提案により一人の少女と引き合わされます。 
その少女こそ、殺したガールこと浦見みぎり(うらみ みぎり)

 

彼女もまた、水面と同じく異質な願いをもつ人間だったのです。
その願いというのは、「最愛の人を殺したい」というもの。


互いの目的がマッチした二人は、願望をかなえるために交流を深めていきます。
水面は少女の求める理想の男性になるように努力し、やがて距離を縮めていき――。

 

というストーリーです。
冒頭のあらすじとほとんど情報が被ってしまいましたので、ここからは個人的な感想を交えつつもう少しお話していきます。

 

 

かなり変化球的な物語でした。
今回は☆3か☆4で迷って、最終的に☆3に。
『殺したガールと他殺志願者』ですが、合う部分もあったし、一方で合わない部分もあってそこが結構気になる作品でした。

まずは良かった点
水面とみぎりの掛け合いが、独特ながらほほえましかったです。
2人とも一般的な感性からは逸れているけれども、一緒にいるからこそ幸せを感じているし、それがうらやましい。


たとえば夜中に校舎に忍び込んだり、季節外れの夏祭り(ごっこ)をしたり……。
普通の人がやらないような経験を重ねていき、惹かれあっていくわけです。
「ああーっ 私も こんな恋が したいわ――――」(かぐや様並感)

 

 

……失礼しました。
とまあ、2人の関係を共依存ととるか、純愛とするかは人によって変わるかと思いますが、この点については楽しく読み進められました。

 

続いて、合わなかった点
『殺したガールと他殺志願者』ですが、文章が独特で癖があります。
これは文章力がないという意味ではありません。
地の文で、詩のように韻をふんでいきながら展開していくことが多く、自分的にはそれが合わなかったなぁ、という感じでした。
ただこの手の文章が好きな方は、本当にハマると思います。

 

 

 

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※この先、ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

3.『殺したガールと他殺志願者』ネタバレありの感想

 

147ページ目から 面白くなってきましたね。


順調に愛を育んでいった2人ですが、主人公にとって想定外の事態に。 
みぎりの目的が心中へと切り替わっていたことが判明し、戸惑いを覚える水面。
その後、死神ことみぎりの姉に自分を殺すように依頼したり、さらにひと悶着あったり、主人公の謎と余命が開示されたり……。
怒涛の展開が続きましたが、そこからさらに2人が接近していって、エモさに拍車がかかりました。


ああ、ぼくも大学の自販機下に硬貨が落ちていないか2人で探したり、墓地で結婚式の予行演習をしたりしてみたい……いや、やっぱりいいです。
デート内容は通報案件のオンパレードですが、この2人だからこそ魅力的に見えるんですよね。

 

 

4.この物語を読んだ方におすすめの小説

ここでは『殺したガールと他殺志願者』を読まれた方に向けて、おすすめの小説を紹介させていただきます。

 

 

『サンタクロースを殺した。そして、キスをした。』

この作品が、かなりハマると思う。
本書に登場するキャラクターには名前がない。
「僕」「少女」「先輩」「悪友」など、地の文でも会話の中でも、固有名詞を避けるかのように話が展開していく。
そんな名無しの人物たちによって繰り広げられる、作中の言葉を借りるなら「負けている人の物語」であり「なにかを失っている人の物語」
どこにでもありそうで、ちょっぴりファンタジーな恋物語をぜひとも味わっていただきたい。

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『月光』

なんとなくですけど、ずっと前に読んだこの小説を連想しました。 
怪しく物騒だけど可愛らしい、そんなヒロイン像が似てるなぁと。

 

 

『さよなら世界の終わり』

『殺したガールと他殺志願者』よりもさらに、憂鬱さと淡白さを強めた作品。
こちらはますます人を選ぶけど、今作がハマった方はチェックしてみてください。

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ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
他にもいろいろな作品を紹介していますので、よければ覗いてみてください。 

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『このラノ 2021』文庫部門とガガガ文庫のラブコメムーブ

どうも、トフィーです。

 

今回は『このライトノベルがすごい! 2021』について語っていこうかと思います。
特にガガガ文庫の作品については、このブログでも一番とりあげていますので、そちらの作品を中心にあれこれと考えてみました。

 

突っ込まれる前にあらかじめ告白しておきますが、ガガガ文庫の回し者のような記事になりましたが、気にせずに読み進めてください()
そしてそのまま青い背表紙の買うタイトルを、Amazonやら書店で手に取ってみてください(ダイマ)


「まあ、好きなんだからしょうがないよね」と半ば開き直りつつも、さっそくこのラノ2021について紹介させていただきます。 

 


このライトノベルがすごい! 2021

※この記事では、単行本・ノベルズ部門に関しては触れていません。

 

 

①『このライトノベルがすごい! 2021』文庫部門トップ10について

a.ランキング

1位『千歳くんはラムネ瓶のなか』(ガガガ文庫・ラブコメ)

2位『スパイ教室』  (ファンタジア文庫・異能スパイ×教師モノ)

3位『ようこそ実力至上主義の教室へ』(MF文庫・学園サスペンス)

4位『探偵はもう、死んでいる。』(MF文庫・ミステリー×異能アクション)

5位『継母の連れ子が元カノだった』(スニーカー文庫・ラブコメ)

6位『楽園ノイズ』(電撃文庫・学園バンドストーリー)

7位『弱キャラ友崎くん』(ガガガ文庫・ラブコメ)

8位『彼女の妹とキスをした。』(GA文庫・ラブコメ) 

9位『プロペラオペラ』(ガガガ文庫・空戦ファンタジー)

10位『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』(GA文庫・ラブコメ)

 

b.前置き――このラノの意義について

まず初めに、なかなか納得感のあるランキングでした。

 

ぼく個人は協力者側はもちろんのこと、WEB側からも投票に参加していない、完全な外野の立場。
協力者の票が重視されすぎているという指摘も目にはしますが、逆にWEB票を強くしてしまうと、素晴らしい作品であるにも関わらず埋もれる作品も多数出てくるかと思うのです。

純粋な人気や売上を見たければオリコンに目を通して部数を確認すればいいわけですし、自分としても『このラノ 2021』には新たなる作品を知るためのツールとしての役割を期待しています。


大前提として考え方や感じ方は人それぞれではありますが、たくさんの作品に触れてきて、目の肥えた協力者たちが推す作品とはいったいどんなものなのか、そういったガイドブックを見るような心境で眺めれば、『このライトノベルがすごい! 2021』をより一層楽しむことができるのではないでしょうか、とぼく個人の受け取り方を紹介させていただきました。

 

前置きはここまでにして、各タイトルについて触れていきます。

 

c.所感

個人的に『楽園ノイズ』がランクインしているのが、かなりポイント高めです。
後述する『プロペラオペラ』もそうですが、協力者票があったからこそ、上位に食い込んできた作品ですね。


この作品は連作短編のような形式で、女装ネットミュージシャンとして活躍する主人公が、音楽を通して才能ある少女たちと打ち解けていくという物語。
上の説明だけを見ると「ネタよりの作品なのかな?」と思われるかもしれませんが、作品としての読み味はわりと重め。
読み応えのある、学園でのボーイミーツガールを好まれる方は、高確率で刺さると思います。


ときにはコミカルでまたときには詩的な文章が、よりいっそう物語とヒロインの魅力を引き立たせている名作でした。

 

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『スパイ教室』に関しては、もうだいたい予想通りというか……。
凄腕スパイの男がスパイ見習の少女たちを鍛え上げて、超絶難易度の任務に挑むという、ファンタジア文庫ではおなじみの教師モノの作品です。
ライトノベルの中では珍しいある仕掛けが用いられていたり、宣伝のPVに豪華声優陣を起用していたり、大賞を受賞した作品であったりということで非常に話題になっていました。

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逆に『プロペラオペラ』に関してはトップ10入りとなっているのが完全に予想外でしたが、これを機に手に取られる方が増えてくれれば嬉しいなぁと考えています。
空戦ファンタジーというかなり珍しいジャンルの作品ではありますが、一度手に取ってみるだけの価値は十分にあるかと思います。

 

 

あと『ようこそ実力至上主義の教室へ』ですが、やっぱり強いですね。
主人公の綾小路がキャラクター男性部門で、ヒロインの軽井沢がキャラクター女性部門で、それぞれ1位を獲得しています。
実は数年前に原作の1巻に触れ、またアニメも視聴したのですが、個人的にはそこまで合わないと感じてそれっきりにしてしまっていました。
だから軽井沢についてもほとんど知らないので、この機会にまた読んでみるのもありかなぁ……と思ってみたりしています。

 

それからラブコメがかなり強いですね。
新人賞発の『千歳くんはラムネ瓶のなか』『弱キャラ友崎くん』のような「現実にありそう」なスタイルの作品や、ネット発の『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』のようなただひたすらにいちゃあまな雰囲気が続く作品などなど、なかなかバリエーションがあって面白かったです。

 

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4位の『探偵はもう、死んでいる。』に関しても、物語の内容について軽く紹介しておきます。

「探偵」というタイトルから、ミステリー小説的なお話を想像していましたが、そうではありません。
怪人が出てきたり、ボーイミーツガールを軸にした話だったり、バトル要素も詰め込まれていたりと、ジャンルの暴力みたいな内容のストーリーではありましたが、それでも楽しく読み進められるのだから、あら不思議。
売れるのも納得な面白さでしたね。

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それから8位の『彼女の妹とキスをした。』ですが、これはもう本当にえげつない作品でした。
不純な純愛を描いた物語で、特に終盤の臨場感には脳が震えました。
下手したら主人公・ヒロイン双方に凄まじいヘイトが向きそうな、危険な題材を扱っているのに、面白く仕上がっているのがまたすごいんですよね。
ラブコメの中ではトップクラスに好きな話です。

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5位の『継母の連れ子が元カノだった』に関しては未読のため、発言は控えます。
また読み終えましたら、こちらに追記いたします。
また、『千歳くんはラムネ瓶のなか』『弱キャラ友崎くん』については、またこの後で触れます。 

 

 

そして文庫部門に限って見ると、なろう系のハイファンタジー作品がトップ100を見ても少なめで、トップ10にいたっては0となっています。
そしてラブコメタイトルが目立つことからも考慮するに、やっぱり10代・20代の意見が強く反映されているのかなーと。

 

思えば、よくTwitterやYouTubeで取り上げられた作品が目立っている気がします。
SNSで感想を呟いて拡散する機会が多く、またそれらによく触れて目にする機会も多いために「じゃあこの作品を読んでみようかなー」と、宣伝のスパイラルの中に組み込めた作品が上に来た、といった感じです。

  

 

②ガガガ文庫の作品のムーブについて

a.いやガガガ文庫強くね?

はい、ここからはダイマの時間です。

 

……という冗談はさておき、今回のランキングでは、多くのガガガ作品がノミネートしました。
ガガガの作品がここまで上位に組み込んだ要因としては、どの作品も個性的で面白いということが前提としてありますが、やはりTwitterの影響力も挙げられるだろうなと考えています。
ガガガ文庫は作者はもちろんのこと、編集部も活発にTwitterを運用されている印象で、それがSNS上での作品の周知に繋がって……といったところでしょうか。

 

文庫部門に関しては、『千歳くんはラムネ瓶のなか』『弱キャラ友崎くん』『プロペラオペラ』がトップ10入りしています。


そして11位に『妹さえいればいい。』、今年の夏に1巻が出たばかりの『現実でラブコメできないとだれが決めた?』も文庫部門19位・新作部門10位にランクイン。
『結婚が前提のラブコメ』も、なかなか攻めた作風でありながらも32位に入ってきています。

 

またトフィーのイチオシ作品、『きのうの春で、君を待つ』ですが、単巻ものでありながら、文庫22位・新作12位に入っていました(拍手~8888)。

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『このラノ』文庫部門にて、3/10作品がトップ10入りというだけでもかなりの快挙ですが、他にもラブコメ・ラブストーリーが数タイトル食い込んできていることを見るに、ガガガ文庫がかなりきているなーといった印象です。

 

次の項では、ガガガラブコメの流れについて見ていきます。 

 

b.ガガガ文庫ラブコメのムーブについて

突然ですが、みなさんはガガガ文庫の看板作品といえばどんなタイトルを思い浮かべますか?

 

『人生』であったり『俺、ツインテールになります。』であったり、他にもいろいろなタイトルが挙げられるかと思います。
そんな数ある作品の中でも、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』が第一に浮かぶ方も多いかと思います。(ぼくがそうでした)
思うに、ガガガのラブコメムーブはこの『俺ガイル』から始まったのではないかと、ぼくは考えています。

 

この俺ガイルですが、アニメ1期によって一気に話題となり、2期3期が制作され、オリコンにも何度も名前があがった、業界全体で見てもまごうことなきビッグタイトルです。
過去の『このラノ』にも当然ノミネートされているばかりか、3年連続で1位を獲得してきました。
(そして今回の『このラノ2021』でも、いまだに主人公の比企谷八幡は、キャラクター男性部門で3位に残っています)
俺ガイルは、主人公の八幡がボッチという属性でありながらも、数多くの問題に対して「比較的、現実的な解決策」をとって立ち回るラブコメ作品でした。

 

そして、この俺ガイルに続く作品として現れたのが『弱キャラ友崎くん』です。
昨年の『このラノ2020』では3位を飾り、今回もノミネート、そして来年2021年にはアニメも放送……とますます勢いに拍車がかかりそう。
この『友崎くん』くんですが、主人公が非リア・コミュ障属性であることからも、『俺ガイル』と比較されることも多かったかと思います。
その内容を簡単に説明すると以下のような感じ。
現実に目を向けて、リア充を目指す物語」

 

さらにそれに続いたのが、『千歳くんはラムネ瓶のなか』
こちらは先の2作とは打って変わって、リア充が主人公のラブコメです。
ただ、1巻では裏主人公的なキャラクターも登場し、「非リア充が、現実に目を向けて、リア充を目指す物語」であると見て取れます。
また同時に、「リア充が現実の中で、壁へと立ち向かう物語」ともいえるでしょう。

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そして最後に、『チラムネ』の後続も生まれつつあります。
それは上記3作品をリスペクトした作風の『現実でラブコメできないとだれが決めた?』です。
この作品はラブコメに憧れる少年が、「データを用いて、現実の中でラブコメを実現ささせるために奔走する物語」とまとめられそうです。

 

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そう、どの作品も現実という言葉がキーワードです。

 

いずれの作品も「もしかしたら現実で起こりそうな地に足ついたラブコメ」だという点で共通しており、それが他のレーベルにはない「ガガガらしさ」を生み出しているのかなぁ……と分析しました。


また俺ガイル以外の3作は、小学館ライトノベル大賞《優秀賞》という点でも共通しています。
次回以降に選ばれる物語の中にラブコメ作品が含まれており、それが「現実」というキーワードを踏襲したものであるのなら、その作品こそが第5の看板タイトルになるのではないかなと予想します。 

 

 

 

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
他にもいろいろな作品を紹介していますので、よければ覗いてみてください。 

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また余談ですが、10月発売のため対象外にはなりましたが、今のSNS上での盛り上がりを見るに、来年度のランキングには『魔女と猟犬』も高順位に入りそうだな―と予想しています。
こちらはラブコメではなく、ダークファンタジーですけどね。

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【使命は、7人の魔女を集めること。】『魔女と猟犬』1巻の感想

ダークファンタジー×群像劇、壮大なプロローグ‼

 

どうもトフィーです。
この記事では『魔女と猟犬』第1巻の感想を書きつつ、その中身を紹介していこうかと思います。

 

先にこれだけ言わせてください。

表紙の圧が強い。
ぶっちゃけますと、表紙買いしました。


魔女と猟犬 (ガガガ文庫)

 

1.あらすじ

使命は、厄災の魔女たちを味方につけること。

農園と鍛冶で栄える小国キャンパスフェロー。そこに暮らす人々は貧しくとも心豊かに暮らしていた。だが、その小国に侵略の戦火が迫りつつあった。闘争と魔法の王国アメリアは、女王アメリアの指揮のもと、多くの魔術師を独占し超常の力をもって領土を拡大し続けていたのだ。
このままではキャンパスフェローは滅びてしまう。そこで領主のバド・グレースは起死回生の奇策に出る。それは、大陸全土に散らばる凶悪な魔女たちを集め、王国アメリアに対抗するというものだった――。
時を同じくして、キャンパスフェローの隣国である騎士の国レーヴェにて“鏡の魔女”が拘束されたとの報せが入る。レーヴェの王を誘惑し、王妃の座に就こうとしていた魔女が婚礼の日にその正体を暴かれ、参列者たちを虐殺したのだという。
領主のバドは “鏡の魔女”の身柄を譲り受けるべく、従者たちを引き連れてレーヴェへと旅立つ。その一行の中に、ロロはいた。通称“黒犬”と呼ばれる彼は、ありとあらゆる殺しの技術を叩き込まれ、キャンパスフェローの暗殺者として育てられた少年だった……。
まだ誰も見たことのない、壮大かつ凶悪なダークファンタジーがその幕を開ける。

 引用:魔女と猟犬 (ガガガ文庫)

 

2.『魔女と猟犬』1巻の感想・レビュー

a.評価と作者情報など

評価:★★★★☆
ガガガ文庫
2020年10月刊行 

 

まず最初に、今回紹介させていただく『魔女と猟犬』ですが、すでに続刊の発売が決定しているようです。
作者はカミツキレイニー先生。
イラストはLAM先生です。

 

それでは、カミツキレイニー先生について簡単に説明していきましょう。
『こうして彼は屋上を燃やすことにした』
で、2011年第5回小学館ライトノベル大賞《大賞》を受賞され、それから様々な作品を発表されました。

根強い人気のある作家先生です。

 


こうして彼は屋上を燃やすことにした: (小学館)

 

またガガガ文庫以外の作品だと、『黒豚姫の神隠し』(早川書房)などが刊行されています。


黒豚姫の神隠し (ハヤカワ文庫JA)

 

 

b.作品内容・キャラクター

この物語を一文で表すと……。

強国にじわじわと追い詰められていっている弱小国家が、戦争に勝つために「魔女」と呼ばれる強大な力をもつ女性を集めていく中で、彼女たちにまつわる事件に巻き込まれていく話。

といった感じでしょうか。

 

『魔女と猟犬』の第1巻では、複数人いる魔女の一人、鏡の魔女を求めていきます。


主人公たちの属する小国・キャンパスフェローは、王国アメリアの増長によって滅亡の危機にさらされています。
アメリアは強大な力をふるうことのできる存在、魔術師を数多く抱えた国で、このままでは敗北は確実です。
そこで彼らは魔術師に対抗するべく、生まれながらに強力な力を持ち、忌み嫌われてきた七人の魔女を、自国へと迎え入れるという奇策にのりだしたのです。

 

「誰が鏡の魔女なのか、そもそも魔女とはなんなのか」、そういった謎を追いかけながらこの物語は進行していくのですが……。

 

この『魔女と猟犬』の第1巻には、明確な主人公が存在しません。
一応、「黒犬」と呼ばれる暗殺者の少年――ロロ・デュベルがその役割に該当することになるかとは思いますが、他のライトノベルと比べるとそこまで彼に焦点を当てられているという感じではありません。
そもそも、彼が初めて登場するのが45ページ目だということも、その印象を深めます。

 

またこの作品は、様々なキャラクターの目線でストーリーが進行していき、主人公やヒロインだけが大活躍するような展開にはなりません。
ヒロインの魔女も、最初に登場してからなかなか姿を見せませんし、一般的なライトノベルのようなボーイミーツガールの形式にはなっていません。
(だから魔女との恋愛要素を期待して……という方には向かないかも?)

 

主人公やヒロインといった役割が他の物語ほど強固ではなく、「誰もが主人公であり、また誰もがわき役でもある」というのが、この作品の印象です。
群像劇のようではあるけれども、完全にそうとも言い切れないので、半・群像劇と表すのが一番しっくりくるでしょうか。
ロロや魔女はもちろんのこと、国王や騎士団長にも見せ場がしっかりと用意されているので、ハラハラする展開もあいまって、誰か1人でも気に入れば最後まで読み進めたくなるような物語でした。

 

 


魔女と猟犬 (ガガガ文庫)

 

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※これより先には、『魔女と猟犬』第1巻の重大なネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

3.『魔女と猟犬』1巻のネタバレありの感想

色々と衝撃的な一冊でした。

 

ライトノベルにしては珍しく、主人公にとっての恋愛対象としてのヒロインは登場しません。
それだけではなく、鏡の魔女にはすでに意中の相手がいて、しかもその相手が国王。
さらには、王はすでに殺されてしまっているという、なんともやり切れない悲恋譚です。
ですので、ボーイミーツガールを好んでラノベを読まれる層にはあまり向いておらず、ダークファンタジーの中でも好みの分かれるタイプの作品だったかと思います。

 

さて、感想の続けましょう。
終盤に鏡の魔女を仲間にすることには成功したものの、すでにキャンパスフェロー陣の多くが手にかけられ、最終的にはデリリウムを連れ出すだけで精一杯となり、無事に脱出できたのはたったの3人のみとなってしまいました。
しかも、キャンパスフェローそのものまでもが、陥落してしまったという。

 

この展開には、「おお、まじか……」とショックを受けましたね。
「国を守るために魔女を集めよう‼」という物語のはずだったのに、その国が物語終盤で陥落してしまうという。
人を殺めることのできない暗殺者ロロが、最後に裏切り者に制裁を与えたことからも想像できますが、きっとこれからは復讐ものとして展開されていくのでしょう
冒頭にも書きましたが、この1巻は壮大なプロローグという感じですね。

 

『魔女と猟犬』ですが、発売したその月のうちに、2巻の発売が発表されました。
魔女は7人とのことなので、これから旅をしながら1巻ごとに集めていくような形式になるのでしょうか。
旅ものの物語としては、有名作品だと『キノの旅』や、最近だと『魔女の旅々』などが挙げられますが、一定以上の人気が出やすいジャンルではあります。
ダークファンタジーの『魔女と猟犬』がどれくらい受け入れられていくのか、という点については個人的にも気になるところではありますので、このままチェックしていきたと思います。

 

 

4.『魔女と猟犬』を読まれた方におすすめしたい作品

おそらくここまでご覧いただいた方の多くが、シリアスな物語を好まれるのではないかと推察しますが、そんな方々に対しては以下のラノベ・ライト文芸もおすすめです。
もし新しい一冊をお探しでしたら、ご参考までに一読いただけると嬉しいです‼

毛色が似た作品を抽出しました。

 

『君が、仲間を殺した数―魔塔に挑む者たちの咎―』

1人1人の命が重く主人公にのしかかってくる。
仲間を喰らって翌日に生き返る能力を手にしてしまった少年による贖罪の物語です。
いまやダンジョンものは数多く存在しますが、ここまで悲しみに満ちた物語は珍しいかと思います。

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『恋に至る病』
現代日本を舞台にしたサスペンス小説。
魔性の少女・寄河景が、カリスマ的な大量殺人鬼へと変貌していく様を描いています。

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 『86-エイティシックス-』
その戦場に、死者はいない。
なぜなら彼らは人ではないからだ。
戦場で散っていく有色人種――86(エイティシックス)には人権がなく、彼らは銀髪銀瞳の白系種(アルバ)の道具であり家畜にすぎない。
この物語ではそんな白系種の少女と86の少年が、互いに顔も知らぬままに心を通わせていき、それぞれの戦場において不条理に抗う作品である。

アニメ化も決定した、電撃の新たなる看板候補です。

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他にも様々なライトノベル・ライト文芸を紹介しています。
もしよければご覧ください。

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『現実でラブコメできないとだれが決めた?』1巻の感想【ラブだめ】

リスペクトとパロディで出来ている秀逸なラブコメディ

 

どうも、トフィーです。
今回は『現実でラブコメできないとだれが決めた?』の第1巻について、紹介させていただきます。

 

第14回小学館ライトノベル大賞「優秀賞」に選ばれた、ラブコメ作品。
現実でラブコメすることを夢見た主人公が、地道な調査と情報の分析をもとに、理想郷を作り上げていくといったぶっ飛んだ物語です。

 

また、すでに続編の発売が決まっています!

 

【追記】『このライトノベルがすごい! 2021』にて文庫部門・第19位を、新作部門・第10位を達成しました。


現実でラブコメできないとだれが決めた? (ガガガ文庫)

 

 

1.あらすじ

データでつくる最高の理想郷(ラブコメ)!

「ラブコメみたいな体験をしてみたい」

ライトノベルを嗜むすべてのラブコメ好きは、一度はこう思ったことがあるのではないだろうか?
ヒロインとイチャラブしたり、最高の友人達と充実した学園生活を送ったり。

だが、現実でそんな劇的なことが起こるわけもない。
義理の妹も、幼馴染も、現役アイドルなクラスメイトもミステリアスな先輩も、それどころか男の親友キャラも俺にはいない。
なら、どうするか?
自分で作り上げるしかないだろう!

ラブコメに必要なのは、データ分析と反復練習! そして――

第14回小学館ライトノベル大賞、優秀賞受賞作。

ライトノベルに憧れた俺――長坂耕平(ながさかこうへい)が、都合良くいかない現実をラブコメ色に染め上げる!

【編集担当からのおすすめ情報】
青春ラブコメの新ステージ『ラブコメをつくる』に挑戦した本作!
良い意味でぶっ飛んだ現実的ラブコメづくりに注目です!!

 

引用:現実でラブコメできないとだれが決めた? (ガガガ文庫)

 

 

2.『現実でラブコメできないとだれが決めた?』感想・レビュー

a.評価と情報

評価:★★★★☆(ただし、パロディネタが行ける人には星5つクラスにおすすめ‼)
ガガガ文庫
2020年7月刊行 
第14回小学館ライトノベル大賞「優秀賞」を受賞
『このライトノベルがすごい! 2021』文庫部門・第19位新作部門・第10位

 

上記の通り、『現実でラブコメできないとだれが決めた?』は新人賞出身の作品です。
作者は初鹿野創(はじかの そう)先生。
略称は『ラブだめ』で、受賞時のタイトルは『ラブコメを絶対させてくれないラブコメ』でした。
前記事と同様に、以下にゲスト審査員の若木民喜わかき たみき)先生のコメントを引用させていただきます。
『神のみぞ知るセカイ』で知られる漫画家です。

 

こんな設定大好きです。自分も得意としてるジャンルですのでやや前のめりで評価してしまうのを許してもらいたいのですが、特に序盤は完璧な始まりでした。狂気とも言える壮大無比な計画を胸にストーリーを始める主人公への期待、その前に現れる女の子たちのかわいさ、全部が魅力的です。「どんなすごいラブコメが始まるんだろう!」とわくわくしました。
それだけに、そこからのストーリーが結構オーソドックスなラブコメが展開されたので、ちょっと「あれ?」と言う気持ちです。序盤を読んで期待した内容とはやや違った気がしました。論理的すぎるというか……。特に前半は長坂くんにもっと面白い事をしてほしかったです。

引用:小学館::ガガガ文庫:第14回小学館ライトノベル大賞 最終選考

 

本書の「狂気とも言える壮大無比な計画」に、笑わされつつ(そして引きつつ)最後まで楽しく読むことができました。
個人的にはそこまでオーソドックスな展開だと思わなかったので、「受賞時点から大幅に改稿がされているのかな?」といった印象です。


またこの『ラブだめ』ですが、刊行してから早々に『このラノ』にて文庫部門・第19位を、新作部門・第10位を獲得していることから、今後はいっそう盛り上がっていくのではないかと予想できます。


イラストは、椎名くろ(しいな くろ)先生。
カラーも挿絵もどちらも魅力的で、ヒロインの魅力を引き立たせています。

 

 

【関連記事】
同じく第14回小学館ライトノベル大賞出身の作品。
こちらは、退廃的で切ないラブストーリーです。

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b.パロディネタが盛りだくさん

ラブコメを研究しつくしたうえで、それをストーリー内にうまく取り込んだ作品。
そしてそれらの作品のパロディネタが各所でみられるので、ラブコメを好んで読む層にはクスリと来ること間違いなしの一冊だろうかと思います。

 

必然的に、「パロディネタは苦手」という方にとっては乗り切れないかもしれません。
そのため、上記の星を4にするか5にするか悩みに悩みましたが、そういった事情も踏まえて星4にしました。

 

この物語は、ラブコメ好きな主人公の一人称で進んでいきます。
彼の軽快な語り口は非常に面白く、クスリと笑える箇所がたくさんあるのですが、そうさせる主な要因が、既存のラブコメ作品へのリスペクトと、それを活用したパロディネタです。

 

特に同じ小学館ライトノベル大賞出身の『千歳くんはラムネ瓶のなか』『弱キャラ友崎くん』はガッツリと名前が出てきています 笑

 

「他人がどうとか普通はどうとか、そんなの知ったことか。神は言った。『他人は他人、自分が自分を誇れればそれでいい』と」
「何それ、どこの神様がそんなこと」
「千歳神に決まってるだろうが! チラ〇ネは中高生必読の哲学書だぞ、教養のない奴め!」

引用:『現実でラブコメできないとだれが決めた?』

※千歳神、チラムネの主人公・千歳朔のことです。 

「くっ、また誘導尋問かよ、汚いぞ! 鬼、悪魔、日南さま!」
「最後のどういう例え? 人でなしってこと?」
「おまっ、クラスで居場所がなくなっても知らんぞ! 謝れ、謝りなさい! ごめんなさい!」

引用:『現実でラブコメできないとだれが決めた?』

※日南さまは、『弱キャラ友崎くん』の超人大魔王ヒロインの名前です。

 

 

他にも……

・『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』

・『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』

・『友達の妹が俺にだけウザい』

・『お隣の天子様にいつの間にか駄目人間にされていた件』

・『冴えない彼女の育てかた』

・『ニセコイ』(漫画)

などのネタが出てきていますが、おそらくぼくが知らないだけでもっと多くのネタが組み込まれているかと思います。
実際にどのように使われているかという点については、本編を読んでからのお楽しみということで……。

 

ここで取り上げさせいただいたうちの何作かに関しては、当ブログでも記事にしていますので、もしよければ『4.読み終えた方に向けておすすめ作品を紹介!』のリンクから飛んでみてください。

 

c.ストーリーとキャラクター紹介

『現実でラブコメできないとだれが決めた?』第1巻の内容について、一文で説明すると……。

ラブコメを愛し、ラブコメの日常を夢見る主人公が、現実でラブコメを実現するために、データをもとに奔走する話。

といった感じです。 

 

主人公の少年・長坂耕平(ながさか こうへい)は、高校でラブコメを実現することを夢見て努力を重ねていました。
その努力というのが、「調査」「分析」


SNSを活用した「机上調査」。
観察し、聞き込みを行ったり、あるいは直接会話で情報を引き出す「実地調査」。
そうして得られた情報を整理し、分析のうえにラブコメ適正なるものを認定し、さらには検索機能まで付け加えてまとめた「友達ノート」。

※「うわっ……」と思われる方もいるかもしれませんが、彼は非合法なことはほとんどなにもしていません。

 

耕平はこうした武器を活用し、ラブコメという名の理想郷を実現のために、動きだすところから物語がスタートします。


具体的には、メインヒロインとして認定した、ラブコメ適正Sランクの少女・清里芽衣(きよさと めい)のロッカーにラブレターを忍ばせ、屋上へと呼びだしたのです。
しかし、そこに現れたのは、まったくの別人。
ラブコメ適正Cランクの今どきJK、表紙に描かれている適正Cランクの女の子・上野原彩乃(うえのはら あやの)でした。

 

なんだかんだあってから、耕平は彩乃を共犯者として引き入れます。
そして彩乃は、呆れながらも耕平の指示に付き合ってくれるのでした。
さて耕平は、無事に理想郷を作り上げることができるのか?
それはぜひ、本編をご覧ください。

 


現実でラブコメできないとだれが決めた? (ガガガ文庫)

 

 

※この先はネタバレを含みますので、未読の方はご注意ください。
 
 
 
 
 
 
 

3.『現実でラブコメできないとだれが決めた?』ネタバレありの感想

幼なじみがいないなら、創造すればいいじゃない

ぶっ飛びすぎてて笑えます。 

 

これまで、赤の他人を幼なじみへと変貌させるようなラブコメがあったでしょうか?
いや、ありません(たぶん)。

 

対面調査を続けるうちに、気づいたら学年中の男子に声をかけ続けるヤバい女のレッテルを貼られそうになっていた彩乃。
そんな彩乃を救うために、彼女をツンデレ属性もちの幼なじみであると公言してしまうという強引な解決法には、さすがに笑わずにはいられませんでした。
それだけでも衝撃的なのに、この作品は最後の最後でもう一つの爆弾を落としていきます。

 

なんと、清里芽衣が黒幕でした。

彼女は誰よりも「普通」を求める女の子。
誰とも付き合わず、どこのグループにも属さず、とにかく空気のようにありたいという望みを持っています。


そのために、主人公からのラブレターを隣の下駄箱に入れて逃げていたのです。
また、主人公の不審な動きについても察知しており、彼に協力者がいることも見抜いていました。
芽衣はゴールデンウイークには多くのグループと遊び、対面調査に向かうように誘導し、協力者が彩乃であることを特定
そしてそのまま彼女を排除しようと画策しますが、主人公の幼なじみ宣言によって失敗したという流れです。

 

なんだこれは(絶句) 
ラブコメだと思っていた物語が、最後の最後で『超高度かわいい諜報戦』だったことが発覚してしまったこの驚きよ。 
例えるならば、某新世界の神の有名な台詞、「計画通り」のシーンを見たときと似たような心境になりました。

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現実でラブコメできないとだれが決めた? 2 (ガガガ文庫)

 

 

 

4.読み終えた方に向けておすすめ作品を紹介!

 

『千歳くんはラムネ瓶のなか』

ラブだめの中でもたびたび登場した、千歳神が主人公の物語。
学年でもトップカーストに君臨する、爽やかイケメンで性格のいい超絶リア充が主人公という珍しいライトノベルです。

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『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』 

黒い幼なじみがひたすらに可愛いラブコメ作品です。

好意を寄せていた女の子に失恋し復讐を誓う主人公と、彼に振られてしまったものの彼を全力で応援する幼なじみによる、失恋から始まるラブコメディーです。 

アニメ化も決定しています。

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『友達の妹が俺にだけウザい』 

ウザかわいい後輩に、ひたすら絡まれ続けるラブコメ。 
ハラハラどきどきなラブコメというよりは、「まったくお前らってやつは……」というタイプの物語です。
抽象的すぎますね、はい。
詳しい内容は、以下のリンクからどうぞ。

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他にも当ブログでは、様々な作品のレビューを行っています。
「なにか面白い物語を見つけたい!」という方の一助になれれば幸いです。

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『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』1巻感想【おさまけ】

まさかの復讐系ラブコメ

 

どうも、トフィーです。
今回は『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』、通称『おさまけ』の一巻について紹介させていただきます。

 

アニメ化も決定した超人気作品‼
かわいいは正義、正義はラブコメだということを教えてくれた一冊でした。


幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

 

 

1.あらすじ

幼なじみが負けフラグの時代は終わった? 予測不能なヒロインレース開幕!

☆★☆電撃文庫公式サイトの特設ページにて、水瀬いのりさん、佐倉綾音さんがヒロインを演じる『おさまけ』スペシャルムービーを公開中!☆★☆

幼なじみの志田黒羽は俺のことが好きらしい。家は隣で見た目はロリ可愛。陽キャでクラスの人気者、かつ中身は世話焼きお姉系と文句なしの最強である。
……でも俺には、初恋の美少女で学園のアイドル、芥見賞受賞の現役女子高生作家、可知白草がいる! 普通に考えたら俺には無理めな白草だけど、下校途中、俺にだけ笑顔で会話してくれるんだぜ! これもう完全に脈アリでしょ!
ところが白草に彼氏ができたと聞き、俺の人生は急転直下。死にたい。というかなんで俺じゃないんだ!? 俺の初恋だったのに……。失意に沈む俺に黒羽が囁く――そんなに辛いなら、復讐しよう? 最高の復讐をしてあげようよ――と。

引用:幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

 

2.『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』1巻の感想・レビュー

a.評価と作家情報

評価:★★★★★
電撃文庫
2019年6月刊行
このライトノベルがすごい! 2020年 文庫部門 新作第2位
2021年4月よりアニメ化決定

 

電撃文庫が、かなり力を入れて宣伝していた作品。
早い段階で豪華声優(水瀬いのりさん・佐倉綾音さん)が声を充てるPVも放映されていた。
そのかいもあってアニメ化が決定しています。

 

アニメのキャストも同じ、ちなみに主人公は松岡禎丞さんです。
既定路線かとは思われるが、なによりも内容が革新的に面白かったので納得の結果と言えるでしょう。

 

ちなみに、制作は動画工房
『干物妹!うまるちゃん』『ダンベル何キロ持てる?』など人気の作品を手掛けている会社です。

 

作者は二丸修一(にまる しゅういち)先生。
イラストはしぐれうい先生。

 

二丸先生は、2011年に『ギフテッド』でデビューしています。
第17回電撃大賞で受賞には至らなかったものの、編集の目に留まり拾い上げられてのデビューを果たされます。


ギフテッド (電撃文庫)

 

また2013年に『女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました』を発表。

女の子は優しくて可愛いものだと考えていた時期が俺にもありました (電撃文庫)

 

2015年にメディアワークス文庫から『嘘つき探偵・椎名誠十郎』を出されています。


嘘つき探偵・椎名誠十郎 (メディアワークス文庫)

 

そんな二丸先生の新たなる作品が『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』です。
その内容については、以下で詳しく解説していきます。

 

b.作品内容・キャラクター

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』には二人のヒロインが登場します。

 

1人目は、表紙にもなっている女の子・志田黒羽(しだ くろは)
明るく優しく面倒見のいい幼なじみ
主人公に対して、お姉ちゃんらしく振る舞い接してくるが、ときおり返り討ちに合い暴走します。
すでに主人公に対して告白しているが、断られてしまった。

 

 

もう1人は、可知白草(かち しろくさ)
黒髪ロングの孤高の存在で、女子高生でありながら芥見賞(誤字ではない)を受賞してメディアにもよく顔を出す人気作家
ツンツンした性格で、特に男子に対してはあたりが強いが、なぜか主人公に対しては態度を軟化させています。
主人公の初恋の相手だが、彼氏がいるということが発覚してしまいます。

 

 

この物語は、白草に対して抱いていた恋心を砕かれてしまい、落ち込んでいた主人公・丸末晴(まる すえはる)のもとに、黒羽が現れて彼に寄り添うところからグッと動き出します。

 

普通のラブコメであれば告白シーンこそが物語のクライマックスですが、『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』では、むしろ告白し、それぞれの初恋が失敗してからのスタートしています。

黒羽も末晴も失恋し、普通はそこで関係が疎遠になるかとは思いますが、この2人にはそれまでに築き上げてきた強固な絆があります。
互いの気持ちをさらけ出したことでこれまで以上に親密な関係になることができたわけです。

 

なるほど、これは新しい。
これまでのぼくはラブコメというものは告白するまでの過程こそを楽しむものだと思ってきました。
主人公とヒロインが無事にくっつくかどうかとか、いつ気持ちが打ち明けられるのかといったハラハラ感こそが醍醐味なのだと思い込んでいました。

 

けれどもこの作品は違いました。
すでに恋心をさらけ出しているからこそ、黒羽はドストレートに好意をぶつけてくるし、そこがなんともオカワワワワワで面映ゆい。
だけどこの作品はそれだけでは終わりません。

初恋のショックに落ち込む末晴に対し、黒羽はある提案を持ちかけました。

「――ハル、復讐しよう」

引用:『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』1巻 

復讐
なんとも物騒なワードですが、彼女はヤンデレというわけではありません。
振られてもなお主人公のことが好きで、一途な女の子です。

 

ではここでいう復讐とは、いったいどういったものなのか。
それは白草に対して、末晴を振ったことを惜しいと思わせるといったもの。
そのために、2人は疑似的なカップルとなり、初恋復讐を果たすために動き出します。
なんとも斬新な展開です。
まさか、ラブコメに復讐といった要素を絡めてくるなんて……。

 

ただ、これはあくまでもラブコメ、つまりコメディなのです。
暗く重苦しい雰囲気にはならず、ストーリーの展開は明るく面白いもので大半を占められます。

 

そしてなによりも、黒羽の魅力がすさまじい。
お姉ちゃんぶってるのに、責められるとめちゃくちゃ弱くなるギャップが、なによりも最高です。

 

さて末晴は白草に対して、初恋復讐を果たすことができるのか。
気になる方は、ぜひ本編をご覧ください。

 


幼なじみが絶対に負けないラブコメ (電撃文庫)

 

 

この先にネタバレありの感想を載せています。未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

3.『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』1巻のネタバレありの感想

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』
うん、確かにどっちを選んでも幼なじみエンドにしかならない。

 

というのは置いておいて、確かに黒羽は負けなかった。
最終的に主人公に告白されるまでに至りましたが………ただ勝ちもしなかった。
……というか自ら勝ちを捨てに行きましたね。
主人公が最終的に黒羽にひかれてしまうのは共感できます。
わかりすぎてしまいます。
本当に納得のいくかわいさでした。
アカン(語彙力)

 

作中では黒羽のネジがたびたび外れて暴走してしまいますが、心の底からグッときてしまいました。
あんなにド直球に好意をぶつけられて、あんなに詰め寄られて、あんなに自分のことを心配してくれるような子になびかない方がおかしい。
けれども主人公は最後の告白の舞台まで暴発せず、その点は素直に偉いなあと。

 

この物語は「復讐系ラブコメ」というかなり変わった形式をとっています。
うまく処理しなければ全員がクズとしてのレッテルを貼られてしまいそうな、とにかく危険極まりない題材ではあったものの、オチのつけ方が秀逸かつギャグ寄りのために不快感が一切残りませんでした。
それどころかクスリと笑いを溢してしまうほど。
まさか主人公だけでなく白草も、そして黒羽までもが「初恋復讐」にいそしんでいたとは……。
「うわー、そうきたかー……」と唸らされました。
もう文句なしの☆5評価です。

 

あと阿部先輩、普通にいいやつでした。
幼なじみの白草に巻き込まれつつも、かつて憧れた天才子役――丸末晴を立ち直らせるため悪役を演じていました。
見事主人公も舞台にあがって演じることができるようになりましたし、この人が一番の勝者でしたね。

 

 

4.読まれた方に向けて他におすすめしたいラブコメ作品など

『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』を読まれた方に向けて、おすすめのラブコメをいくつか紹介させていただきます。

 

 

 

『友達の妹が俺にだけウザい』

ヒロイン同士がバチバチやる物語が好きな方には、『友達の妹が俺にだけウザい』おすすめ。
こちらも最近勢いがあり、おそらくはアニメ化もされるのではないかと予想しています。

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『氷の令嬢の溶かし方』 

少しずつ距離を詰めていくタイプの物語が好きな方には、『氷の令嬢の溶かし方』がおすすめ。
コメディの要素が薄いのでラブコメとはいいがたいですが、ラブの要素は突き抜けていて読むと悶えます

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『千歳くんはラムネ瓶のなか』

続いて紹介させていただくのは、『千歳くんはラムネ瓶のなか』
コメディ要素が強い物語です。
主人公が超絶リア充という、ライトノベルの中では珍しい部類の作品です。

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『いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら』

最後に紹介するのは、『いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら』
ハラハラした恋物語を読みたい方に、お勧めしたい作品です。
この物語は、作家志望の2人の少年が主人公。
かなり珍しいダブル主人公構成の作品です。
「先にプロデビューした方が先輩と付き合うことができる‼」という、ヒロインレースならぬ主人公レースをぜひお楽しみください。

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