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落葉沙夢『ー異能ー』感想|第15回審査員特別賞作

どうも、トフィーです。


今回は落葉沙夢先生の『ー異能ー』を紹介させていただきます。
タイトルの通り、この物語のキャラクターは異能を有しています。
そんな彼ら彼女らが、自身の能力を駆使しながら1対1での命を懸けた試合を続けていく、異能バトルものの物語です。

MF文庫Jライトノベル新人賞において《審査員特別賞》を受賞した作品で、ラノベとしてはかなり変わった作風となっていました。

 


―異能―【電子特典付き】 (MF文庫J)

 

 

 

1.あらすじ

自分の凡庸さを自覚している大迫祐樹(おおさこゆうき)には、成績優秀で野球部エースの赤根凜空(あかねりく)と学校一可愛い月摘知海(るつみちひろ)という友人がいる。二人は誰が見てもお似合いで、自分は間を取り持つモブキャラなのだ、と認識する大迫だが、なぜか月摘と2人で映画に行くことになってしまう。「デートだね」とはにかむ月摘に戸惑いながら帰宅した大迫の前に、見知らぬ少年が現れて問う。「君の願いは、なにかな?」それは異能を秘めたモノたちへのバトルロワイヤルへの招待だった。「僕……の中にも異能があるのか?」しかしそれすらも「完全な勘違い」だったのかもしれない――!! 予想を覆す怒濤の展開。審査員評が完全に割れた事件的怪作、刊行。

引用:―異能― (MF文庫J)

 

 

2.『ー異能ー』感想・レビュー

 

a.評価と情報

評価:★★★☆☆
MF文庫J
2020年1月刊行  
第15回MF文庫Jライトノベル新人賞《審査員特別賞》

MF文庫Jライトノベル新人賞受賞作。
その中でも、《審査員特別賞》に選ばれ、「審査員評が完全に割れた事件的怪作」として売り出しているのは、作風が良くも悪くも従来のライトノベルっぽくないからでしょう。


具体的にどういったところが、ということに関しては次の作品内容の項でお話ししますが、星を3つにしたのは万人受けする作風ではないという理由が大きいです。

 

ちなみに、同じ回の受賞作には、『探偵はもう、死んでいる。』などがあります。

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また以下の記事でも、第15回MF文庫Jライトノベル新人賞について軽く触れています。
こちらは新人賞受賞作が、刊行前後でどのようにタイトルが変化したのかを調べたものとなります。
ちなみに今作に関しては、『異能モノ』『―異能―』といった具合に変更されています。

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b.作品内容・キャラクター

本作は異能バトルもの。

 

謎の人物、和抄造(にぎ しょうぞう)によって選ばれた13人の異能者が、毎週土曜日にクジを引き、当たりを手にした2人が翌日の夜に命を懸けた死闘を繰り広げる。
最後の1人にまで残れば何でも願いが叶えられるというその大会に、主人公の少年・大迫祐樹(おおさこ ゆうき)も半強制的に参加させられてしまう。

 

しかし、祐樹には自分の異能が分からない
基本的に、異能を持つ者であれば、人生のどこかで自分の能力に気づくはず。
それに今まで気づかなかったということは、自分の能力は「異能を打ち消す異能」なのではないかとふんで、祐樹は大会へと挑むが――というのが第一章です。

 

『ー異能ー』を読んでいるうちに、ぼくはなんとなく『未来日記』を思いだしました。
ちなみに『未来日記』はライトノベルではなくコミックですが、アニメ化もされています。

 

 

さて、先ほど良くも悪くも従来のラノベっぽくないと述べた理由ですが、ざっと挙げると以下の通り。

 

①群像劇である

主人公やヒロインを活躍させることに重きを置いたライトノベルにおいて、群像劇というスタイルはあまり選ばれていません。

※もちろん全く無いわけではないですし、最近だと『魔女と猟犬』のように群像劇っぽい作風のものもあります。

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また本作は全部で13章の構成となっていますが、それが8人の視点により描き分けられています。

そういうわけで、まず多くのライトノベルと毛色が異なっていると言えます。 

 

②主人公がほとんど登場しない

群像劇というスタイルを選択されていることから、「当たり前では?」と思われるかもしれませんが、本作はとある理由から、一章以降、大迫くんは名前すらほとんど登場しません
そのため、「主人公やヒロインの活躍を見たい‼」という方にはあまりオススメできず、逆に色んなキャラクターの活躍を見たいという方には向いている1冊です。

 

③文章が淡々としている

本作は一人称ですが、文章が非常に淡々としています
そう感じた理由としては、文末が基本「る」か「た」で終わることや、心情描写が少なめであることなどが挙げられます。
ただ、文章自体は読みやすく、淡々とした文章が好きな方には向いているかと思います。
ラノベではないのですが、どことなく中村文則先生のような印象を受けました。

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他にも細かな理由はありますが、ライトノベルっぽくはないと感じたのはこの3点によるところが大きいのではないかと思いました。 


また余談ですが、ぼくがこの作品を読み終えて一番意外だと感じたのは、この作品が電撃文庫からではなく、MF文庫Jから刊行されたということ。
新人賞作品ですし、変わった作風のものを取り入れようとされたのでしょうか?

 

上述のようにかなり変わった作風ではありますが、1冊で完結していて手に取りやすいので、気になった方はまずは読んでみることをオススメします。

 

 

 

 

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 ※この先、『ー異能ー』に関する重大なネタバレが含まれています。
未読の方、読みかけの方はお気をつけください。

 

 

 

 

3.『ー異能ー』ネタバレありの感想

最後はヒロインの知海(ちひろ)が、最後まで勝ち残って、「願いを使って元通り‼」という展開や祐樹を生き返らせるような展開を想像していました。
勝ち残った知海と祐樹以外のキャラクターが死んだままで終わるというのは少し予想外ではありましたが、むやみやたらと生き返りまくるとそれはそれで命が軽く感じられてしまうかと思うので、これはこれでアリだなと。

 

あと祐樹が自分のことを「主人公」だと認めて、胸を張って生きていけるようになったのは彼にとっていい終わり方だなぁと思いました。
そのため、「後味の良い終わり方だなぁ」と思ったわけですがそれも束の間、そのあとに重護視点で本物の橘の腐敗した死体を発見する描写が続き、物語が締めくくられたので、ちょっとだけモヤモヤが残りました。
とはいえ、本物の橘さんがどうなってしまったのかは、少しだけ気になるところではあったので、それを描いてくださったのはよかったなぁと。

 

あと振り返ってみれば、ソシャゲのガチャが好きだったりとタチバナが黒幕・和抄造である伏線自体は描かれていましたが、「タチバナ」だけカタカナ表記だったのは、重護の違和感を演出するためでもあったのかなぁとも思いました。

 

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