『さよならピアノソナタ』をもう一度
どうも、トフィーです。
今回は、杉井光先生の『楽園ノイズ』を紹介させていただきます。
音楽と青春を題材にした物語です。
音楽の知識がからっきしのぼくでも、十分に楽しむことができました。
読み味重めのボーイミーツガールを好まれる方には、高確率で刺さるのではないかと思います。
『このライトノベルがすごい! 2021』、文庫部門・第6位に選ばれた作品でもあります。
1.あらすじ
出来心で女装して演奏動画をネットにあげた僕は、謎の女子高生(男だけど)ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまう。顔は出してないから大丈夫、と思いきや、高校の音楽教師・華園美沙緒先生に正体がバレてしまい、弱みを握られてこき使われる羽目になる。
無味無臭だったはずの僕の高校生活は、華園先生を通じて巡り逢う三人の少女たち――ひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音――によって騒がしく悩ましく彩られていく。
恋と青春とバンドに明け暮れる、ボーイ・ミーツ・ガールズ!引用:楽園ノイズ (電撃文庫)
2.『楽園ノイズ』1巻の感想・レビュー
a.評価と情報
評価:★★★★★
電撃文庫
2020年5月刊行
『このライトノベルがすごい! 2021』、文庫部門・第6位
どちらも非常に有名な作品なので、読んだことがなくてもタイトルだけは聞いたことがあるという方も多いかと思います。
特に『さよならピアノソナタ』に関しては、『楽園ノイズ』と通じる部分の多い作品なので*1、どちらかにはまった方は続けて手を出してみてもいいかと思います。
ラブコメがとにかく強かったこの回ですが、青春小説で、しかもたった一巻のみの刊行で上位に食い込んでいるからこそ、地力の高さがうかがえますね。
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b.作品内容・キャラクター
主人公の少年・村瀬真琴(むらせ まこと)は、ネットミュージシャンとして細々と活動していたけれども、再生数に伸び悩んでいました。
ある日、姉の提案で女装して動画をあげることを提案されます。
しぶしぶ、従ったところ再生数が爆発! (表紙中央のキャラ)
あわてて、プレイヤーネームを『Musa男』に変更し、男であることを明かしても、「逆にそれがいい‼」とより一層人気に拍車がかかってしまったのです。
そうして知名度をあげつつも、顔を隠していたために身バレはせず進学。
しかし、進学した高校の音楽教師・華園美沙緒(はなぞの みさお)に正体を見抜かれてしまったのです。(表紙右端の女性)
そして『Musa男』であることを明かさないことと引き換えに、真琴は授業の手伝いや雑用に駆り出されることになったのでした。
そんな中で、彼は3人の少女に出会います。
ピアノ界の元神童で、ツンドラ属性の冴島凛子(さえじま りんこ)。
全キャラを通しても、掛け合いがもっともお気に入りです。(表紙・主人公の左隣のキャラ)
おしとやかだけど、ドラムのことになると早口になる百合坂詩月(ゆりさか しづき)。(表紙・主人公の右隣のキャラ)
不登校だけど、音楽活動を心から愛する無邪気な少女・宮藤朱音(くどう あかね)。(表紙・左端のパーカーの女子)
彼女たちは真琴とくらべて、圧倒的な才能を持ちながらも、それぞれの理由により音楽から離れていこうとしていました。
『楽園ノイズ』は、連作短編のような形式で、彼女たち一人ひとりと関わっていく物語なのです。
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3.『楽園ノイズ』ネタバレありの感想
みなさん、335ページ目を実際に読み込まれましたか?
QRコードの演出、あれはずるいですよね。
美沙緒先生が持病のせいで退職してしまって、それでも先生に届けるためにライブに出て、アンコールでMusa男自身がボーカルまでやり遂げて、ウルッときていたところにアレですよ。
自分は最後まで読み切ったところで例のページに跳びましたけど、正直涙腺がやられかけました。
美沙緒が真琴を筆頭とした生徒たちに授業の多くを任せていたのも、自分がいなくなってからのことを考えていたから。
やたらと休んでいたのも、通院のためだったと考えると胸に来るものがあります。
ある程度読み進めたところで、あくまでも生徒がメインで、先生は彼ら彼女らを導くために活躍してましたよー、といったことがそれとなく描かれる展開を予想していました。
それがまさか、終盤にあんな爆弾が残されていたなんてね……。
そして、2巻が出るとのことはすでに決定しているようです。
凛子らの恋愛面での動きも気になるところではありますが、美沙緒先生は再登場するのか、そこがとにかく楽しみですね。
4.この物語を読んだ方におすすめの小説
ここでは、『楽園ノイズ』が刺さった方に向けて、おすすめの小説を紹介しております。
今回はライトノベルから一般文芸まで、区分を問わずに掲載しました。
『さよならピアノソナタ』
あとがきでも触れられていましたし、うえでも取り上げさせていただいたので、わざわざここに掲載する必要もないかとは思いますが……。
『蜜蜂と遠雷』
本屋大賞と直木賞を受賞し、映画化もされた小説です。
文庫版なら上下巻です。
とあるピアノコンクールに挑む4人の物語。
女子音大生・天才少年・年齢制限ギリギリの社会人・王子様と呼ばれる優勝候補。
群像劇の形式で、それぞれの目から見たピアノへの思いがつづられていきます。
『夏へのトンネル、さよならの出口』
こちらは、ガガガ文庫のライトノベルです。
上の2冊と違って音楽とは関係のない物語ではありますが、『楽園ノイズ』後半の空気感が刺さった方には、こちらの物語も合うのではないかと思います。
世界から置いて行かれることと代償に、欲しいものが手に入るトンネルへと潜る少年少女のボーイ・ミーツガール。
過去とのけじめ、やり切れない思いと向き合う青春小説という形式は一致しております。
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ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
当ブログでは、他にも様々な物語を紹介しています。
作品探しのお役に立てれば幸いです。
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*1:『このライトノベルがすごい! 2021』の著者インタビューにて、先代の担当編集からの提案を受けて、『さよならピアノソナタ』をもう一度書いてみたと述べられています