書き出したら止まらない

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【連れカノ】紙城境介『継母の連れ子が元カノだった』第1巻の感想

 

どうも、トフィーです。

 

今回は紙城境介先生のライトノベル、『継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない』第1巻の感想記事となります。

 

あとで詳しく触れますが、『このライトノベルがすごい!』でも2年連続でノミネートされている超人気作です。
もう先に言ってしまいますが、めちゃくちゃ面白かったです。

 


継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない (角川スニーカー文庫)

 

1.あらすじ

「僕が兄に決まってるだろ」「私が姉に決まってるでしょ?」親の再婚相手の連れ子が、別れたばかりの元恋人だった!? “きょうだい”として暮らす二人の、甘くて焦れったい悶絶ラブコメ――ここにお披露目!

引用:継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない (角川スニーカー文庫)

 

 

2.『継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない』(連れカノ)第1巻の感想・レビュー

a.評価と情報

個人的な評価:★★★★★
スニーカー文庫
2018年12月刊行
略称:『連れカノ』
第3回カクヨムweb小説コンテスト≪大賞≫
『このライトノベルがすごい!2020』文庫部門7位・新作部門3位
『このライトノベルがすごい!2021』文庫部門5位
2021年7月1日にアニメ化発表

 

 

作者は、紙城鏡介(かみしろ きょうすけ)先生。
イラストは、たかやKi先生。
 

いつも通り受賞タイトルなどを書き連ねたところ、なにやらズラッと並んでしまいましたが、それだけ評価されている作品というわけです。

 

さらに付け加えるなら、シリーズ累計30万部・第1巻では14版発行(21年2月時点)という人気作。
売り上げもしっかりと出ている感じでしょうか。


『連れカノ』ですが、小説投稿サイト『カクヨム』発の作品です。
今も掲載されているので無料でも読めますが、書籍版は加筆修正がなされていたり、書き下ろしのエピソードが追加されていたりします。
  

21年のこのラノ作品については、この記事でまとめて紹介しております。
もしよければ、こちらもご覧ください。 

www.kakidashitaratomaranai.info

 

 

b.ストーリー内容とキャラクターの紹介 

主人公は、伊理戸水斗(いりど みずと)
中学卒業時に、恋人の結女と別れるも、父が再婚し義理の「きょうだい」ができる。
結女の元カレ。


ヒロインは、伊理戸結女(いりど ゆめ)
中学時代は引っ込み思案で地味なタイプの女子だったが、華々しく高校デビューを遂げる。
旧姓は綾井(あやい)で、母の再婚により水斗と義理の「きょうだい」になる。
水斗の元カノ。 

継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない (角川スニーカー文庫)

引用:継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない (角川スニーカー文庫)

はい、いきなり地獄みたいなキャラ説明でした。
別れたばかりの恋人と義理の家族になって、しかも同じ家で暮らすって、普通に考えればもう地獄そのものでしょう……。
まあ読者的には、めちゃくちゃ面白い設定なんですけどね!

 

一度別れたがゆえに、容赦なく毒を吐きあうことのできる仲……という感じですけど、奥に潜ませた好意は互いに意地を張ってか明かさない。
それでも、ふとした拍子に本心が出てきて、それがグッとくる物語でした。
ケンカップルに近い感じでしょうか。

 

また、地の文も個性的で面白かったです。
『連れカノ』は主人公とヒロイン、双方の一人称によって進んでいきます。

 

ほとんどの章で、最初に付き合っていたころのエピソードが回想され、現在に戻ってそれに関連した話が展開されていくという構成になっていて、ある程度形式が決まっています。
それで、この回想シーンがとにかく面白いんです。
以下はヒロイン視点からの一部引用です。

 

今となっては若気の至りとしか言いようがないけれど、私には中学二年から中学三年にかけて、いわゆる彼氏というものが存在したことがある。

うだつの上がらない顔で、ファッションには大して気を遣わず、いつも猫背気味で、話すことはこれっぽっちも面白くない、およそ男性としての魅力を持ち合わせないクズの塊のような男だったーーまあ、頭はいいほうだったと思うけれど。

引用:『継母の連れ子が元カノだった』第1巻

 

このような、現在から過去の恋人に対して毒を吐き、また当時の自分に対してのツッコミを入れていくんですよね。

 

ただ、そういった回想シーンの中にもチラチラと本音が見え隠れしていて、それがとにかくエモい(急な語彙力の喪失)。
ラブコメですし、ここについては驚くポイントでもないと思うので触れちゃいますが、「まだ、お互いに好き同士」って帯にも書かれているんですよね。
「好きなのに、お互い正直になれない」そういった関係性が好きな方には、本当に刺さる一冊だと思います。

 

色々書きましたけど、要するに主人公もヒロインもツンデレというわけです。
「はよ、復縁してくださいよ!」と2人に対してこっちがツッコミを入れたくなるほどの。

 

本当にオススメできる1冊なので、ラブコメ好きで未読の方はぜひ読むのを検討してみてください。

 


継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない (角川スニーカー文庫)

 

 

www.kakidashitaratomaranai.info

 

 

この先にネタバレありの感想を載せています。未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

3.『連れカノ』第1巻のネタバレありの感想

デート回の結女の暴走っぷりが、心底面白かったです。
「ねえ、擬態はもういいの? ねえ?」と思わず語りかけたくなるくらいには、結女のテンションが爆上がりしてましたね。

 

家に帰ってからも、興奮のあまり互いに記憶をなくしてしまったりと、もうなんで復縁しないのかわからない。
ここで、家族設定が生きてくるわけですね。

 

家族となった以上、関係性が切れることはそうそうないでしょうけど、恋愛面に関しては逆風という。
まあ、義理のきょうだいは結婚できるんですけどね。
いろいろともどかしいですね。

 

高校でできた結女の友達(女の子)が、ストーカーと化したり(キマシタワー?)、ややホラーじみた演出もあったりしましたが、とりあえずひと段落。
次の巻では、新ヒロインも加わってのエピソードが描かれていくようです。 

 

【せいとい】感想『放課後の聖女さんが尊いだけじゃないことを俺は知っている』

「きみも来る?」

 

どうも、トフィーです。

 

今回は、戸塚陸先生のライトノベル、『放課後の聖女さんが尊いだけじゃないことを俺は知っている』を紹介させていただきます。

 


放課後の聖女さんが尊いだけじゃないことを俺は知っている (富士見ファンタジア文庫)

 

 

1.あらすじ

「きみも来る?」時刻は午後11時。
平凡な高校生・倉木大和はコンビニからの帰宅途中に、同級生で聖女と呼ばれる美少女・白瀬聖良と出会う。
彼女に誘われるまま、真夜中の繁華街で共に時間を過ごし、その日をきっかけに二人の交流がはじまった。
 初めてのダーツ、CD貸し借り、ラーメン巡り……。
たまに甘えてきて、少しやんちゃな一面のある聖良と関わるうちに、大和の退屈だった日常は色づいていく。
「あのとき、大和がついてきてくれて、ほんとによかった」
 どこまでも自然体な聖女さんと過ごす、甘くて、尊い、青春と恋の物語がはじまる――。 

引用:放課後の聖女さんが尊いだけじゃないことを俺は知っている (富士見ファンタジア文庫)

 

 

2.『放課後の聖女さんが尊いだけじゃないことを俺は知っている』(せいとい)1巻の感想・レビュー

a.評価と情報

個人的な評価:★★★☆☆
ファンタジア文庫
2021年5月刊
略称:『せいとい』 

 

作者は、戸塚陸(とづか りく)先生。
イラストは、たくぼん先生。

 

戸塚先生の作品だと、『オタビッチ綾崎さんは好きって言いたい』『俺がラブコメ彼女を絶対に奪い取るまで。』などが同じくファンタジア文庫より刊行されています。

 

話を今作に戻します。
帯で「SNSで反響続々!」とうたわれていますが、ぼく自身Twitterを眺めている間に確かに何度か目にしたこともありました。


WEB系のラブコメ小説のような印象もそこそこ受けましたが、調べてみたところ「小説家になろう」や「カクヨム」発の作品ではなさそうです。

 

またPVも発表されていますので、なんとなくの作品のイメージを確認したい方は、こちらもご覧いただくといいかもしれません。


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b.ストーリー・キャラクター紹介(ややネタバレを含みます)

ストーリー紹介をするにあたって、『せいとい』1巻全体のなんとなくの方向性と雰囲気について言及しています。
具体的なネタバレは避けるようにしていますが、念のためご注意ください。

 

 

表紙とタイトルから最近よくある「いちゃあま系」(『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』『氷の令嬢の溶かし方』 など)を想像していましたが、読み進めてみるとちょっと違う印象を受けました。

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主人公の少年・倉木大和(くらき やまと)が夜遅くにコンビニから帰る途中に、クラスメイトの白瀬聖良(しらせ せいら)を見かけます。
気になって後を追い、声をかけると「きみも来る?」と誘われ、そこから2人の交流が始まっていきます。

 

この物語を読んで、ぼくが感じた魅力は2点。

 

1つ目はヒロイン・聖良の掴みどころのなさ

 

彼女は、誰に対してもサバサバとした自然体の態度で接していることから、クラスメイトからの人気も高く、美貌も相まって「聖女」と言われています。
しかし特定の友人を作らず、自分の価値観にそって判断し行動するところが、また個性的で面白いと思いました。

 

もう1つは、そんな白瀬に連れられて、退屈な日常から逸れていくワクワク感

 

『せいとい』のストーリーは、基本的に白瀬主導で進んでいきます。
深夜の外出だったり、授業をさぼっての昼寝だったり、あるいは立ち入り禁止の屋上でのランチだったりと、彼女との日常は「聖女」の名とはかけ離れたもの

 

それでも、日常に退屈を感じていた主人公からすれば、白瀬の存在はまるで白馬の王子様のように映ったことでしょう。
「かっこいい」というのとはまた違うのですが、どこか大人っぽくて、大和にとって知らない世界を見せてくれる白瀬聖良の役割は、「白馬の王子様」という表現がわりとしっくりくるかなぁと思います。
(読み終えた方なら、この表現に納得してもらえるのではないでしょうか)
主人公が内向的な性格であることも、そう感じた一因だと思います。 

 

恋愛要素については、1巻時点では薄めです。
恋愛よりも、友情のほうが描かれています。

 

また、1巻を通して大きく話が動くタイプの作品でもありません。
大和の心情的な成長はややありますが、大きな事件や、解決しなければならない問題、あるいは主人公たちにとって障壁となるような相手は、少なくとも1巻の時点では登場しません。
そのため、読み応えのある作品を好む方や、甘々なシチュエーションを好む方、新規性を求める方には合わないかもしれません。

 

裏を返せば、ゆるめの日常ラブコメを好む方や、現実にも起こりそうな「日常の中の非日常」のような雰囲気を味わいたい方にはオススメです。
このあたりは完全に趣味ですね。

 

 

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【アニメ化決定】牧野圭祐『月とライカと吸血姫』ラノベ第1巻の感想

「連合王国よりも先に、人類を宇宙へ到達させよ」

 

どうも、トフィーです。

 

今回は、牧野圭祐先生の『月とライカと吸血鬼』第1巻の内容について紹介していきます。

 

16年12月に購入して以来、ずっと積んでしまっていたのですが(本当に申し訳ございません!)、アニメ化決定ということで掘り出してみました。
「いや、なんでこれを積んでしまっていたんだ……」と後悔するくらい面白い物語でした。

 

ということで、今さらながら感想などをまとめましたので、よければご覧ください。 


月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 

 

1.あらすじ

宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女の物語。

人類史上初の宇宙飛行士は、吸血鬼の少女だった――。
いまだ有人宇宙飛行が成功していなかった時代。
共和国の最高指導者は、ロケットで人間を軌道上に送り込む計画を発令。『連合王国よりも先に、人類を宇宙へ到達させよ!』と息巻いていた。

その裏では、共和国の雪原の果て、秘密都市<ライカ44>において、ロケットの実験飛行に人間の身代わりとして吸血鬼を使う『ノスフェラトゥ計画』が進行していた。とある事件をきっかけに、宇宙飛行士候補生<落第>を押されかけていたレフ・レプス中尉。彼は、ひょんなことから実験台に選ばれた吸血鬼の少女、イリナ・ルミネスクの監視係を命じられる。

厳しい訓練。失敗続きの実験。本当に人類は宇宙にたどり着けるのか。チームがそんな空気に包まれた。
「誰よりも先に、私は宇宙を旅するの。誰も行ったことのないあの宇宙から月を見てみたいの」
イリナの確かな想い。彼らの胸にあるのは、宇宙への純粋な憧れ。

上層部のエゴや時代の波に翻弄されながらも、命を懸けて遥か宇宙を目指す彼らがそこにはいた。宇宙に焦がれた青年と吸血鬼の少女が紡ぐ、宙と青春のコスモノーツグラフィティがここに。

 

【編集担当からのおすすめ情報】
『HiGH&LOW』や『ペルソナ5』などの脚本・シナリオに携わった、牧野圭祐が送る最新シリーズ! 宙に憧れる人間の青年と吸血鬼の少女が人類史上初の有人宇宙飛行を目指します。〈飛空士シリーズ〉のような切なさと爽やかさのある宇宙と青春の物語にご注目!

引用:月とライカと吸血姫 (ガガガ文庫)

 

2.『月とライカと吸血姫』ラノベ第1巻のレビューと内容紹介

a.評価と情報

個人的な評価:★★★★★
ガガガ文庫
2016年12月刊
『このライトノベルがすごい!2018』文庫4位
2021年アニメTVアニメ化(制作:アルボアニメーション)

 

作者は牧野圭祐(まきの けいすけ)先生。
牧野先生は、今作と同じくガガガ文庫から『フリック&ブレイク』を発表されていたり、他にもゲーム『ペルソナ5』のシナリオチームなどを担当されている方です。

 

イラストは、かれい先生。
電撃文庫より刊行されている『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求』のイラストも担当されています。

 

さて、『月とライカと吸血姫』の話へと戻りましょう。

 

冒頭でも触れたように、今作はアニメ化が発表されています。
このラノ文庫部門4位にも選ばれていることから注目されていた作品ではありましたが、アニメ化発表時のPVで、ヒロインのイリナ・ルミネスクを林原めぐみさんが演じることが判明し、それも含めて話題になっていました。

 

個人的にはPVを見た感じ、期待大です。

 


www.youtube.com

 

b.ストーリー・キャラクター紹介

心の機微の描き方が非常に丁寧で、先へ先へと読ませる力の強い、読み応えのある物語でした。
主人公とヒロインのやり取りにユーモアがあり、最後では感動のあまり手が震えました

 

ぼくは、気に入った表現や面白かった箇所にちくいち付箋を貼っていくという、ちょっと変わった読書スタイルをしているのですが、今回の付箋の量は過去最高クラスだったと思います。


それくらいに大満足の作品で、まごうことなき傑作だと感じています。
マジでもっと早く読んでおくべきだった……。

 

 

それでは感想はこのあたりにして、あらすじとも若干被りますが以下がストーリーの内容紹介です。

 

主人公は、幼い頃から宇宙に憧れ続けている青年レフ・レプス
彼はとある理由から上官に暴力を振るってしまい、共和国の宇宙飛行士候補生から補欠に成り下がってしまっていました。

 

そんなレフですが、突然中将に声を懸けられ、所長室へと呼び出され、ある計画を聞かされます。
その内容は、敵対国よりも早くに人類を宇宙へと到達させるため、吸血鬼(ノスフェラトゥ)を宇宙へ打ち上げるというもの。
共和国はいち早くの『祖国の人間』の宇宙到達にこだわる一方で、万一搭乗員が亡くなってしまった際の世界からの非難を気にしていました。


そこで白羽の矢が立ったのが、吸血鬼。
吸血鬼は人ではないため万一のことがあっても非難されず、また『人類初の偉業』にはカウントされないため、安心してリスクの分析に使用できるという判断です。
レフはどういうわけか、その吸血鬼の訓練を担当するマネージャーに抜擢されたのでした。

 

吸血鬼は『呪われし種』として認識されており、レフ自身も幼いころから様々な言い伝えを聞かされていたため、内心ビクビクです。

 

しかし、吸血鬼の少女ーーイリナ・ルミネスクに実際に会って話をしてみれば、聞かされていた内容のほとんどが誤解であり、吸血鬼のイメージが勝手に人間により作られたものであることに気づきます。

 

実験体である吸血鬼はモノ扱いせよ。


そのような命令を受けていた主人公ですが、意地っ張りでツンツンした態度のイリナと一緒に時間を過ごしていくなかで、葛藤を抱えていきます。
またイリナも人間嫌いの吸血鬼でしたが、徐々に態度を変化させていくのでした。

はてさて、策謀渦巻く世界の中で、二人の関係はどのように変化していくのか。
そして、イリナは無事に宇宙へと到達できるのか。
それは、ぜひ本編でご覧ください。

 

 
以下に、すでに読み終えた方や結末を知ってからでないと読めないという方に向けて、ネタバレありの感想もつづっています。
 
未読の方はご注意ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

3.『月とライカと吸血姫』ラノベ第1巻ネタバレありの感想

感動できるポイントやグッとくるポイントがいくつもあったので、中でも印象に残った箇所をピックアップしていきます。

 

➀P195のイリナの台詞

「私が熱さに弱いの知ってるわよね?」

引用:『月とライカと吸血姫』第1巻

吸血鬼の熱さに弱いという特性と、熱く語るレフの姿に心を傾かせているようなニュアンスがおそらく含まれていて、グッときつつも「うまいなぁ」と唸らされました。
このようなセリフ回しも本作の見どころだと思います。

 

➁P256で明かされるナタリアの正体

ナタリアが「運送屋」であることは、検査のシーンでうすうす、バーのシーンで「これ、やっぱり……」と勘づきはしました。
(と言いつつも、牢に足を運んだ人物がレフの恩師の可能性も考えました。)


それでも、鳥肌が立つほどに面白い。
わかっていても面白く感じるってこれは相当のことで、このあたりで★5が確定した感があります。

 

➂P279のナストイカ

……つぎに、おいしい飲み物を、皆さんに教えてあげるわ

引用:『月とライカと吸血姫』第1巻

 

説明不要。
ここからの流れが、本当にもうセンスの塊

 

 

……と、こんな感じで個人的にはこの3つのシーンがとりわけ印象に残りました。
イリナも無事に宇宙から帰還できて、感動のハッピーエンド。

 

この続きを2巻を購入して読むか、それともアニメを見てから原作に戻るのかは、もう少し悩むことにします。

 

『恋は双子で割り切れない』感想|個性とフェチの暴力【ふたきれ】

 

こんなラブコメが読みたかった!

 

どうも、トフィーです。
今回は高村資本先生の 『恋は双子で割り切れない』を紹介させていただきます。
「尖ったラブコメが読みたい!」という方に、強くオススメしたいラノベでした。

 


恋は双子で割り切れない (電撃文庫)

 

1.あらすじ

 我が家が神宮寺家の隣に引っ越してきたのは僕が六歳の頃。それから高校一年の現在に至るまで両家両親共々仲が良く、そこの双子姉妹とは家族同然で一緒に育った親友だった。
 見た目ボーイッシュで中身乙女な姉・琉実と、外面カワイイ本性地雷なサブカルオタの妹・那織。そして性格対照の美人姉妹に挟まれてまんざらでもない、僕こと白崎純。いつからか芽生えた恋心を抱えてはいても、特定の関係を持つでもなく交流は続いていたのだけれど――。
「わたしと付き合ってみない? お試しみたいな感じでどう?」
 ――琉実が発したこの一言が、やがて僕達を妙な三角関係へと導いていく。
 初恋こじらせ系双子ラブコメ開幕!

引用:恋は双子で割り切れない (電撃文庫)

 

2.『恋は双子で割り切れない』感想・レビュー

a.作品評価と関連情報

個人的評価:★★★★★
レーベル:電撃文庫
刊行:2021年5月
略称:ふたきれ

 

作者は、高村資本(たかむらしほん)先生。
イラストは、あるみっく先生。

 

高村先生は、第27回電撃小説大賞で4次選考を通過したのち、いわゆる拾い上げによってデビューをされています。
投稿時点では『神宮寺那織は、そんな結末(ラスト)じゃ許さない』というタイトルでした。

 

電撃からの拾い上げデビューとなると、『君が、仲間を殺した数-魔塔に挑む者たちの咎-』有象利路先生や、もう少し前だと『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』二丸修一先生がいらっしゃいます。

 

ちなみに両作品とも、当ブログでも取り上げさせていただいています。

www.kakidashitaratomaranai.info

 

www.kakidashitaratomaranai.info

 

 

また、略称は『ふたきれ』のようです。

 

b.作品内容・キャラクター紹介

ラブコメブームが続く昨今ですが、数ある物語の中でも『ふたきれ』はかなり独特に感じる部分が多い作品でした。
読み進めているうちに、特に気になったのが以下の3点。

 

①物語開始時点で、恋愛関係がかなり進んでいる

②47ページまで3人分の独白が続いている

③フェチズムの暴力

 

今回はこの3ポイントを詳しく掘り下げる形式で感想・レビューをまとめていきます。
なお、プロローグのネタバレを少々含みますので、その点はお気をつけください。

 

①物語開始時点で、恋愛関係がかなり進んでいる

まずは、ざっくりとキャラクターの紹介をしておきましょう。

 

白崎純(しろさき じゅん)

主人公
学年主席で読書家。
負けず嫌い。

 

小学生の頃に、神宮寺家の隣に引っ越してきて以来家族ぐるみで親密な付き合いをもつようになる。
つまり、姉妹とは幼なじみの関係。

 

神宮寺琉実(じんぐうじ るみ)

ダブルヒロインのの方。

明るい性格で、バスケ部に所属しており、ひたむきに練習に打ち込むスポーツ女子

主人公の元カノで、互いに失恋を引きずっている。

 

 

神宮寺那織(じんぐうじ なおり)

ダブルヒロインのの方。

重度のオタクで、色々こじらせているありのまま系(?)女子。

主人公の初恋の女の子で、今カノ

ぼくの推し。

 

 

……とこんな感じでざっくりと紹介してしまいましたが、赤字の部分を見ていただければ、見出しの意味をご理解いただけるかと思います。

 

ダブルヒロインもので、片方のヒロインとすでに別れていて、もう一人のヒロインと付き合っているところから始まっている作品は、ここ最近のラブコメラノベには恐らくないのではないかと思います。
(もし該当作がありましたら、Twitterや問い合わせフォームなどからお教えいただけると幸いです。)

 

そもそもラブコメって、主人公とヒロインがカップルになってゴールという作品が多いですしね。
でもこの作品は、プロローグの時点でカップルが出来上がっていて、そこから三角関係によるあれこれが広がっていく。
一つの物語としてちゃんと楽しめる内容となっているんです。

 

②47ページまで3人分の独白が続いている

はい、これまた見出しの通りなのですけれど、より詳細に説明させていただきます。

 

『ふたきれ』は47ページまでが、一人称による独白で占められています。
しかも、純・琉実・那織の3キャラ分です。
序盤での掴みが重視される傾向にあるラノベにおいて、今作には「かなりチャレンジングな構成をされているなぁ」と驚かされました。

 

しかも、各キャラの個性がしっかりと伝わってきて、それがなんとも面白いという……。

また、プロローグに限らず全体を通して独白の癖が強めです。
ぼくが今まで触れてきたライトノベルの中でも、モノローグのユニークさにおいてトップ5には確実に入ってくるかと思います。

 

各キャラ個性的なのですが、強烈だったのは那織のモノローグ。

ぼくとしてはメチャクチャ好きなのですが、人によっては苦手意識を持ってしまうかもしれませんね。

 

以下、作中からの引用に、太字加工をしたものです。
「自分で購入してから読みたい!」という方は、グッとスクロールしちゃってください。

 

ところで私は、どうやら純君をして、サブカル女子という括りになるらしい。いやいやメインカルチャーも好きですけど。何故にそうなった? ともかく、私はそういう扱いらしいようである。全く以て諾了できぬ。

(中略)

私は幼い頃から数多の本を読み、色んな映画を観、様々な音楽とともに育ってきた。
端的に言おう。私のお父さんがそういうタイプなのだ。絵本や映画が好きだった私を、お父さんは照準線(レティクル)の真ん中に据えた。そして、英才教育を施した……と本人は思っている。
思い通りになんてなるか、このSFオタク(トレツキー)め

引用:恋は双子で割り切れない (電撃文庫)

 

③フェチズムの暴力

『ふたきれ』ですが、まだまだ個性的なところがございます。
書くことが多くてブロガー的には助かりますね。

 

この作品には、要所要所で「フェチ」が詰め込まれているところです。
具体的に言えば、「足」の描写が本当に多い! 笑
琉実の締まったふくらはぎについての言及や、那織のムチっとした太ももの描写など……。
詳しくお話したいところですが、Googleの規約的に危うい皆さんが読まれる際のお楽しにとっておいた方がいいと判断したため、まあとりあえずそんな感じです。(雑)

 

ちなみに高村先生も、「足の描写が多い」とTwitterで言及されていますね。 

 

 

 

また「足」だけでなく「匂い」フェチを覗かせるような描写があったり、SFや文学・サブカルなどのネタが豊富に詰め込まれていたりと、あらゆる「好き」が散りばめられていて、メインストーリー以外の部分でもワクワクさせられる作品でした。

このあたりのポイントを意識して読み進めていくのも、面白いかもしれませんね。

 


恋は双子で割り切れない (電撃文庫)

 

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青海野灰『逢う日、花咲く。』感想|記憶転移によって繋がる男女

 

 

心臓を介して繋がる恋物語

 

どうも、トフィーです。
今回は、青海野灰先生の小説『逢う日、花咲く。』を紹介させていただきます。

 

今作は第25回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞作で、このブログ執筆時点からしてもちょっと前の作品となります。
ただ時間が流れても、普遍的に楽しめる物語だと思ったので、今さらではありますが感想をつらつらと書かせていただきました。

 


逢う日、花咲く。 (メディアワークス文庫)

 

 

 

1.あらすじ

これは、僕が君に出逢い恋をしてから、君が僕に出逢うまでの、奇跡の物語。

13歳で心臓移植を受けた僕は、それ以降、自分が女の子になる夢を見るようになった。
きっとこれは、ドナーになった人物の記憶なのだと思う。
明るく快活で幸せそうな彼女に僕は、瞬く間に恋をした。
それは、決して報われることのない恋心。僕と彼女は、決して出逢うことはない。言葉を交すことも、触れ合うことも、叶わない。それでも――
僕は彼女と逢いたい。
僕は彼女と言葉を交したい。
僕は彼女と触れ合いたい。

僕は……彼女を救いたい。

引用:逢う日、花咲く。 (メディアワークス文庫)

 

 

2.『逢う日、花咲く。』感想・レビュー

 

a.評価と情報

個人的評価:★★★★☆
電撃文庫
2019年6月発行
第25回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞作

 

作者は青海野灰(あおみの はい)先生。
表紙イラストはふすい先生。

『逢う日、花咲く。』は青海野先生のデビュー作です。
それでいて、何回か重版もされている人気作で、21年3月時点で8版まで出ていることが確認できました。


また本作ですが、TikTokでも話題になっていたみたいです。
私は関知していなかったのですが、最近このような変わった方法で人気にブーストをかけていく作品も増えてきているなぁと驚いています。


当ブログでも何冊か、同じように注目された作品を紹介しておりますので、もしよければチェックしてみてください。
三作ともめっちゃくちゃおススメなので!

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b.作品内容・キャラクター

 

「死んでしまっているのに、救いたいってどういうことだろう?」

興味を惹かれる内容ではありますが、あらすじだけだとちょっと抽象的なので、気になっている方向けに詳しく紹介させていただきます。
そのため序盤のネタバレを微妙に含みますので、ご容赦ください。

 

『逢う日、花咲く。』は、心臓移植による記憶転移によって繋がった男女の物語です。

【記憶転移】き-おく-てん-い

臓器移植手術を受けた際、臓器提供者の記憶の一部が受け継がれる現象。

臓器の提供を受けた患者は夢としてドナーの記憶を追体験したり、自覚のないまま本来知りえない知識を得たりする。

記憶のほかに、趣味嗜好を受け継ぐ場合もある。

なお、そのような現象について、科学的な根拠は一切認められていない。

引用:『逢う日、花咲く。』

 

 

主人公の少年・ホズミは夢の中で、生前のヒロイン・葵花の記憶をたどっていきます。
自分の人生に価値を見出せなかった彼は、明るく幸せそうに生きる葵花に惹かれていきます。
しかしいくら強い想いを抱こうとも、葵花はもうこの世にいません。

 

また、この小説は少年と少女、双方の一人称で進行していきます。
覗く主人公の視点を通してのみでなく、生前の葵花サイドでも描かれていくのです。

 

葵花はなんと、自分の中にホズミが訪れていることに気づいていました。
そう、ホズミは夢を見ていたのではなく、心臓を介して時を超えていたのです。


また、葵花は彼から大切に思われていることや、彼が何かに怯えていることにも感づいていました。
だからこそ、葵花は覗かれているということに気づくたび、精一杯今を生きて人生を楽しむことで、名も知らぬ少年を励まそうとしていました。
そうしていくうちに、葵花もホズミに恋心を抱くようになりました。

 

単なる記憶転移に留まらぬ時を超えた不思議な恋。
物語は「葵花はなぜ、死んでしまったのか」と彼女の真相について焦点が当たるようになり、また「過去に干渉できるのであれば葵花を救うこともできるのではないか」という希望と決意のもと進んでいきます。

 

以上が、おおまかな流れとなります。
もう少しネタバレを控えつつ、本書の感想を述べさせていただきます。

 

奇麗な情景描写繊細な心情描写が特徴的な作品でした。
時おり混じり溶け合うように描かれる一人称での表現が、またなんとも印象的です。「僕」「私」と切り替わる一人称に注目して読むと、よりいっそう楽しめるかと思います。


心情描写というか心臓描写というか、同じ心臓を持ち、同じ鼓動を奏でている本作ならではの表現には非常に見どころがあります。

 

私の感覚では、2章から格段に面白くなっていきました
情景描写の多い小説が苦手な方も意外といるという話を耳にしたことがありますが、そんな方にも、2章序盤くらいまでは読み進めていただきたいです。

 

 

上で取り上げた作品以外だと、ライトノベルではありますが『探偵はもう、死んでいる。』もおすすめです。
心臓移植による記憶転移を、題材の一つとして取り扱っています
日常の尊さをうまく描いている点も共通していますね。

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他にも面白いと感じた小説を紹介していますので、もしよければ次の一冊を探す際にご活用ください。

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逢う日、花咲く。 (メディアワークス文庫)

 

※ここから先は、終盤のネタバレを含む感想となりますのでご注意ください。
 
 
 
 
 
 

3.『逢う日、花咲く。』ネタバレありの感想

「イジメの主犯って星野先生なんじゃない?」とか「葵花を手にかけたのは、嫉妬に狂った岡部さんだったりするんじゃない」という考察というか展開の予想をしていましたが、さすがに深読みしすぎていたみたいです。

 

とこんな感じで予想は外しましたが、ジンワリとした感動を胸に、読み終えることができました。
奇麗に着地したなぁ……

 

星野先生も葵花の説得によって心を入れ替えることができ、また葵花もホズミと再会することができたりと、多くの人にとって救いのある終わり方でよかったかなぁと思います。
先生の内側まで見て好きになってくれる人が、現れることを願います。
個人的に、その人は岡部さんであって欲しいですけどね。

 

あと、ホズミくんについて、もうちょっとだけ語らせてください。
もとの時間軸のホズミくんも消えてしまったとはいえ、「生きていて欲しい」という願いを叶えたり、心臓に宿った葵花に看取られて往生することができたりと、ハッピーエンドとは言い難いかもしれませんが、意味のある人生を送ることができたのは、彼にとって大きな救いになるのかなと思います。


デジャヴというかなんというか「なつなしめ きみにあはつぎ はふくずの のちもあはむと あふひはなさく」の句を覚えていたりと、時空を超えても引き継がれているものもありましたしね。

 

と、こんな感じで締めさせていただこうかと思います。
今回もまた、いい小説でした。

瀬尾順『死に至る恋は嘘から始まる』感想・レビュー|命がけの恋物語

 

命がけで恋をする、不思議な男女の物語

 

どうも、トフィーです。
今回は瀬尾順先生の『死に至る恋は嘘から始まる』を紹介します。


読み終わるまではライト文芸だと思って見ていたんですが、ブックウォーカーなどをチェックしていると、分類的にはライトノベルとして売り出していたことが発覚。
というよりも、新潮NEXじたいがラノベレーベルのようですね。
ということで、今回より新潮NEXの作品には「読書‐ライトノベル」タグを付けることにしました。
 


死に至る恋は嘘から始まる(新潮文庫nex)

 

 

 

1.あらすじ

「あんただけが、私の恋(うそ)を信じてくれた」一週間だけ、恋人になってあげる――傷だらけの嘘から、永遠(とわ)と刹那(せつな)の恋が始まる――。にがくて甘い究極の「恋と嘘」の物語。
高二の夏、教室で透明なクラゲのように息を潜めて日々をやり過ごしていた宮下永遠の前に、ひとりの目立ちすぎる転校生が現れた。長瀬刹那――人形のような整った容姿に高慢な態度、色めき立つクラスメイトを無視して、まっすぐ永遠へと歩み寄り、そしてその首筋に嚙みついて、ささやいた。「私、人魚なんだ」「君はすごくおいしそうな匂いがする」自称・人魚で傍若無人な美少女転校生・刹那と、心を閉ざし続ける傷だらけの永遠。正反対の「嘘」で武装した二人が運命的に出会い、そして、命がけの「恋」の物語がいまはじまる――。
人を好きになるって、命がけなんだよ――。

引用:死に至る恋は嘘から始まる(新潮文庫nex)

 

 

2.『死に至る恋は嘘から始まる』感想・レビュー

a.評価と情報

評価:★★★★
新潮文庫(NEX)
2021年4月発行

 

作者は瀬尾順(せお じゅん)先生。
著書に『一ナノ秒のリリス』『妹はサイコパス』などがあります。

 


一ナノ秒のリリス (講談社ラノベ文庫)

 

本作の略称ですが、瀬尾先生のTwitterを拝見した感じ、おそらく『死に恋』でいいのかなと思います。

 

b.ストーリー・人物紹介

ざっくりと言うと、今作はもう一度読み返したくなるタイプの物語でした。
ネタバレ防止のため抽象的な言い回しになってしまいますが、読み進めていくにつれて、「あの時のあのシーンはこのためにあったのか」と振り返って驚愕するようなそんなタイプの作風なんです。

 

ただその一方で、わりと人を選ぶ作品でもあるかと思います。
というのも、ヒロインがかなり尖っていて、基本的に主人公以外の人間に対しては攻撃的に突っかかっていきます。
男相手には手や足がでることもしばしば。
そのためこの手のヒロインが苦手な方や、倫理感強めの方には少々あわない作品かもしれません。

 

この物語は、宮下永遠(みやした とわ)長瀬刹那(ながせ せつな)一人称によって進んでいきます。

 

永遠は体中にケガを負い、存在感と潜めてひっそりと生きている男子高校生。
そんな彼のクラスに、長瀬刹那が転入してきます。
刹那は、天上天下唯我独尊を地で行くような、自称「人魚」の女の子。

 

彼女はぶっきらぼうに自己紹介を済ませると、いきなり永遠の近くに寄ってきて頬にキスしてくるのでした。
刹那は赤茶色にオッドアイで、さらには過激な言動を繰り広げることから「痛いやつ」認定されていきますが、永遠に対してだけはグイグイと距離を縮めようとしていきます。

 

永遠は彼女から距離を取ろうとし続けていましたが、あることがきっかけで、刹那と恋人関係になるのでした。 
「一週間だけ僕の彼女になってほしい」
「その後、僕を食い殺してくれ」

 

以上が序盤の内容です。
これより先は「命がけの恋」を繰り広げる男女の物語が展開されていきます。
もし興味を持たれた方は、ぜひチェックしてみてください。


死に至る恋は嘘から始まる(新潮文庫nex)

 

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3.『死に至る恋は嘘から始まる』ネタバレありの感想

名前と同じく真逆の属性のように見える永遠と刹那ですが、クラスメイトたちからすれば2人ともある意味で腫物的な扱いであり、そういった意味でも惹かれ合っていくのは自然な流れだったのかなと思います。

 

一方で気になった点は、姉の人脈とその彼氏でもある探偵の存在そのものが、話を展開上させるために無理やり出てきているようで、そこがちょっと引っかかりはしました。

 

ただ、それでも次々と謎が明かされて結びついていくのが面白かったです。
また、くるりくるりと変わっていくキャラ造形と、プロローグがエピローグでもあったことが判明するラストシーンには心の底から唸らされました。
冒頭の通夜は、永遠のものだったというわけですね。

 

他にも、永遠が母親に虐待されていたという事実や、春日部がいじめをしていたこと、美帆がいじめに加担していたことなど、終盤になって衝撃的な事実が出るわ出るわ。
それらの事実を胸にしまってひとり死のうとしていた永遠の覚悟もなかなかに悲壮で印象的でした。(列挙するとすごいな……)

 

あと、水野くん普通にいいやつだったな……。

三河ごーすと『義妹生活』第1巻の感想|ラノベ初心者にもおすすめ

家族ってええなあ とふぃお

 

どうも、トフィーです。
今回は三河ごーすと先生によるライトノベル『義妹生活』第1巻の紹介をさせていただきます。

 

この作品ですが、他のライトノベルと比べても、かなり異色な内容となっています。

たとえば、1番分かりやすいところでいえば、「タイトル」です。

ライトノベルのタイトル長文化が進んでいく昨今ですが、今回紹介させていただく『義妹生活』はシンプルに4文字。
むしろ逆に違和感があります(毒されてきているラノベ読者)

 

様々な理由から、ライトノベルを読みなれている方にはもちろんのこと、ライトノベルに興味はあるけれど手に取ったことがない……という方にもおすすめで、ライトノベルの入門書としてぜひ手に取っていただきたい物語でした。

 

より詳しい内容などについては、以下で取り上げさせていただくのでよければそのままご覧ください。

 

 


義妹生活【電子特典付き】 (MF文庫J)

 

1.あらすじ

 

同級生から、兄妹へ。一つ屋根の下の日々。

高校生の浅村悠太は、親の再婚をきっかけに、学年で一番の美少女・綾瀬沙季と一つ屋根の下で兄妹として暮らすことになった。
互いに両親の不仲を見てきたため男女関係に慎重な価値観を持つ二人は、歩み寄りすぎず、対立もせず、適度な距離感を保とうと約束する。
家族の愛情に飢え孤独に努力を重ねてきたがゆえに他人に甘える術を知らない沙季と、彼女の兄としての関わり方に戸惑う悠太。
どこか似た者同士だった二人は、次第に互いとの生活に居心地の良さを感じていき……。
これはいつか恋に至るかもしれない物語。
赤の他人だった男女の関係が、少しずつ、近づいていき、ゆっくりと、変わっていく日々を綴った、恋愛生活小説。

引用:義妹生活【電子特典付き】 (MF文庫J)

 

 

2.『義妹生活』感想・レビュー

 

a.評価と情報

 評価:★★★★★
MF文庫J
2021年1月刊行
YouTubeチャンネル『義妹生活』発

 

(色んな意味で)単なるノベライズではなく、チャンネルの運営や原作自体も三河先生が行われているんです。
すでに小説や漫画原作と複数シリーズを刊行されているというのに、この圧倒的なバイタリティ……‼
はたしていつ寝ていらっしゃるのでしょうか……?

 


www.youtube.com

ちなみにこちらがYouTubeのリンクです。
1巻発売前から声優さんがついている作品というのも、電撃小説大賞の『ユア・フォルマ』やスニーカー文庫の『アーリャさん』の宣伝PVなど、ちょくちょくとあったかとは思います。
しかし作家がYouTubeを運営していて、声優さんを起用し、シチュエーションごとに声を当てているというパターンはかなり変わった事例であるといえるでしょう。

アニメ化前から声のイメージが決まっているというのは、初めてライトノベルに触れる方にとっては、頭の中で想像するのに非常に役に立つため、読みやすくなるのではないかなと思います。

 

色んな意味でとカッコを付けたのにはこれまた理由がありまして、YouTube版とライトノベル版では空気感がまた異なるんですよね。
YouTubeはコメディチック、一方でライトノベルは現実に寄せられたような空気感です。
これについては、以下の「作品内容・キャラクター」でより詳しく触れます。

 

刊行されている作品がえげつなく、いつものように紹介するとリンクだらけになってしまうため、今回はタイトルだけにとどめます。


三河ごーすと先生の作品については、過去に『友達の妹が俺にだけウザい』も取り上げさせていただいていますので、よければそちらもご覧ください。

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b.作品内容と感想

今回はネタバレの見出しを用意していません。
というよりも、取り立ててネタバレをする必要がないと感じています。

 

内容としては、ある日、主人公・浅村悠太(あさむら ゆうた)の父が再婚して義理の母と妹ができた。
しかしその妹・綾瀬沙季(あやせ さき)は自分と同じ年齢で、派手な格好をした女の子ーーいわゆるギャルだった。
ただ意外なことに、2人ともドライな一面という共通点があり、互いにうまくすり合わせを行いながら家族としての日々を送っていく、といった感じの物語。

 

最近ラブコメがかなり増えてきており、私自身何冊か手に取って読了しているのですが、『義妹生活』に関しては他の作品と比べても毛色の違う印象を受けました。

 

 

この物語は1日ずつ丁寧に、悠太の1人称で沙季が義妹となってからの日常が描かれていきます。
6月7日、6月8日、6月9日……というように、日付が急に飛んだりすることがないのです。

 

※一日一日が丁寧に描かれていく作品で私の記憶に残っているものだと、『きのうの春で、君を待つ』が挙げられます。
ただこちらはタイムトラベルものなうえに、1日ずつ戻っていく形式なので、単純に比較するのには適さないかと思いますが……。

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『義妹生活』に話題を戻します。
本作にはもう一つ特徴的な点があって、その日その日に起こったことがリアルな空気感で描かれています。
三河先生の著作の『友達の妹が俺にだけウザい』などと比べても、やや文芸チックな文体で、ひょっとしたら現実にもありそうなリアルな空気感がありました。

 

ただ、ライトノベルとしてのとっつきやすさも残っているので、今までライトノベルを手に取ったことのない方にも、初めての1冊として読み進めやすい内容なのかなぁと感じました。

 

余談ですが、自分は読売栞(よみうり しおり)先輩が好きです。
アルバイト先の優しくてちょっぴりウザい先輩とかもう最高ですよね。

 

リンク先で試し読みもできます。
気になった方は、ぜひチェックしてみてください。


義妹生活【電子特典付き】 (MF文庫J)

 

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『隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった』感想

どうも、トフィーです。


今回は雪仁先生のライトノベル『隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった』 を紹介させていただこうかと思います。

 


隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった (電撃文庫)

 

 

 

1.あらすじ

「こちらのお弁当は、どうして半額なのかと思いまして」
 一人暮らし二年目の高校生、片桐夏臣の隣室に黒髪碧眼の美少女が引っ越してきた。その少女、ユイは本物の貴族令嬢らしく、学校でのそっけない反応から付いたあだ名は「クーデレラ」。他人を頼ろうとしないユイだが、実はかなり世間知らずなところがあるのを知った夏臣は、彼女を手助けしていくことを決意する。
「今日の晩御飯は……鶏のからあげ?」
「鶏肉が安かったからな」
「ん、夏臣のからあげ大好きだからすっごく楽しみ」
 お隣同士の立場から、甘々でじれったくなるような関係への日々が始まる――

引用:隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった (電撃文庫)

 

 

2.『隣のクーデレラを甘やかしたら、ウチの合鍵を渡すことになった』感想・レビュー(ネタバレ少なめ)

a.評価と情報

個人的評価:★★★☆☆
電撃文庫
2020年12月刊行

 

今回は簡潔にいきます。

 

作者は、雪仁(ゆきひと)先生。
雪仁先生は、ゲームライターをされており、今回が初のライトノベルとなります。

 

イラストは、かがちさく先生。
白黒になると印象が変わるイラストも少なくありませんが、今作に関してはカラーイラストと比べても本当にズレがありません。

 

b.作品内容・キャラクター

まずは簡単に、ストーリーを紹介していきます。

 

物語は、隣の部屋に引っ越してきた美少女がベランダで歌っている様を目にしたところから動き出します。
彼女の名前は、ユイ・エリヤ・ヴィリアーズ
彼女ははイギリス人とのハーフで、主人公のクラスへの転入生だったのです。

 

彼女は誰に対してもクールに壁を作り、距離をとろうとしていました。
主人公はそんな彼女と、偶然にも学内の教会で一緒にバイトをすることになります。


そうしてユイと接しているうちに、彼女は単身で渡ってきたこと、世間に疎く放っておけない危うさがあることが判明します。
世話焼きな主人公は、彼女をフォローするようになり、少しずつ仲良くなっていきます。
クールだったユイの態度はしだいに軟化していき、無二の友だちの関係となり、そしてーー。

 

と、こういった感じのストーリーです。

 
「みんなが知らない彼女の一面を自分だけが知っている」、みたいな特別感を押し出したタイプの物語で、それを演出するために定番のイベントが盛り込まれています。


たとえばお隣さんの関係から半同棲状態になったり、ヒロインの食生活を気にして2人で一緒に料理をして夕飯を食べるようになったり、看病シチュがあったり。
そういった王道的な要素をこれでもかと詰め込んだ物語で、この系譜を探している方にはオススメできます。

 

読みながら「なろう発のラブコメ作品なのかな?」と思いましたが、調べてみるとどうやら違うみたいです。
あまりいい例え方ではないかもしれませんが、『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』『氷の令嬢の溶かし方』を足して2で割ったような作品といえば、ラブコメ好きの方にはわかりやすいでしょうか?

 

楽しく読み進めることのできた本作ですが、ネガティブな面について語るのであれば、文章が少々気になりました。


人称が混在している箇所があったところと、誤字がとにかく多かった印象です。
自分は気にせず受け流す方ではありますが、今回は気が散って没入感を損なってしまうほどで……。
おそらく校正さんがついていなかったのかなと予想しますが、2版以降で直っていることを祈りましょう。

 

ただ、物語そのものに関しては十分に面白かったです。
個人的には、カラーイラストにもなっている猫と戯れるシーンと、同じく一緒に寝落ちしてしまうシーンが印象に残っています。
基本クールなユイが、表紙のような笑顔を見せてくれるようになるまでの過程が甘々で魅力的でした。

上でも触れましたが、『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』や『氷の令嬢の溶かし方』のような、1人のヒロインと関係を深めていきつつ、日常を過ごしていくようなラブコメが好きな方にはオススメですので、気になった方はチェックしてみてくださいね。

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『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』感想・レビュー

どうも、トフィーです。


今回は第27回電撃大賞《大賞》受賞作、『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』を紹介していきます。


ロボット嫌いの女捜査官と、ロボットらしからぬ言動をするロボットが、バディを組んで世界規模の電子犯罪に挑む物語です。
受賞作発表の段階では、「本格SFクライムドラマ」と称されていました。
『PSYCHO‐PASS』『攻殻機動隊』などが好きな方には、特にオススメできるかと思います。

 


ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫)

 

1.あらすじ

★第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作!!★
最強の凸凹バディが贈る、SFクライムドラマが堂々開幕!! 

 脳の縫い糸――通称〈ユア・フォルマ〉ウイルス性脳炎の流行から人々を救った医療技術は、日常に不可欠な情報端末へと進化をとげた。
 縫い糸は全てを記録する。見たもの、聴いたこと、そして感情までも。そんな記録にダイブし、重大事件解決の糸口を探るのが、電索官・エチカの仕事だ。
 電索能力が釣り合わない同僚の脳を焼き切っては、病院送りにしてばかりのエチカにあてがわれた新しい相棒ハロルドは、ヒト型ロボット〈アミクス〉だった。
 過去のトラウマからアミクスを嫌うエチカと、構わず距離を詰めるハロルド。稀代の凸凹バディが、世界を襲う電子犯罪に挑む! 
 第27回電撃大賞《大賞》受賞のバディクライムドラマ、堂々開幕!!

 引用:ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫)

 

 

2.『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』感想・レビュー

a.評価と情報

個人的評価:★★★★☆
電撃文庫
2021年3月刊行
第27回電撃小説大賞《大賞》受賞作

 

作者は、菊石まれほ先生。
イラストは、野崎つばた先生。

 

菊石まれほ先生に関しては、本作がデビュー作となります。

電撃大賞といえば、多くのライトノベル読者や作家志望、さらにはプロ作家も含めて注目する最も有名なライトノベルの賞です。
第27回も4355作品が投稿されており、今作『ユア・フォルマ』はその頂点に君臨した物語ということになります。

そんな感じで元から注目されやすい電撃大賞発の作品ですが、金賞の『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』ともども、発売前に公開されたPVの反響が大きかった印象です。


花澤香菜×小野賢章『ユア・フォルマ』PV【電撃小説大賞《大賞》】 

 

またこちらは過去の電撃大賞《大賞》受賞作の感想記事です。
『声優ラジオのウラオモテ』は昨年の受賞作で、『86-エイティシックス-』は今作と同じ重めのSF(※ミリタリーアクション)です。

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b.ストーリー・キャラクター紹介&感想

今作はユア・フォルマ(「脳の縫い糸」とも呼ばれるスマートデバイス)を、頭に埋め込むことが当たり前になった世界で、電子犯罪の解決に走るバディの物語です。

主人公の少女、エチカ・ヒエダは、国際警察機構(インターポール)、電子犯罪捜査局本部に属する電索官
電索官(ダイバー)は、対象のユア・フォルマに専用のコードを繋ぐことで、記憶を覗き見ることができる特殊な役目です。


そんな電索官の肩書を持つエチカですが、彼女は特別秀でた才能を有しており、それが裏目に働いて、パートナーをことごとく病院送りにしてきました。
というのも、電索は一人では行うことができず、電索補助管(ビレイヤー)によるサポートが必要になるのですが、補助管には電索官と同等の実力が求められます。
能力の釣り合っていない相手と潜ってしまうと、補助官の脳を焼き切ってしまうこともままあり、そのためエチカは何人ものパートナーを病院に送っては恨まれ、不愛想に振る舞うような日々を送ってきました。

 

今作の冒頭でも、さっそくパートナーをダウンさせてしまいます。
そこで新たな相棒があてがわれることとなるのですが、彼女の元へとやって来たのは、なんとロボットの青年だったのです。


ヒエダはとある事情により、ロボットを苦手としており、極力彼から距離を置こうとします。
しかし、青年、ハロルド・ルークラフトは、卓越した観察眼を利用してヒエダの心理を見抜き、ロボットらしからぬフランクな態度で接してきます。


能力はヒエダと釣り合うほどに超優秀、けれども性格の愛称は超最悪。
そんな機械系少女紳士系機械による凸凹コンビが、世界を騒がせる大事件に挑みつつ徐々に心の距離を縮めていく、というのがこの物語のあらすじです。

 

 

面白かったです。
ぼくは冒頭でも挙げたような、『PSYCHO‐PASS』『ハーモニー』みたいな、近未来を舞台にした暗めの物語が大好物なので、同じような趣向の方には刺さりやすいかと思われます。
(ただ、SFが苦手な人や最近の明るめのラブコメ以外は手に取らない方には、相性的に少々厳しいかもしれません。)

 

序盤でなされた、パンデミックによる文明変革の説明はどこか『ハーモニー』を想像させましたし、プロファイリングをもとに真相へと迫っていく様は『PSYCHO‐PASS』と被るところがあります。
そういった作品にもある面白い要素を取り入れつつ、この作品独自の世界観凸凹バディが魅力的で、ワクワクが止まりませんでした。

 

また、序盤といえば、この作品は本文が始まる前に、新聞記事の切り抜きが添付されています。
こうしたライトノベルらしい斬新な演出も相まって、物語へとすんなり入ることができました。

 

もう一点だけいえば、エチカの過去の見せ方が独特で面白かったです。
電索で他人の記憶に潜るたびに、彼女自身の過去が逆流して明かされていくのですが、その見せ方というか魅せ方にオリジナリティがあり、こういった手法も参考になるなぁ……と書き手視点でも楽しめました。

 

あんまり語ると、うっかりネタバレしてしまいそうなので、この続きは以下の、「ネタバレアリの感想」にて語らせていただきます。
最近ではあまりないタイプの作品なので、他の作風に飽きてきた方や硬派な作風を好む方は一度手に取ってみることをオススメします。

 


ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫)

 

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※この先、本作のネタバレがガッツリと含まれていますので、未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

3.『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』ネタバレありの感想

機械系少女紳士系機械」と銘打たれていましたが、読み終えてみれば2人の印象はガラリと変わりました。
エチカは過去のトラウマから自分を押し殺して生きていたただけで、どこまでも人間らしい繊細な少女でしたし、ハロルドには事件解決のために打算的に人間らしく振る舞っていたクールな側面がありました。


そういった「人間と機械」であったり、「それぞれの心の有り様」であったりといった、対照的な性質を持つ2人の関係に着目すると、タイトルの「ユア・フォルマ(あなたのカタチ)」がとてもしっくりときます。
こういった二重三重に意味がかかっているタイトルのセンスは、素直に羨ましいです。

 

世界観と文章がカッチリとハマった作品でしたが、他方で個人的には終盤での盛り上がりにやや欠けている感じはありました。
ただ物語は手堅くまとまっていますし、エチカが自分の意志で電索官に戻る選択をしたのもシミジミとくるものがありましたし、彼女たちの活躍をもっと見てみたいというよう想いもあります。


完成度が高く、好みの作風なので、次巻も手に取ってみます。
第2巻は2021年夏発売予定とのことです。)

 

この手の作品、流行ってほしいなあ……。

海空りく『カノジョの妹とキスをした。』1巻の感想|いもキス

 

 

時には、不純愛ラブコメもいいじゃない 

 

どうも、トフィーです。

 

今回は、海空りく先生のライトノベル、『カノジョの妹とキスをした。』第1巻を紹介していきたいと思います。

 

『このライトノベルがすごい! 2021』文庫部門・第8位にも選ばれた作品ということで、大衆的な面白さは保証済み。
自分はとある理由から、この作品に手を出すことがなかなかできなかったのですが、いざ読んでみると刺さりに刺さりまくりました。

 


カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫)

 

 

1.あらすじ

 

俺が人生で初めての恋人・晴香と、交際一ヵ月にしてやっと手を繋げた日、親が再婚し晴香そっくりな義妹が出来た。名前は時雨。似てるのも当然。時雨は家庭事情で晴香と離ればなれになった双子の妹だったのだ。

「情けない声。ホント可愛いなぁ、おにーさん」
「いけない彼氏さんですね。彼女と手を繋いでいる時に双子の妹のことを考えるだなんて」
「顔も体も彼女と同じ妹にドキドキしちゃうのは仕方ない。おにーさんは悪くない。悪くないんですよ」

淡い初恋に忍び込む甘い猛毒(あいじょう)。
奥手な恋人にはとても教えられない、小悪魔で甘えん坊な義妹との甘々"不"純愛ラブコメ――開幕!

引用:カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫)

 

 

2.『カノジョの妹とキスをした。』1巻の感想・レビュー

 

a.評価と情報

個人的評価:★★★★★
GA文庫
2020年4月刊行
『このライトノベルがすごい! 2021』文庫部門・第8位/新作部門第5位
略称:『いもキス』

 

作者は、海空りく先生。
海空先生は、第2回GA文庫大賞《優秀賞》を受賞し『断罪のイクシード』でデビュー、その後に様々な作品を発表されています。
中でも『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』は、アニメ化もされています。


超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! (1) (ヤングガンガンコミックス)

 


イラストは、さばみぞれ先生。
複数のライトノベルのイラストを手掛けられており、過去にこのブログで紹介した作品の中だと『声優ラジオのウラオモテ』も担当されています。

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さて、『カノジョの妹とキスをした。』に話を戻しますが、上述の通りこちらは『このラノ 2021』において、文庫部門・第8位を獲得した作品です。
確かにめちゃくちゃ面白い物語ではありましたが、このような作風も10代にウケるんだなぁと……という驚いた覚えがあります。
またポイントの比率的には協力者票がかなり高かったことから、多くのラノベを読まれている方たちからしても満足のいく内容であることが分かります。


『このラノ 2021』のノミネート作品については、以下の記事でも触れていますので、もしよければご覧ください。

www.kakidashitaratomaranai.info

 

 

 

b.キャラクター紹介

佐藤博道(さとう ひろみち)

ルックス・運動能力ともに中の下で、勉強はそこそこできる平凡な男子高校生。
中学時代からの念願だったカノジョをに入れ、幸せな日々を送っていたが……。

 

 

才川晴香(さいかわ はるか)

ヒロインであり、博道の恋人
やさしく、かわいく、天然と文句なしの美少女うらやましい
主人公にぞっこんで、告白も晴香の方から。
勉強は苦手。

 

佐藤時雨(さとう しぐれ)

メインヒロイン
そう、カノジョはいるけどこの子がメインヒロイン。

博道とは同年代であり、物語の序盤で主人公の義妹となる。
また、両親(博道の父と時雨の母)が仕事のため海外に残り家を空けているため、1年間博道と2人で生活することになる。

 

晴香は両親の離婚により生き別れた実の姉で、姉妹の関係ねえこれなんて昼ドラ?
その容姿は晴香と瓜二つだが、純真無垢な姉とは異なり、揶揄い癖があり、小悪魔的な性格で、博道もドギマギさせられている。S気のある女の子っていいよね。


晴香のことを心の底から大切に思っており、彼女を不安にさせないために、少なくとも両親が帰ってきて2人暮らしの状況ではなくなるまでは、博道と家族関係になってしまったことは隠し通すことに。


 

姉の名前が「香」なのに対して、この子の名前は「時」なのは、タイトルも合わさって不穏な予感しかしません。

 

c.感想

さて超真面目なキャラクター紹介が終わったところで、次は読み終えての感想を。

 

ラブコメの勢いが熱く、多くの作品が生み出されている近年ですが、この作品はまた違う角度から攻めた内容となっていました。

 

タイトルだけの印象だと、カノジョの妹に惚れられてキスされて、「うわー!どうしようー!」とワタワタするような話だと想像していました。
しかし、キャラクター紹介で触れた通り、この『いもキス』はさらに一捻りも二捻りも加わった内容となっていました。
いやまさか、カノジョの妹というだけでなく、自分の義理の妹にもなるだなんて、さすがに予想できませんよ。

 

それからタイトルが『カノジョの妹とキスをした。』ということで、ネタバレにならないかと思うので言ってしまいますが、この作品には主人公にカノジョがいるにも関わらず、その妹とキスをしてしまうという浮気的な要素が含まれています。

 

時雨は自身の容姿が晴香と瓜二つであることを利用して、あの手この手で博道を揶揄っていきますが、そうしているうちに……というのがこの物語の大筋です。

 

そんな危険極まりない題材を扱っているのに、コメディの部分とラブ要素の演出、そして不純な愛の魅せ方が絶妙で、全体を通して高クオリティでまとめられています。
下手したら主人公・ヒロイン双方にヘイトが向きそうな内容なのに、各キャラが魅力的に描かれているのは、さすがとしか言いようがありません。

 

上で評価は☆5としましたが、ぶっちゃけ☆6をつけたいくらいには突き刺さったラブコメでした。
未読の方にはぜひ、読んでいただきたいです。

 


カノジョの妹とキスをした。 (GA文庫)

 

 

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※この先、『カノジョの妹とキスをした。』1巻の重大なネタバレが含まれています。
未読の方はお気を付けください。

 

 

 

 

 

 

 

3.『カノジョの妹とキスをした。』1巻のネタバレありの感想

 

昼ドラのようにドロッドロな愛憎劇が繰り広げられるかと思いきや、意外にも清純な(?)作風でした。
爆弾こそ抱えてはいるものの、暗黒系ラブコメじゃなくて、むしろ健全(?)なボーイミーツガールだなというような印象を持ったまま読み進めていきましたが、12話あたりから不穏な空気に
そして最終14話でついに、時雨の想いが爆発してしまいます。

 

雨の中ずぶ濡れで帰宅した時雨が、なんとデートの疲れで眠りこけている博道にキスをしてしまうのです。
それにより、自身が博道に対して「恋」をしていることをはっきりと自覚し、2度目のキス。
ここで、博道は目を覚ましますが彼女は引かず、告白してから3度目のキスをし物語が締めくくられました。

 

時雨の一人称による、不穏で背徳的で破滅的で淫靡なこの描写には、思わず背筋がゾクゾクとしましたね。
それまでの日常シーンの描写も見どころ満載で、面白おかしく読み進めてはいましたが、最後の鮮やかなタイトル回収と臨場感あふれるキスシーンによって、自分の中でこの作品の総評が決定的なものとなりました。
いやこれ、ライトノベル作品のラブコメで、1番面白いと思いました。

 

あとがきでも触れられている通り、1巻は人間関係の構築回で、まだ一つ目の爆弾が投下されただけ。
カノジョとの本格的な板挟みも、ドロドロとした愛憎劇も、この段階ではほとんど描かれていません。
ただ、それでもインパクトのある終わり方でしたし、この1冊だけでも1つの物語として完結しているため、納得のいくエンディングだったかと思います。

 

タイトルに「妹」って付いているからって、食わず嫌いせずにさっさと読めばよかったです。
この作品を薦めてくださった知人の方には、最上級の感謝を。
2巻以降も絶対に買います。

 

PSあとがきの勢い好きです。

 


カノジョの妹とキスをした。2 (GA文庫)

 

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