映像映えしそうな、異種界恋愛物語
どうも、トフィーです。
今日もまたガガガ文庫のライトノベルから一冊紹介していきます。
最近手に取るラノベが、青い背表紙の作品ばかりになってきていますが、安定して面白いものが多いからしょうがないのです。
さて、今回紹介するのはガガガ賞受賞作品、『君はヒト、僕は死者。世界はときどきひっくり返る』です。
独特な世界観で展開される、詩的でロマンチックな物語でした。
ファンタジーの中でも独特な世界観のものが読みたい、異種界恋愛ものが読みたいという方におすすめです。
君はヒト、僕は死者。世界はときどきひっくり返る (ガガガ文庫)
1.あらすじ
交わることのない、君と出会った。
天空に浮かぶ「世界時計」を境に分かたれた「天獄」と「地国」。地国で暮らす死者の僕はある日、常夜の空から降ってくる彼女を見つけた。
一目見た瞬間から僕はもう、恋に落ちていた。
彼女の名前はファイ。僕の名前はデッド。
彼女はヒトで、僕は死者。だからこの恋は、きっと実らない。
それでも夜空は今日も明るい。
二つの世界の引力バランスがひっくり返る「天地返り」の日まで、僕は地国のゾンビから彼女を守り、そしてきちんと「さよなら」を告げる。
これはやがて世界を揺るがすことになる、相容れない僕たちの物語だ。
第14回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞受賞作!!
2.『君はヒト、僕は死者。世界はときどきひっくり返る』感想・レビュー
a.評価と情報
評価:★★★★☆
ガガガ文庫
2020年7月刊行
第14回小学館ライトノベル大賞「ガガガ賞」を受賞
『君はヒト、僕は死者。世界はときどきひっくり返る』は新人賞出身の作品です。
そして受賞時点では『デッドリーヘブンリーデッド』というタイトルでした。
解題前のものもかっこよくて好きですが、今の方が内容は想像しやすいですね。
著者は零真似(ぜろまに)先生。
新人賞受賞作ではありますが、角川スニーカー文庫より『まるで人だな、ルーシー』、『いずれキミにくれてやるスーパーノヴァ』といった作品を出されてるプロ作家です。
そして、例のごとくゲスト審査員の若木民喜先生のコメントを引用させていただきます。(漫画『神のみぞ知るセカイ』で有名な先生ですね)
すごく楽しかった。デッドとファイの関係性がけなげでとても良くって、2人を応援しながら読めました。文章も簡潔ながら必要なことを良いタイミングで出してきてくれて、先が気になってちょっと時間が空く度にいそいそと読んでいました。地国編は最高。クロス君の血で描いた「ごめん」にはズキーンとしました。
なんなら、天獄に行かなくてもよかったぐらいです。感情移入はすっかりできていたので天獄編の期待感はすごかったんですよ。なのにえらく駆け足で残念。天獄編をもっと長く見たかった!
引用:https://gagagabunko.jp/grandprix/entry14_FinalResult.html
読み終えた感想としては、今回もおおむね同意です。
地国編が素晴らしく、どっぷりと物語に浸ることができました。
詳しくは以下で語っていきますので、よければこのままご覧くださいませ。
また、イラストは純粋先生。
優しいタッチで描かれる、純粋な主人公や芯のあるヒロインのイラストが、物語をより美麗に彩っています。
b.作品内容と感想
グッと引き込まれるような魅力的な作品です。
この物語には「2つの世界」と、「2つの種族」が存在します。
まずは世界の方から解説していきます。
空に浮かぶ世界時計を挟んで、対になるように上下に存在する天獄と地国。
そしてこの天地は、時計の中の「きらめきの欠片」が落ち切ったタイミング(1ヶ月)で変動します。
上から下へと行くことはできますが、その逆は不可能という一方通行のルートが生成されるというわけです。
この物語は、ヒトの少女・ファイが天獄から足を滑らせて、地国に落ちてきてしまい、地国に住む死者の少年・デッドと出会う場面からスタートします。
はい、ここで2つの種族について解説します。
「ヒト」:生きている天獄の住民。
「死者」:地国の住民で、死なない者。
この2つの種族には交流がありません。
それどころか、特にヒト側は死者を恐れてさえいます。
それは死者がヒトの存在を感知すると、理性と言葉を失くして、肉を求めて襲いかかるゾンビと化してしまうからです。
だからこそ、ファイもデッドを恐れます。
というよりも、出会って早々に「いいぃぃぃいいやあああぁぁぁぁあああああああ⁉」(以降、この叫び声は何度も登場する)という叫び声とともにぶってきます。
デッドの首ももげます。
でも平気です、死者だから。
そしてあろうことか、そのタイミングで彼は恋に落ちていたのでした。
また奇妙なことに、デッドはヒトであるファイを目の前にしてもゾンビ化することはありませんでした。
「愛のパワー」というやつです。(作中で何度も登場する言葉です)
この続きはあらすじ通り、デッドは次の天地返りの日までファイを守り抜き、彼女を天獄へと送り返すことを決意するのです。
美しい物語でした。
種族の違うもの同士が互いに歩み寄りながら惹かれ合い、二人で苦難へと立ち向かっていくという、王道中の王道――「異種界恋愛」作品。
有名どころだと『美女と野獣』なんかがそうですよね。
燃えますし、萌えますね。
燃え萌えキュン死、仰げば尊死というやつです。
自分はこの手のジャンルには、今まであまり触れてきませんでした。
むしろ苦手意識さえあったかと思います。
だからこの作品についても、正直に言えば、小学館ライトノベル大賞だからという理由だけで手に取ったわけですが、どういう経緯であれこの物語に触れることができたのはラッキーでした。
最初から最後まで面白かった。
他の2作品も出来がよかったし、今年のガガガ新人賞作品は当たりばかりだなあ……。
これより先には、③ネタバレアリの感想と、④他のおすすめ作品というように続いていきます。
ネタバレを見ずに関連作品をチェックしておきたいという方は、以下のリンクで移動できますのでよければご活用ください。
3.『君はヒト、僕は死者。世界はときどきひっくり返る』ネタバレアリの感想
上では絶賛していましたが、今回評価については☆4にしています。
その理由はというと、世界時計の不調の原因が主人公らにあり、それがどうしても気になってしまったからです。
物語終盤では、突如として起こった天地返りによって、何人ものゾンビが天獄へと紛れ込んでしまい、そして彼らによって多くのヒトが亡くなってしまいます。
また天獄のその後についても描かれません。
自分は多少の粗は気にしない方だし、この作品自体もかなり好みの部類ではありますけれども、この点だけは残念だったかなと。
恋は盲目、ファイのためならば世界がどうなっても構わないみたいな覚悟や開き直りがあれば、(評価はわかれるかと思いますが)個人的にはまったく問題はありません。
ただ今作に関して言えば、デッドは優しすぎたわけで、それがキャラクターとしては大きな魅力とはなっていますが、若干のズレを産んでしまった……という感じです。
ただそれ以外の点では高クオリティであり、ツボに入る所も多く、そしてなによりも純粋に読んでいて楽しめる作品だったことは間違いないため、個人的な評価としては☆4が妥当かなーというところです。
零真似先生は、すでに角川で何作品か出しているとのことなので、また読んでみたいと思います。
4.他のおすすめ作品
といっても同じく小学館ライトノベル大賞の受賞作品ですが。
『シュレディンガーの猫探し』も『サンタクロースを殺した。そして、キスをした。』も新人賞に相応しい新しさと面白さを兼ね備えた作品で、非常に面白かったので気になった方はぜひチェックしてみてください。
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ガガガ作品に限らず、色々なラノベ・ライト文芸についてレビューしていますので、もしよければご覧ください。
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