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氷の城で巻き起こる殺戮
どうも、トフィーです。
今回はカミツキレイニー先生の『魔女と猟犬』第2巻を紹介させていただきます。
今巻ではよりいっそう世界が広がっていきつつも、1巻での重くのしかかってくるようなダークな空気感も継承されています。
非常に読み応えのある1冊になっていました。
『魔女と猟犬』1巻についての感想記事はこちら。
www.kakidashitaratomaranai.info
1.あらすじ
静寂に包まれた“氷の城”で巻き起こる殺戮
“鏡の魔女”テレサリサと共にレーヴェを脱出したロロは、魔力の影響で眠り続けるデリリウムを連れてキャンパスフェローへと戻ってくる。だが、王国アメリアによって陥落された故郷は、流血と破壊に蹂躙され見る影もなかった……。
ロロとテレサリサは城下町に作られた隠れ処にて、城から逃げ延びた者たちと合流する。領主バド・グレースの留守を預かる宰相ブラッセリ―と、<鉄火の騎士団>の副団長であり、ハートランドの妻であるヴィクトリアをはじめとする九十二名の者たち。
彼らは隠れ処を捨て、<北の国>へ向かうことを決断する。そこには、バドが生前に同盟を結んだ雪王ホーリオが治める<入り江の集落ギオ>がある。きっと助けになってくれるはずとの目算からだった。そして、ロロには<北の国>へ行くもうひとつの目的があった。それは、氷の城に住むという“雪の魔女”を味方につけること――。
その頃、王国アメリアの王都にあるルーシー教の総本山“ティンクル大聖堂”には、魔術師の最高位を冠する九人の者――“九使徒”が集められていた。
衝撃的な展開で刊行と同時に大きな話題を呼んだ本格ダークファンタジー『魔女と猟犬』。その待望の続刊がついに登場。
2.『魔女と猟犬』2巻感想・レビュー
a.評価と1巻の感想記事のリンク
評価:★★★★★
ガガガ文庫
2021年6月刊行
カミツキレイニー先生×LAM先生による『魔女と猟犬』の第2巻ですが、個人的には前の巻以上に楽しめました。
内容もさることながらイラストもまた美麗で、表紙の雪の魔女がまた目を引くパッケージになっています。
ちなみに1巻の感想についてはこちらにまとめていますので、もしよければこちらもご覧ください。
www.kakidashitaratomaranai.info
b.ストーリー・キャラクター
2巻で出会うのは【雪の魔女】。
1巻のプロローグが鏡の魔女テレサリサの過去から始まったように、この2巻についても雪の魔女ファンネルの過去が導入に置かれています。
プロローグが終わり、視点はロロたちの方へ。
彼とテレサリサは、眠り続けるデリリウムとともにキャンパスフェローへと帰還します。
キャンパスフェローは酷いありさまになっていました。
城は陥落し、市場には遺体が転がり、ロロの実家デュベル家も焼け焦げてしまっています。
変わり果てたキャンパスフェローの様子を目にしながら、ロロたちは生き残った仲間たちを捜索。
そこで宰相ブラッセリーや、鉄火の騎士団副団長にしてハートランドの妻ヴィクトリアと合流します。
しかし、ゆっくりしていられる状況でもなくなり、彼らは今もなおキャンパスフェローに残留するアメリアの兵や魔法使いの追手を退けながら、バドが同盟を結んでいた【北の国】へと向かったのでした。
――が、北の国を統治する雪王ホーリオが、これまた癖のある人物で……という感じで、ロロたちはまた奔走することになります。
2巻では新たなる魔女の登場はもちろんのこと、魔法の種類や九使徒のお披露目など、より詳細な設定や世界観が明かされました。
それに加えて、帯でも触れられている「氷の城で巻き起こる殺戮」、1巻以上に手に汗握る死闘や衝撃的な出来事など、見所の多い巻となっていました。
また他の見どころといえば、やはり魔女との掛け合いでしょうか。
途中でアメリア兵に話しかけられた際に夫婦を演じて乗り切ったり、他にもニヨニヨとできる描写があったりと、シリアスだけではない他の魅力も詰め込まれています。
個人的には1巻よりも2巻の内容の方がずっと楽しめて大満足だったので、このまま3巻も追っていこうかと思います。
『魔女と猟犬』1巻を読まれていて、かつ2巻が未読の方にはできれば今巻も触れてみて欲しい。
そう思えるような物語でした。
当ブログでは他にも面白かったライトノベルやライト文芸をいくつか紹介していますので、もしよければご活用ください。
www.kakidashitaratomaranai.info
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※これより先では、結末までのネタバレを含む感想も載せていますので、未読の方はご注意ください。
3.『魔女と猟犬』2巻ネタバレありの感想
ファンネルすこ。
雪の魔女様、正直めちゃくちゃ好きなタイプのキャラクターでした。
ということで、2巻の物語は雪の魔女ファンネルが強く印象に残りました。
彼女の過去は壮絶なものでした。
・母を生き返らせるため、弟(雪王ホーリオ)とともに異教を竜を呼び出すも中途半端な形となり、顔に傷を負う。
・異教の竜を召喚したことで父の逆鱗に触れ、弟を庇って投獄。
・自分を慕い脱走を手引きしようとしたメイドたちも処刑され、彼女の前にその首が投げ捨てられる。
・自分も処刑されそうになったその瞬間に、魔女の力に目覚めあたり一帯を氷漬けにし、孤独にひきこもることに。
・以後ずっと本を読んで退屈をしのぎつつ、年に一度訪れる魔女討伐隊と剣を交えて生き続けてきました。
いや、壮絶すぎる……。
また、ェンリルが城から出なかったことにも、ちゃんと理由がありました。
それは彼女が自分の肉体と精神の時間を凍結していたから。
フェンリルが凍らせた城は、偶然にも魔力が溢れるスポットでした。
彼女が城から出ると、魔女となったその瞬間に負った致命傷までもが復活して死んでしまうので、出たくても出られない状況にあったのです。
そんな中、自分に満足のいく死を与えると約束し、40数年ぶりに「ネル」の愛称で呼んでくれる存在・ロロが現れたのです。
しかしロロは、九使徒のひとり召喚師ココルコ・ルカに辛勝しつつも、片腕を斬られて致命傷を負ってしまいます。
ファンネルはロロを凍結し、足りない魔力をテレサリサから補給してもらいながら、彼を直すために次なる魔女を探すための旅に加わるのでした。
形はどうあれ、彼女はようやくようやく外の世界を旅して回れるようになったわけです。
とこんな感じで、フェンリルにスポットを当てつつも2巻の内容を振り返ってみました。
肉体も精神も凍ってしまった不老不死の少女にして、脳筋スタイルの戦闘狂。
魔力補給のためにテレサリサのエイプリルをまっずと言いながらかぶりつく様子など、そこはかとなく漂うポンコツの香りもまた次巻への期待要素です。
また、デリリウムに続いて、まさかのロロまで眠ってしまいましたね。
1巻の感想記事では群像劇チックと述べましたが、3巻以降はますますその感じが深まっていきそうです。