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【アーサー王伝説】物語を彩る美しい絵画〔後編〕|近代ヨーロッパの芸術

 

審美眼を磨きたいAuraです。たとえば美術館に行った時、現代の前衛芸術を見ても「これはどういう作品なんだ…??」という風になって、作品のテーマなどを全然感じ取れません。

うーん、アートとはむつかしい…笑

 

さて、これまで近代におけるアーサー王伝説の絵画をいくつかご紹介してきましたが、今回は最終回となる〔後編〕です。

 

〔前編〕はアーサー王やグィネヴィア王妃などの主要人物、〔中編〕ではトリスタンとイゾルデのような恋愛物語をテーマとした作品を扱いました。

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↑の記事では、イギリスのラファエル前派やフランスの絵画を取りあげていますが、今回は新たにドイツアメリカなどの絵画も載せました。

 

最終回である〔後編〕では、「聖杯の探索(探求)」において活躍した以下の人物をご紹介しています。

〇パーシヴァル

〇ガラハッド

 

これまでの記事と同様に、物語中の一場面を明確に描いていると思しいものには、あらすじ風の解説をつけています。

 

 

パーシヴァル/ガラハッド

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エドウィン・オースティン・アビー『アーサー王の円卓と”危険の座”』(アメリカ)

 

白衣の老人がひとりの騎士を伴い、アーサー王の宮廷に現れた。

真紅の装束に身を包むかの若者は、ランスロット卿の息子にして、聖杯の探索を成し遂げうる唯一の騎士——ガラハッド卿である。

 

こちらは、アーサー王伝説におけるキーパーソンのひとり、ガラハッド(あるいはギャラハッド)の参内を描いた作品です。
絵の左側にガラハッドが、右側にはアーサー王の姿も見えますね。

(横長の絵画なので、スマホの方は横向きにしてご覧ください)

 

円卓の騎士の中でも、試練の末に聖杯を手にしたガラハッドは特に有名です。

ちょっと抽象的な表現になりますが、父・ランスロットが「最強」であるとするなら、ガラハッドは「最優」の騎士だと言えるでしょう。

それゆえ、円卓の“危険の座”に腰を下ろすことも認められました。

 

この“危険の座”というのは、優れた騎士のみが座ることを許される席で、相応しくない者が席につくと懲罰の炎に包まれてしまいます。

その呪いを乗り越えたガラハッドは、周囲から「すごい騎士だ!!」と誉めそやされるわけです。

 

うーん、でも職場にそんな厄介なイスがあるのを想像したら怖すぎるなぁ…笑

 

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ジョージ・フレデリック・ワッツ『ガラハッド卿』(イギリス)

 

ガラハッドを描いた絵の中で、一番よく見かけるのがこちらの作品です。

 

森の中で、兜を脱いで馬から降り、(やや分かりにくいですが)絵の左外から差し入る輝きの方を見つめています。

視線の先には、「聖なる社」があり、そこから鐘の音や厳かな聖歌が響き渡っているのです。

 

両手を左太ももの上で重ね、固く握りしめているさまは彼の敬虔さを表しています。
また、彼の横顔からは畏怖の念も感じ取ることができるでしょう。

 

なお、作者ワッツ自身の解説では、背景の森について「暗く孤独」であるとしていますが、僕の目にはわりと明るめに映るんですよね……。

画面全体が温かみのある色彩になっているように感じられませんか??笑

 

背景のもくもくしている雲と青空とかいいですよね、小学生の頃、大空の下で駆け回っていた夏休みを思い出しました。

 

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フェルディナンド・リーケ『聖杯を探索するパーシヴァル卿』(ドイツ)

 

聖杯探索で活躍した人物であれば、ガラハッドの他にパーシヴァルも欠かせません。

まぁ、元は聖杯を獲得した騎士というとパーシヴァルだったんですけどね…笑
今やすっかりガラハッドのイメージになっています。

活躍の座を譲ったためか(?)、ガラハッドの絵はたくさんあるんですが、パーシヴァルの絵は非常に少ないという…。

 

こちらの作品には、探索の任にあたるパーシヴァルが描かれています。顔つきが勇壮というかとにかく目力が強い!!

その目で睨まれたら僕は一瞬で怯んでしまう自信しかないです 笑

 

彼の周囲を取り巻く色鮮やかな自然の描写も美しいですね。
聖杯を求め、城郭から遠く離れて山深く立ち入っていることが見て取れます。

 

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アーサー・ハッカー『パーシヴァル卿の誘惑』(イギリス)

 

乙女はパーシヴァル卿に葡萄酒を振る舞い、甲斐甲斐しく世話をする。

そして甘い言葉をささやき、彼を誘惑したのだった。パーシヴァル卿はのぼせ上り、乙女の言葉に頷いてしまう。

だが、ふと自分の剣に彫り込まれた十字架を見るや否や、我にかえる——これは悪魔の誘惑だ。

 

聖杯の探索中に、パーシヴァルは乙女と遭遇します。

彼女は食事や葡萄酒を用意し、彼をもてなしました。見目麗しい乙女に、パーシヴァルは大層惚れこみますが、すんでのところで正気に戻ります。

乙女=悪魔ですから、そのまま誘惑にのっていたらどうなっていたことやら……。

 

こちらの絵では、剣の柄頭に象られた赤い十字架を目にして、正気に戻った瞬間のパーシヴァルが描かれています。

表情が硬く、「あっ、俺やらかしたわヤベぇ」という心の声が聞こえてきそうです 笑

 

ちなみに、我にかえった後、パーシヴァルは額の真ん中で十字を切り、なんとか純潔を失わずに済みました。

(十字を切ったことでキリストの恩寵に与ることができ、悪魔は追い払われたのです)

 

そして傍らにいる乙女は、前かがみになってパーシヴァルを見上げていますが、ちょっと目つきが怖いですね 笑

美貌の裏に潜む、悪魔の本性が垣間見えるかのようです。

 

なお、パーシヴァルの剣が突き立っているあたりの草木は少しだけ葉をつけていますが、悪魔の足元に散らばる葉はすっかり色褪せてしまっています。

 

すなわち絵の右側は《神の加護》、左側はいわば《悪魔による破滅》とでも表現できるような、対比的構図になっていて面白いですね。

 

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ジョゼフ・ノエル・ペイトン『聖杯を見るガラハッド卿』(スコットランド)

 

続いてはこちらの作品。

夜空を燦々と照らし出す天使たちと、兜を脱ぎ敬意を表するガラハッドが描かれています。

 

この絵で最初に目が引かれるのはやはり、暗闇の中にあって輝きを放つ天使の姿ですが、ガラハッドの存在感もまた大きなものに感じられます。

そして、中央の天使の手には聖杯が握られています。

 

舞い降りる天使と清廉なガラハッドの組み合わせを見ていたら、僕はなんだか居ずまいを正したくなるような心地になりました。

…なんならガラハッドの馬も頭を下げてますし、やはりオーラが出てるんですよ 笑

 

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エドウィン・オースティン・アビー『聖杯に至るガラハッド卿』(アメリカ)

 

ヨセフェは、聖杯の典礼を執り行った。そうして聖杯の〈器〉より出ずるは、我らが主である。

奇蹟をガラハッドは目の当たりにしたのだ。彼を満たしてゆくのは、大いなる法悦、大いなる歓喜。

やがてガラハッドは希う、現世の生から天上の生へと赴かんことを——

 

ついにガラハッドが聖杯の探索を成し遂げました…!

 

こちらは、まさしく神秘に満ちた荘厳な作品と言えるでしょう。

絵のほぼ中央にいる、白衣の人物がヨセフェ(キリスト教の司教)で、頭上に聖杯の〈器〉を恭しく掲げているのが分かります。

 

ヨセフェの前で跪いているのがガラハッドです。横顔なのではっきりとは見えませんが、至福のうちにあるような表情をしています。
(一方、ヨセフェの表情は窺い知れません)

そして彼らふたりを、大勢の天使が取り囲んでいます。

 

ひとつ前にご紹介した絵においては、天使を前にしてガラハッドは姿勢を保ち敬意を表していましたが、こちらでは聖杯の奇蹟に触れて、ただただ陶酔している…という風に見えます。

 

〈器〉からは主イエス・キリストが出てくるわけですし、確かにとんでもない奇蹟ですよね……。

 

この聖杯の典礼にてキリストに祝福されたのち、ガラハッドは天なる生へ移ることを望むようになりました。

そしておよそ2年後に、ガラハッドの魂は天使たちによって運び去られ、永遠に旅立っていったのです。

 

 

おわりに

〔後編〕は以上となります!!

今回は聖杯探索がテーマだったので、これまでの前・中編とは異なり宗教絵画のような神々しい作品が多かったですね。

 

作品に描かれている天使の表す意味とかについて、もう少し考えが及べば良かったんですが……いかんせん、キリスト教には詳しくないので厳しい 笑

 

最後になりますが、近代のアーサー王伝説の絵画は、前・中・後編でご紹介したもの以外にも数多くあります。

この一連のシリーズ記事は、ほぼほぼ「僕が個人的に気に入ったもの」をピックアップしているに過ぎないので、さらに興味がわいたぞ!という方は、どんどん調べてみてくださいね!笑

 

【追記】
……「後編で最終回だよ!」と言いつつ、続きの〔番外編〕記事を書いてしまいました 笑
こちらでは、前・中・後編でご紹介しきれなかった作品を挙げています。

 

アーサー王の姉モルガンや、オペラにもなっているローエングリンの絵画などを載せました。

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画像の出典

記事内の画像は全て、「パブリックドメイン」という、誰でも自由に利用できる状態のものを使用しています。主に以下のサイトからダウンロードしました。

〇Wikimedia Commons https://commons.wikimedia.org/wiki/Main_Page

〇Art UK https://artuk.org/

 

参考文献

〇天沢退二郎訳『聖杯の探索』人文書院(1994年)

〇髙宮利行著『アーサー王伝説万華鏡』中央公論社(1995年)

〇マーティン・J・ドハティ著 伊藤はるみ訳『図説アーサー王と円卓の騎士』原書房(2017年)