書き出したら止まらない

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【アーサー王伝説】物語を彩る美しい絵画〔前編〕|ヴィクトリア朝の芸術

 

美術の授業で5段階評価の2以外になったことがないAuraです。作品鑑賞ならいいんですが、僕はとにかくセンスが絶無なので、自分で描いたり作ったりする時間はしんどいものでした 笑

 

さて、今回ご紹介しますのは、近代におけるアーサー王伝説の絵画〔前編〕です。

 

アーサー王物語は古来より様々な画家たちに題材とされています。
その中でも個人的に際立って「いいなぁこの絵!」と感じたのが、ラファエル前派を中心とする、英国ヴィクトリア朝の作品です。

 

 

ラファエル前派|ヴィクトリア朝の芸術家集団

ヴィクトリア朝とは、ヴィクトリア女王が1830年代~1900年前後にわたりイギリスを統治していた時代を指します。

在位期間が約70年もあって長いですね 笑

 

その時代に活動していたのが、ラファエル前派という芸術家のグループです。

〇ジョン・エヴァレット・ミレイ

 

〇ウィリアム・ホルマン・ハント

 

〇ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ

の3人が主要メンバーで、さらに他4名を加え結成されました。

なお、同じグループでも(素人目には)画家ごとに作品の雰囲気がけっこう違って見えます。
(「ラファエル前派」という名称の由来については省きます)

 

ラファエル前派の絵画では、ミレイによる『オフィーリア』が最も有名でしょう。

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ジョン・エヴァレット・ミレイ『オフィーリア』

 

美術の教科書やTVなどで見かけたことのある人もおられるかと思います。
僕は芸術には疎い方ですが、『オフィーリア』は記憶に残っていました。作者名については忘れてましたけど…笑

 

ラファエル前派は宗教画の他に、古典文学に題を取った作品も多く描いています。
(『オフィーリア』も、シェイクスピアの『ハムレット』が元ネタです)

本記事では、その中でもアーサー王伝説に絞って、僕が気に入ったものを中心に取りあげていきます。

 

ただし、ラファエル前派の手掛けた作品以外にも、

〇(グループとしての)ラファエル前派に属していた訳ではないが、ラファエル前派の影響が認められる作品

 

〇ラファエル前派に通ずる思想を持つヴィクトリア朝芸術の作品

といった感じで、範囲を限らず手広く載せています。

正直なところ芸術に関して僕はずぶの素人であるため、線引きがいささかガバガバですがお許しください 笑

 

では前置きはこれくらいにしまして、実際に絵画を見ていきましょう!

〔前編〕となる今回は、

〇アーサー王

〇マーリン

〇グィネヴィア

〇ランスロット

など、物語の中核をなす人物を扱っています。

 

物語中の一場面を明確に描いていると思しいものには、あらすじ風の解説をつけました。また、絵画のタイトルは僕が和訳したものです。

 

アーサー王

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ウォルター・クレイン『石から剣を引き抜くアーサー』

 

ウーサー王亡き後、次なる王の座をめぐりブリテンは混乱に陥っていた。
しかし、突如として「石に刺さった剣」が現出する。剣にはこう刻まれていた。

 

〈剣を引き抜くことのできた者は、神に選ばれし当国の王となるだろう〉

 

いかに勇壮な騎士が抜刀を試みようとも、剣は微動だにしない。
ただひとり——アーサーを除いては。
アーサーは難なく剣を引き抜いてみせ、自らの王位継承権を示したのである。

 

「石に刺さった剣」というと、石に対して垂直に刺さっているイメージで思い浮かびますよね。しかし実のところは「石の鉄床に横向きではまっている剣」なんです…笑

こちらの絵画ではそれが分かりやすく描かれています。

 

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チャールズ・アーネスト・バトラー『アーサー王』

 

アーサーが王冠を頭上に掲げています。描かれている場面は、反乱を起こした諸侯を平定した後か、ローマ帝国などの外敵を征討した後、といった感じでしょうか。

 

ブリテンをしろしめす王に相応しい覇気がこちらに伝わってきます。数あるアーサー王の絵画の中でも、これは特に好きな一枚です。

めちゃくちゃ凛々しいアーサー王ですが、ぶっちゃけこの辺りが活躍のピークですね…笑

 

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エドワード・バーン=ジョーンズ『アヴァロンのアーサー王の眠り』

 

カムランの戦いにてモルドレッドを討ち果たしたアーサー王。しかしその命は風前の灯火となっていた。

湖の姫たちによってアヴァロンへと運ばれたアーサー王は、ついに眠りにつく。いつかの目覚めを待ちながら——

 

絵の中央にて横たわっているアーサー王の周りには、湖の姫たちの姿が見えます。ちょっと悲しげな様子ですね…。
伝説の楽園アヴァロンは、アーサー王伝説の絵画でも人気のあるテーマのひとつです。

(横長の絵なので、スマホの方は画面を横にしてご覧ください)

 

 

マーリン/湖の姫

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エドワード・バーン=ジョーンズ『欺かれるマーリン』

 

アーサー王に仕える魔術師マーリンは、作中でわりとチートじみた活躍を何度かしています。しかしそんな彼でも意のままにできなかったのが湖の姫ニミュエです。

左:マーリン  右:ニミュエ

 

ニミュエに恋したマーリンは、乞われるまま彼女に魔法を指南していきました。しかしある時、マーリンは自分が教えた魔法によって囚われてしまいます。

 

マーリンは未来予知ができるためこうなることも分かっていた訳ですが、思慕し出したら止まらない…!
やはり恋は盲目、なんですかねぇ…笑

 

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フランク・カドガン・クーパー『魔法使いニミュエなる湖の姫』

 

最終的にマーリンを生き埋めにしてしまったニミュエですが、「アーサー王の庇護者」という立場を引き継ぎ、度々アーサー王を危難から救い出しています。

 

こちらのニミュエは、『欺かれるマーリン』にて描かれていた姿とは印象が異なり、より優艶になっている感じがしますね。僕はこっちの方が好みです。

 

余談ですが、この絵をネットで検索した時に左右反転したバージョンが出てきて判断に困りました 笑
どっちが正しいんだ、、、、、、

 

 

グィネヴィア王妃/ランスロット

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ジョン・コリア『グィネヴィア王妃の五月祭の祝い』

 

アーサー王伝説のような騎士道物語に欠かせないのが、騎士の仕える美しい貴婦人です。
まさに、ここで描かれているグィネヴィア王妃の美貌たるや…溜息が出ますね 笑

 

まぁこう見えて(?)意外とツンツンした性格なんですけれども。恋人のランスロットは散々に振り回される訳ですが、それが良いんです!笑

ちなみに作品名の「五月祭」とは、豊穣を祈る祭りのことです。

 

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エドモンド・ブレア・レイトン『騎士号授与』

 

『騎士号授与』はあくまで「中世の騎士と王妃をイメージした作品」とのことですが、海外ではしばしば、ランスロットとグィネヴィア王妃を連想させる絵画だと紹介されているので、今回取りあげてみました。

(トリスタンとイゾルデが連想される場合もありえるでしょう)

 

こちらはグィネヴィア王妃が首を斬ろうとしている場面とかではなく 笑、ランスロットに騎士号を授与する儀礼の様子を描いたものです。

 

グィネヴィア×ランスロットという、アーサー王物語において最も知られている&僕の大好きな組み合わせが!!来ましたァ!!!(興奮気味

 

他の絵画と比べるとかなり写実的な感じなのが理解できると思います。そのまま現実に飛び出してきそうなくらいです 笑

しかしそれと同時に、作品が現実を超えるようなずば抜けた優美さをも帯びていることが僕のイチオシしたいポイントです。

 

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エドモンド・ブレア・レイトン『影』

 

『影』もアーサー王伝説の絵画と明言されている訳ではないのですが、アーサー王伝説の書籍に掲載されていたので、先ほどと同様の扱いをしていきます。
(『図説アーサー王と円卓の騎士 その歴史と伝説』より)

 

こちらではグィネヴィア王妃が、城壁に映るランスロットの影の輪郭を書き留めています。
戦いへと赴く前に、恋しく思うランスロットの姿をそれと分かるように残しておきたいのでしょう。

 

ツンツンな性格のグィネヴィアですが、こんな風に可憐な面もまたありましたね 笑
(グィネヴィア王妃、ツンデレなのかもしれない…)

 

一方ランスロットも、監禁された際にグィネヴィアの絵を壁に描き、それに口づけして自身を癒すという話があります。(『ランスロ本伝』)

 

ふ、ふたりして同じようなことしてるやん!!
なんて尊いバカップルなんだッ…!!!(ほめ言葉)

 

 

おわりに

〔前編〕でご紹介する作品はここまでにしておきます。

ランスロットとグィネヴィアが好きなあまり、後半でやや暴走してしまいましたが 笑、いずれ劣らぬ名画ばかりです!

この記事で、ラファエル前派を中心とするヴィクトリア朝の芸術の美しさを感じ取っていただけていれば…と思います。

 

続く〔中編〕では、トリスタンとイゾルデ、シャロットの姫の絵画をピックアップしています!

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画像の出典

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〇Wikimedia Commons https://commons.wikimedia.org/wiki/Main_Page

〇Art UK https://artuk.org/

 

参考文献

〇荒川裕子『もっと知りたいラファエル前派 (アート・ビギナーズ・コレクション)』東京美術(2019年)

〇アンヌ・ベルトゥロ著 松村剛監修『アーサー王伝説』創元社(1997年)

〇マーティン・J・ドハティ著 伊藤はるみ訳『図説アーサー王と円卓の騎士』原書房(2017年)