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斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』感想・レビュー

二人殺せば地獄に堕ちる! 起こりえない連続殺人事件に挑む探偵の物語

 

どうも、トフィーです。
電撃文庫の二次審査発表日が近づいてきて、ソワソワしております。
そんな時だからこそ、読書で現実逃避をしていきたいと思います。


今回は、このブログでも何度か取り上げた名作メーカー、斜線堂有紀先生の『楽園とは探偵の不在なり』を読み終えました。
本格ミステリーには久々に触れましたが、非常に楽しく読み進めることができました。


楽園とは探偵の不在なり

 

 

1.あらすじ

二人以上殺した者は"天使"によって即座に地獄に引き摺り込まれるようになった世界。細々と探偵業を営む青岸焦(あおぎしこがれ)は「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱(つねきおうがい)に誘われ、天使が集まる常世島(とこよじま)を訪れる。そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。かつて無慈悲な喪失を経験した青岸は、過去にとらわれつつ調査を始めるが、そんな彼を嘲笑うかのように事件は続く。犯人はなぜ、そしてどのように地獄に堕ちずに殺人を続けているのか。最注目の新鋭による、孤島×館の本格ミステリ。

引用:楽園とは探偵の不在なり

 

 

2.『楽園とは探偵の不在なり』感想・レビュー

a.評価と情報

早川書房
2020年8月刊行

 

斜線堂先生による渾身の本格ミステリー
綾辻行人先生や相沢沙呼先生などの、超大物ミステリー作家も手に取った話題作です。

 

また、この作品ですが、発売早々に重版が決定しています。
初版分が少なかったのだろうか、あるいは斜線堂先生の注目度が高まってきたからかは不明ですが、この作品が多くの人の手に渡る機会が増えるというのは嬉しい限りです。

 

ちなみにですが、初版分のP275 で誤植があります。
早川の公式ページの方でも訂正されていますので、読了後に確認ください。

 

 

b.作品内容

①『天使』・舞台設定について

本格ミステリ―ではあるものの、『天使』が存在しているという特殊な設定が面白かったです。
それも神々しい感じではなく、得体の知れない化け物っていうね。(表紙でフヨフヨと浮いているやつです)
今作においては、この『天使』の存在こそが非常に重要な要素となっているので、詳しく解説していきます。

天使はヒト型をしているにも関わらず、言葉を発さないし、そもそも顔がありません。
普段はなにもせずに、ただフヨフヨと浮いているだけです。
そんな天使がアクションを起こすときは、たった二つの状況下のみ。

 

一つ目は、誰かが二人以上を殺したとき。
天使はその犯人を、例外なく地獄へと引きずり込みます。

 

二つ目は、彼らの前に砂糖が放られたとき。
意志があるのかも怪しく、自身の命にも執着を見せない天使ですが、なぜか砂糖に放られたときは、一目散に群がってすりすりと頭部をこすりつけるという謎の習性を見せます。
その姿は、さながら鳩のようです。(くるっくー)

 

今作で非常に重要なのは、一つ目の特性です。
これによって、「二人以上殺せば地獄行き」というルールが、この物語の世界には敷かれているため、連続殺人事件は絶対に起こりえないはずなのです。
この発想、天才的ですね。

 

そんな前提条件をすえての、この物語の舞台は孤島×館
数日の間、船も寄らず、外界から完全に遮断されたいわゆる『クローズドサークル』です。
この王道ともいえる状況下で、起こりえない連続殺人事件が発生し、主人公たちは翻弄されていきます。


はたして、事件の背後にはいったいなにがあったのか、どんなトリックが用いられているのか。
それはぜひとも、あなた自身の目で確認ください。

 

 

こんな天使が登場する作品ではありますが、決してイロモノ系というわけではありません。
天使以外には特殊な設定はなく、超能力やら魔法やらが登場して……なんてこともないため、「あまりの荒唐無稽さに推理が成り立たない」なんてことはありません。
ですので、純粋なミステリ―ファンの方でも、楽しく読み進めることができるかと思います。

 

 

②主人公・青岸焦について(若干のネタバレを含みます)

続いてはこの作品の主人公、青岸焦(あおぎしこがれ)について紹介していきます。


彼は探偵を職にする男性です。
彼の営む探偵事務所には、どこまでも愉快で善人な仲間たちがいました。
彼ら彼女らは、個性の突き抜けた問題児ばかりだったけれども、それでも全員が『正義』を信じて数々の事件に向き合っていました。
ある日、唐突に彼らは事件に巻き込まれて命を落としてしまいます。
青岸は仲間を失い、それ以来この世界の不条理に苦しみ、『天国』の存在を夢見て生きてきました。

 

そんな過去があったからこそ、「天国が存在するか知りたくないか」という言葉に惹かれ、天使が集まる常世島(とこよじま)の館へと足を踏み入れます。
ところが一晩明けると、最初の殺人事件が発覚、物語は不穏な方向へと舵を切っていくのでした。


ただ、ずっと暗い展開が続くというわけでもなく、クスリとくる場面も多くありました。
たとえば次々と助手を名乗り出る登場人物たちが、とにかく微笑ましかったです。
ところどころで挟まれる、探偵事務所の仲間達とのエピソードもひたすらにエモかった(語彙力)。
青岸さん、辛い過去を背負ってはいるものの、幸いにも人には恵まれていますね。

 

探偵としての在り方に葛藤しつつも、それでも事件へと立ち向かっていく彼のあり方には心が動かされました。
天使によって、かき乱された倫理が蔓延る世界における『正義』とはなんなのか。
彼の心には救いはもたらされるのか。
ミステリ―としてだけではなく、一人の人間の物語としても非常に見ごたえのある作品でした。

 

 

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
また以下は、過去記事のリンクです。
暇つぶしにでも、ぜひともお立ち寄りください。

 

www.kakidashitaratomaranai.info

 

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このブログでは、他にも多くの物語を紹介しています。 
斜線堂有紀先生の『私が大好きな小説家を殺すまで』や、『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』などもとり上げていますので、ぜひともご覧ください。

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