女王様系ヒロインはお好きですか?
どうも、トフィーです。
今回は『マツリカ・マジョルカ』について、紹介していきます。
この小説はこんな方にオススメです。
・ちょっと変わったライトミステリーを読みたい方
・「女王様」気質なヒロインが好きな方
・サクッと読める短編集をお探しの方
・巻数少なめのシリーズものをお探しの方
というわけで、さっそく行きましょう。
1.『マツリカ・マジョルカ』あらすじ・作者情報とシリーズの順番について
a.あらすじ
柴山祐希、高校1年。クラスに居場所を見付けられず、冴えない学校生活を送っていた。そんな彼の毎日が、学校近くの廃墟に住む女子高生マツリカとの出会いで一変する。「柴犬」と呼ばれパシリ扱いされつつも、学校の謎を解明するため、他人と関わることになる祐希。逃げないでいるのは難しいが、本当は逃げる必要なんてないのかもしれない…何かが変わり始めたとき、新たな事件が起こり!?やみつき必至の青春ミステリ。
b.作者・相沢沙呼先生の関連作品『小説の神様』『medium』
作者は相沢沙呼先生。
マツリカシリーズ以外にも、映画化もした『小説の神様』シリーズや、『medium 霊媒探偵城塚翡翠』など様々な物語を生み出しています。
特に『medium』に関してですが……
「第20回本格ミステリ大賞受賞」
「このミステリーがすごい! 1位」
「本格ミステリ・ベスト10 1位」
「SRの会ミステリベスト10 1位」
「2019年ベストブック」
といった数々の功績を残している、化け物じみた一冊となっています。
そしてそんな『medium』について、『マツリカ・マジョルカ』のカドフェス2020年版の帯では、以下のように紹介されています。
『medium』はこのシリーズから生まれた
どうでしょう。
『マツリカ・マジョルカ』に関して、興味が湧いてきませんか?
c.マツリカシリーズの順番について
今回紹介する『マツリカ・マジョルカ』ですが、いわゆる「マツリカシリーズ」の第1作目に当たる短編集です。
シリーズ第2作目に当たるのが、『マツリカ・マハリタ』です。
こちらも短編形式となっています。
そして第3作目に当たるのが、『マツリカ・マトリョシカ』。
こちらはシリーズ初の長編となっていて、同時にマツリカシリーズの最終巻です。
合計3作です。
第1作目の『マツリカ・マジョルカ』にはまったならば、もう少しだけその世界観を楽しめます。
それにシリーズものとしては冊数が少ないため、集めるのにもそこまで苦労しません。
また1・2作目は短編集でサクッと読めてしまうので、気になった方はとりあえず手に取られてみてはいかがでしょうか?
2.『マツリカ・マジョルカ』感想・レビュー
a.個人的な評価など
評価:★★★☆☆
角川文庫
2016年2月刊行
カドフェス2020の作品の一つということもあり、今年手に取られた方も多いのではないでしょうか?
『マツリカ・マジョルカ』について、『カドフェス2020年 夏のおすすめ本』の小冊子では以下のように紹介されています。
ツンデレ女子とパシリ柴犬の青春学園ミステリ!
引用:『カドフェス2020年 夏のおすすめ本』
ツンデレ。
うん、確かにツンデレかもしれない。
でももっと正しく言うのであれば、「女王様」の方がふさわしいと思います。
個人的評価は☆3です。
その理由については、次で説明していきます。
b.作品内容について
定石にそいつつも、個性が天元突破している物語でした。
たとえば、この手のジャンルにはだいたいの型があります。
具体的には……
・その二人は、「陰と陽」だったり「欠点を補い合うような関係」だったりと、方向性の違うタイプの人間
・短・中編を組み合わせて一冊にしている
・ミステリ―よりもキャラクターに重きを置いている(最重要)
などなど、他にもいくつもの共通点があります。
『万能鑑定士Qの事件簿』、『ビブリア古書堂の事件手帖』、『珈琲店タレーランの事件簿などを筆頭に、この手の組み合わせのライトミステリ―は数多くありますが、その中でも『マツリカ・マジョルカ』は極めて異質なシリーズでした。
というのもこの作品、フェチに関しての熱量がとにかくすごいんです。
だからこそ、この『マツリカ・マジョルカ』はかなり人を選ぶ作品かと思います。
例を挙げると以下の通り。
①マツリカさんがドS
・主人公の柴山くんを「柴犬」と呼ぶ。
・そうでないときは「お前」
・主人公はパシリ扱い
・ツンデレというより基本的にはツンドラ
・それでもなお、彼女との関係を心地よく感じてしまう主人公(ドM)
②「太腿」と「匂い」へのこだわり
実際に見ていただきましょう。
空いている方の手で窓枠を摑むと、向こう側から白い太腿をゆっくりと室内に下ろした。彼女の脚がしなやかに折り曲げられ、窓の向こうからこちらへ降りる。思わず眼を見張り、喉が鳴った。心臓が止まる寸前だった。ターンチェックのプリーツの裾がするりと肌を滑り落ちて、その露出の範囲を過剰なまでに大きくする。扇状に広がりながら、腿に擦れる短いプリーツの立体的なラインを、僕は注視していた。陽光に照らされる彼女の肌はまるで死体みたいに白かった。
引用:『マツリカ・マジョルカ』p12
映像化はよ。
という本音冗談はさておき、上記の引用を見ていただければわかるように、主人公の柴犬くんは太腿に対して並々ならぬ情熱を持っています。
こんなに太腿について描写している小説は、初めてです。(ライトノベルでもなかなかないのでは……?)
たった16ページ目でこれですが、これはまだまだ軽いジャブ。
読み進めていくうちに、2発目・3発目と次々に太腿パンチが放たれてくるのです。
そしてもう一つ特徴的だったのはマツリカさんの匂いの描写。
これについても太腿と同じくらいの熱量をもって語られており、同じ男でありながら柴犬くんには若干引いてしまいました……笑(でもまあ、彼の変態性がこの作品の味なので)
「女王様」・「太腿」・「匂い」以外にも、本作ではいくつものフェチが詰め込まれています。
ですから必然的に、この作品が合うかどうかは、そういったフェティシズムにどれほどの耐性があるかどうかで変わってくるでしょう。
特に女性読者の、好き嫌いははっきりと分かれそう。
ぼくにとっては、自分がドМでないことを再確認できるいいきっかけになった作品でした。
ただ、マツリカさんと柴犬くんについていけない場面がままあり、かなり人を選ぶ作風ということから、おすすめ度は★3に留めました。
そしてもう一つ、☆3とした理由は「読後感」にあります。
この作品は、4つの短編から成っているミステリーですが、最後に明かされる謎は基本的にあと味の悪いものになっています。
そのためハッピーエンドを望む方、爽快な読後感を求める方にはあわないでしょう。
ただ、そういった要素を考慮してもかなりユニークで面白い作品ではありますので、興味のある方にはぜひとも手に取っていただきたいです。
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