文学部出身なのに読書家からは程遠いAuraです。本をあまり読まない文学部卒業生って、もはや存在価値が危ぶまれると思うんですよ 笑
さて、今回ご紹介しますのは『140字の文豪たち』という本です。
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こちらは、日本文学研究者にして古書収集家の川島幸希さんが、ツイッターにてつぶやかれた文豪に関するツイートをまとめたものです。
書名に「140字」とある所以はここにあります。そして単行本化するに際し、ツイートの解説や補足が加えられました。
文豪の言葉やエピソードが載っていることは想像に難くないかと思いますが、他の書籍ではあまり見かけないような話が数多く見られました。作者川島さんのご見識の広さが窺えますし、この点が『140字の文豪たち』のウリだと思います。
本の構成
『140字の文豪たち』は、以下の内容で構成されています。
太宰治ツイート
中原中也・宮沢賢治ツイート
梶井基次郎・川端康成ツイート
芥川龍之介ツイート
佐藤春夫・菊池寛ツイート
萩原朔太郎・室生犀星ツイート
志賀直哉・武者小路実篤ツイート
谷崎潤一郎・永井荷風ツイート
泉鏡花ツイート
夏目漱石ツイート
その他の文豪ツイート
文豪のいないツイート
出典:川島幸希『140字の文豪たち』
名前が挙がっていない作家についても、ツイートとその解説の中でしばしば出てくるので、実際に言及されている人物の数はかなり多いですね。
内容としては、作品解説というよりは作家の人となりや作家同士の関係性が中心となっています。また、それらにまつわる川島さんご自身の体験談や所感なども載っています。
本全体で200ほどのエピソードが載っていますが、1ページにつき1エピソードという形式なので読み進めやすいでしょう。それこそツイッターを見る感覚でスイスイ行けます 笑
では、数あるエピソードの中から例として2つ取りあげてみます。本と同じくツイート+解説文のフォーマットで引用するので、実物がイメージしやすくなるかと思います。
森鷗外に傾倒していた太宰治は、無名時代の昭和10年、「鷗外の作品、なかなか正当に評価されざるに反し、俗中の俗、夏目漱石の全集、いよいよ華やかなる世情、涙いづるほどくやしく思ひ」と『東京日日新聞』に書きました。後年になって漱石も評価していますが、「俗中の俗」とは思い切った物言いです。
— 初版道 (@signbonbon) 2018年5月23日
鷗外を明治大正第一の文豪と考えていた太宰は、その墓がある三鷹の禅林寺を訪問。「私の汚い骨も、こんな小綺麗な墓地の片隅に埋められたら、死後の救ひがあるかもしれないと、ひそかに甘い空想をした日」もあったものの、「同じ墓地に眠る資格は私に無い」と書きました(『花吹雪』)。
しかし太宰は没後、同じ墓地の、しかも鷗外と向かいの場所に葬られたのです。泉下の太宰は、桜桃忌のたびに鷗外の墓の前も大混雑することに恐縮しているに違いありません。もちろん鷗外は太宰を全く知らないので、桜桃忌の狂騒に驚いているでしょう。
出典:川島幸希『140字の文豪たち』
芥川龍之介は「僕は若い時は手当り次第本を読んだもんです。小説と云わず、戯曲と云わず、詩歌と云わず、其他の学問の本と云わず、何でも滅茶苦茶に読んだんです」と語っています。多読したからといって、誰もが芥川になれないのは当然ですが、多読しなければ、芥川は芥川でなかったかもしれません。
— 初版道 (@signbonbon) 2018年5月26日
多読であったと同時に、芥川は大変な速読家だったようで、主治医の下島勲は次のように回想しています。「一体どのくらひの速度で本が読めるのかと聞いてみたところが、普通の英文学書なら一日一千二三百頁は楽だと言ってゐた。併し一日といつたところで、時間によるのだが、まあ仮りに一日一千二百頁の十時間とすれば、一時間百二十頁、一分間二頁といふことになるわけです。」
常識的には、日本人にとって英語の本を読む方が時間は掛かるのだから、一分間に二ページはやはり相当なスピードです。多読と速読、この両輪によって芥川の博識は築かれたのでしょう。
出典:川島幸希『140字の文豪たち』
おわりに
こういう文豪トリビア系の本っていいですよね。え?それなら文豪の書いた本自体を読めって?全くもっておっしゃる通りです!!
僕は頑張って近代文学と取っ組み合っていくので、この記事をご覧くださっている方は、『140字の文豪たち』を本棚に加えてみてください。
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『文豪どうかしてる逸話集』も作家たちのエピソードをまとめた本です。こちらは面白エピソードが中心となっていて、彼らの人間臭さがよく伝わってきます。
www.kakidashitaratomaranai.info