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【アーサー王伝説】原典のひとつ『マビノギオン』|内容を簡単にご紹介

 

アーサー王伝説関連の書籍に3万円以上を費やしているAuraです。しかしまだまだ買いたい本は尽きません。揃えるのが先か、お金とスペースが無くなるのが先か……!!笑

 

さて、僕が新たに本棚に加えることにしましたのは、アーサー王物語の一部をその中に含んでいる『マビノギオン』です。

 

なお、近年、アーサー王伝説の知名度を高めているゲーム『FGO』でも、『マビノギオン』が元ネタとして使われています。

「隻腕のベディヴィエール」「トゥルッフ・トゥルウィス」「エハングウェン」など、プレイヤーの方なら聞いたことがあるのではないでしょうか 笑

 

この記事では、

①『マビノギオン』の内容

②『マビノギオン』におけるアーサー王伝説

③『マビノギオン』が読める本(の比較)

についてお話ししていきます。

 

おそらく、『マビノギオン』に興味を持つようになった方の多くは、アーサー王伝説との関連について知りたい(かつて僕自身がそうでした 笑)のだろうと思いますので、特にその接点に比重を置いて書いています。

 

 

『マビノギオン』の内容

『マビノギオン』とは、イギリス南西部ウェールズにて作られた11編の物語の総称です。それぞれの成立した時期は同じではなく、11~14世紀にかけて誕生していったものを現代では『マビノギオン』というひとつの物語集として括っているのです。

 

書名の由来は、「少年たち」を意味するウェールズ語「マビノーギ」。

 

『マビノギオン』に収録されている11編の物語は、以下の3つのグループに分けることができます。アーサー王伝説に属するものは太字で示しました。

《マビノーギの四つの物語》

①ダヴェドの大公プイス

②スィールの娘ブランウェン

③スィールの息子マナウィダン

④マソヌウイの息子マース

 

《カムリに伝わる四つの物語》

⑤マクセン・ウレディクの夢

⑥スィッズとスェヴェリスの物語

⑦キルッフとオルウェン

⑧ロナブイの夢

 

※カムリ:ウェールズ地方に住むカムリ人のこと

 

《アルスルの宮廷の三つのロマンス》

⑨ウリエンの息子オウァインの物語

⑩エヴラウクの息子ペレドゥルの物語

⑪エルビンの息子ゲライントの物語

 

※アルスルとは「Arthur」、つまりアーサーを指す

 

カタカナがいっぱい並んでいてややこしくなりますね 笑

次項では、「キルッフとオルウェン」を中心に取りあげ、簡単に内容をご紹介します。

 

 

『マビノギオン』におけるアーサー王伝説

『マビノギオン』の11ある物語の内、5つがアーサー王伝説に属しています。

特に有名である『キルッフとオルウェン』については詳しく触れていきますが、他は手間なので簡潔に数行で記しました 笑

 

キルッフとオルウェン

『マビノギオン』で最初に成立した物語です(11世紀末)。

アーサーの甥であるキルッフが、オルウェンを妻に迎えようと考えます。キルッフはアーサーのもとへと向かい、結婚に必要な品物を獲得するための手助けを願い出ました。

 

巨人に出された数々の難題を達成していくことで品物を手に入れ、ついにはオルウェンと結婚することができた……というのが大まかなストーリー。

ただ、主人公であるキルッフは最初と最後くらいしか出てこず、難題解決や巨人狩りはアーサー王たちの手でなされるという…笑

 

そしてこの「キルッフとオルウェン」では、カイ(ケイ)とベドウィル(ベディヴィエール)の活躍が描かれます。

 

カイには特別な能力があります。それは

①九日と九晩、水中で息を保てる
②九日と九晩、眠らずにいられる
③森の中の木と同じくらいまで背を伸ばせる
④手から熱を発してものを乾かせる

 

「えっ?」っと思う能力の数々ですよね 笑

 

「キルッフとオルウェン」は神話時代の要素を色濃く残しているため、この頃のカイは妖精みたいな能力を使えるんです。
まぁ「こんなことができるぜ!」という能力紹介のようなもので、物語中でこれらの能力を使うことはありません 笑

 

そして、「ベドウィルは隻腕」であると言及されるのもこの話です。しかし隻腕ながら屈強な戦士で、巨人が投げてきた槍をつかんで投げ返し、命中させるという武勇を見せます。つよい…!!笑

 

そして難題のひとつであり、「キルッフとオルウェン」の話の大部分を占めているのがトゥルッフ・トゥルウィス狩りです。

トゥルッフ・トゥルウィスは元は王でしたが、邪悪さのゆえに神によって猪の姿に変えられたということが語られます。

 

そしてトゥルッフ・トゥルウィスの持つ櫛と剃刀と大鋏が、キルッフとオルウェンとの結婚で必要だという理由でアーサー王たちと戦うことに。

最後には櫛などを取られた後、彼は行方をくらませます。

 

(アーサー王の大広間「エハングウェン」もここで登場。ただ、「名匠グルイディンがエハングウェンを作った」と書かれているだけです。そしてグルイディンはトゥルッフ・トゥルウィスに殺されてしまう……)

 

ちなみにこの「キルッフとオルウェン」、最初期に成立した作品なこともあってか、「プロットは荒削りで緻密な心理描写にも欠ける」ところが多いと訳者に指摘されています。(森野聡子訳『ウェールズ語原典訳マビノギオン』より)

 

確かに、読んでいて「…?」となる展開がいくつかありました 笑

 

ロナブイの夢

ロナブイという男が、夢の中でアーサー王の宮廷に行く話。短編です。

 

ウリエンの息子オウァインの物語

「オウァイン」とは、「獅子の騎士」の二つ名で知られる円卓の騎士ユーウェインのことです。

 

オウァインと「泉の貴婦人」とのエピソード。「獅子の騎士」の名の通り、獅子を駆って戦う場面も。

 

エヴラウクの息子ペレドゥルの物語

「ペレドゥル」は円卓の騎士「パーシヴァル」のこと。この物語には「聖杯探索」のエピソードに通じる要素が見られます。

 

ペレドゥルは騎士に憧れ、修行の末に騎士に任じられます。その後様々な冒険へと赴く……という話です。

 

エルビンの息子ゲライントの物語

「ゲライント」は円卓の騎士「エレック」を指しますが、先ほどのふたりと違って名前の雰囲気が全然違いますね 笑

ゲライントは美しいイーニッドと結婚するも、結婚生活を送る内に国の執政を怠ってしまいます。その後なんやかんや経て凛々しい騎士に戻りめでたしめでたし!

 

円卓の騎士エレックの物語はほとんど邦訳されていないので、この『ゲライントの物語』は貴重といえます。

 

『オワァインの物語』『ペレドゥルの物語』『ゲライントの物語』の3つは、宮廷文学として完成度が高く、「キルッフとオルウェン」に比べると文学的に洗練されています。 

 

『マビノギオン』が読める本(の比較)

さて、ここまで『マビノギオン』の内容についてご紹介してきましたが、本で読む場合は以下の四冊が候補に挙がります。 

①中野節子訳『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』(JULA出版局)
→全463ページ

 

②森野聡子訳『ウェールズ語原典訳マビノギオン』(原書房)
→全560ページ

 

③シャーロット・ゲスト著 井辻朱美訳『シャーロット・ゲスト版マビノギオン』(原書房)
→全356ページ

 

④トマス・ブルフィンチ著 野上弥生子訳『中世騎士物語』(岩波文庫)
→『マビノギオン』のダイジェストが140ページほどで収録

 

結論から言いますと、僕のおすすめは①か②です!
(ちなみに①~③はけっこうお値段します。どれも4000円くらいです…笑)

 

訳文の読みやすさはどれもそう変わらないのですが、①と②は訳注と解説が充実しています。

 

『マビノギオン』は中世ウェールズの物語であるため、現代人から見ると「どうしてそこでそうなるんだろう…?」と感じるところがいくつかあります。

しかし、訳注と解説があれば知識に疎くても理解でき、楽しむことができます。
(③と④は注がないんですよね…)

 

例えば、先ほどの「キルッフとオルウェン」では、キルッフが父に「アーサー王に髪を切ってもらえ」と言われるのですが、現代人からすると「なんで髪を切ってもらうんだ…?」ってなりますよね 笑

 

ここで訳注を参照すると、

ケルト社会においては、「髪を切る、整える」という行為は、「親密に関係になる」、特に「血縁の関係である」ことを認める象徴的な行為であった。

出典:中野節子訳『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』

 

とあるので、その意義深さが分かるわけです。

 

では最後に、参考としてキルッフがアーサー王の元へと向かう場面の引用を載せておきます。

3冊の内どの訳文が合うか(好みなのか)、確認してみてください…!

 

【関連記事】

www.kakidashitaratomaranai.info

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①『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』(JULA出版局)


マビノギオン―中世ウェールズ幻想物語集
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少年の父が言った。「どうした、息子よ。なんでそんなに顔を赤らめておる。何を悩んでいるのだ?」

「継母上が私に、巨人の長イスデザデンの娘オルウェンをめとらぬ限り結婚することはできない、という呪いをかけておしまいになったのです」

「そんなことはたやすいことだ、息子よ」と。父は言った。「アルスルはそなたの第一の従兄弟だ。行って髪を整えてもらい、贈り物としてオルウェンを手に入れてもらえるように、頼んでみるがよい」

 

少年は、淡い灰色の頭と貝殻の形のひづめとしっかりした脚をもち金の管状の轡をはむ、四年の冬を越した駿馬にまたがって、走り出ていった。馬には高価な金の鞍が置かれ、(後略) 

 

②『ウェールズ語原典訳マビノギオン』(原書房)


ウェールズ語原典訳マビノギオン
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父が言った。「息子よ、なぜ赤くなっておる?どこか悪いのか?」

「母上がわたしに定めをかしたのです。妻を得ることは決してできない、巨人の頭アスバザデン・ペンカウルの娘オルウェンを手に入れるまではと」

「たやすいことだ、息子よ」と父が言った。「アーサーはそなたのいとこ。アーサーのもとへ行って髪を切ってもらい、それから、その件について無心するがよい」

 

旅の若人 乗る馬は
白きたてがみ 葦毛古馬
四つ冬経たる 強き足
高らか響く 貝ひづめ
馬のくわゆる ものみれば
ハミぞきらめき 黄金色
猛き駿馬に またがれば
燦と輝く 金の鞍

 

後半の訳が明らかに異なっていることが分かりますね。キルッフの旅立ちが韻文(詩の形式)で訳されています。

 

①と比べると、②は解説や訳注にあてられたページ数が多いです。より詳しく理解したい場合はこちらがおすすめです。(①:50ページほど ②:160ページほど)

買う場合、値段も1000円ほどアップしますが…笑 

 

③『シャーロット・ゲスト版マビノギオン』(原書房)


マビノギオン―ケルト神話物語 シャーロット・ゲスト版
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父王がたずねた。「せがれよ、何があったのじゃ。何が悩みじゃ」

「母上が、わたしには、イスパダデン・ペンカウルの娘オルウェン以外には嫁はもてまいとおおせられました」

「いとやすいことじゃ。アーサー王はそちの従兄。アーサー王のもとにゆき、髪を切って、それを願うがよい」

 

若者は灰色まだらの馬にのって旅立った。馬は四度目の冬を越したばかり、四肢たくましく、蹄は貝の形、金のくつわに、価千金の鞍をおいていた。

 

③は、現代のファンタジー画家アラン・リーによる挿絵が多く入っているのがポイントです。訳注や解説がないのが惜しいですね…。

 

なお、『マビノギオン』は11編の物語の総称だと初めにお話ししましたが、最初にその括り方をしたのがこの本の作者、シャーロット・ゲストです。

彼女がウェールズ語から英訳したものを、さらに日本語訳したものが③です。