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『アクタージュ』の天才たち|メソッド演技による夜凪景のキャラ造形

※2020年8月に、ある事件によって原作者マツキタツヤ氏が逮捕され、『アクタージュ』の連載終了が決定してしまいました。
1人のファンとして非常に残念な結果ではありますが、事の重大さを考慮すれば当然の措置だと納得せざるをえません。

また記事そのものの削除も考慮しましたが、一応は形として残しておこうかと思います。
要請があれば直ちに削除いたします。(2020年10月30日)

 

 

どうも、トフィーです。

本記事では最近ハマった漫画『アクタージュ』について、作中でも登場する「メソッド演技」を軸に紹介していきます。

早いもので2020年も折り返しになりますが、今年手を出した漫画の中では一番楽しめた作品でした。

題材は「俳優業」と、少年漫画としては珍しいジャンルです。
けれどもけっして色物枠などではなく、展開は超王道
ジャンプらしく「努力」・「友情」・「勝利」が描かれたストーリーは、読み進めるごとに没入感を高めてくれました。

さらに画力よし、ストーリーよし、キャラクターよしとすべてにおいて、高レベル。
よしよし過ぎて吉野家にでも行ってしまいそうな勢いです。うん、行くか。

というわけで、作品紹介に入ります。


アクタージュ act-age 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

 

 

1.『アクタージュ』のあらすじと作者について

あらすじと作者について簡単に記します。

a.あらすじ

女優を目指す女子高生・夜凪は有名芸能事務所スターズのオーディションで天才的な芝居をするも不合格。それは彼女の危険な演技法に理由があった。しかし、夜凪の才能に魅せられた映画監督・黒山が役者の世界に誘う!!

引用:アクタージュ act-age 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

b.作者

アクタージュは原作者と作画が分かれています。
マツキタツヤ先生が原作を、宇佐崎しろ先生が漫画を務めています。
また、このタッグでの読み切り『阿佐ヶ谷芸術高校映像化へようこそ』が週刊少年ジャンプ2017年9号に掲載されました。

 

 

2.練り込まれたキャラクター設定

『アクタージュ』の主人公の少女、夜凪景は作中でも屈指の天才です。
卓越した演技力を駆使して様々な役を演じ、そのたびに新たな一面を見せてくれるのです。
無限の可能性を表現する夜凪景ですが、彼女の用いる演技法は「メソッド演技」とよばれるものです。

a.メソッド演技とは

みなさんは「メソッド演技」という言葉を聞いたことがありますか?
一種の演技法なんですが、ぼくはこの漫画を通して初めて知りました。
簡単な解説が原作でされていましたので、以下に引用します。

その役柄を演じるためにその感情と呼応する自らの過去を追体験する演技法

(『アクタージュ』第1話より引用)

主人公の少女、夜凪景はメソッド演技をデビュー前からすでに身につけており、『アクタージュ』においてはこの演技法があらゆる意味で肝となっています。

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出典:『アクタージュ』 コミックス1巻より

 

b.メソッド演技による夜凪景の人間性の深堀り

まず「自らの過去を追体験する」というところがポイントとなってきます。

作中での夜凪景は圧倒的な天才として認識されています。
天才とは理解されにくいものだし、多くのフィクションではそのように描かれています。

けれども夜凪景の場合は「理解しにくい」という現象が起きにくい。
それは彼女が役を演じるたびに、過去の記憶と心情を深く掘り下げていくためです。

彼女はすでに母を亡くし、父は家から出ていき行方知れず。
過酷な境遇においても明るく振舞い、たった一人で幼い妹と弟を育ててきました。
メソッド演技によって、そんな彼女の時に温かく時に悲しい思い出が示され、感情がダイレクトに伝わってくるのです。

また感情を利用するということで、新しい役を演じるために多くの人と触れ合い、新たな喜びや悲しみを知っていくわけです。
演技のために人を知り、絆を繋げていく。
読者もその過程を共に見守っていく。

だからこそ、自然と応援する気持ちや好意が生じていくというわけで。
天才でありながら、読者にとって非常に身近に感じられるのです。

まったくもってうまいやり方だと唸らされました。
作り手からすればキャラを魅せるにはこの上なく便利な方法ですし、読み手にとっても共感しやすい。
まさにいいことづくめ、「メソッド演技」を設定に使おうと思いついた時点でほぼ勝ったも同然です。

また「メソッド演技」を用いることで、ポンコツで努力家の夜凪景だけでなく、様々な顔を見せることができるということも、この漫画の魅力であり強みとなります。
ちなみにぼくは「羅刹女」編の彼女が現状では一番好きです。

 

 

3.注目キャラクター

この物語の大きな魅力の一つとして、「天才同士の出会いとぶつかり合い」という要素があげられます。
この項では、『アクタージュ』に登場する三人の天才俳優を紹介します。

 

a.百城千世子

百城千世子(ももしろちよこ)は大手芸能事務所「スターズ」に所属し、作中では今一番売れている若手女優です。
無邪気で美しいキャラクターで多くの観客から愛され、天使の名で親しまれています。

自分を俯瞰的に見る能力が高く、観客を虜にすることこそが俳優の使命だと信じ、振舞っています。
彼女の人心掌握は徹底していて、共演者にも向けれるほど。
多忙ながらも共演者全員の関連作品をチェックするほどの徹底ぶりを見せます。

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出典:『アクタージュ』 コミックス1巻より

夜凪景いわく、彼女の在り様はまるで「人間じゃないみたい」。

二人の演技スタイルは対極で、それゆえに景が最初にぶつかる天才でもあります。
そんな千世子との共演が、景に大きな変革をもたらすことになるのです。

b.明神阿良也

明神阿良也(みょうじんあらや)は、劇団天球に所属する舞台俳優。
演劇界の重鎮・巌裕次郎の秘蔵っ子。
演劇界の怪物にして、「憑依型カメレオン俳優」の名で知られる天才として登場します。
経験や感情を喰って取り込み、演技として表出するスタイルをとっています。
しゃべりも行動も独特で周囲の人間はよく振り回されていて、役作りのために資格をとって「狩猟」を行うなどなにかと常識の枠から外れています。

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出典:『アクタージュ』 コミックス3巻より

 

演技スタイルは夜凪と通じるところがあり、彼自身「俺が同じタイプだから分かるんだ」と言及しています。

c.王賀美陸

王賀美陸(おうがみりく)は映画俳優としてハリウッドで活躍し、リッキーの愛称で親しまれています。
15歳のころ、演技経験がなかったにも関わらず、デビューから数ヶ月で国民的な人気を獲得します。
その翌年には、主演を務めた映画で俳優賞を総なめ。
そしてスターズを捨てたという作中でも異例の経歴を持っています。

俳優となる前から圧倒的なオーラを持っていた、まさしく「天賦の才」の持ち主。
「何を演じても王賀美陸」といわれるが、これは貶されているのではなく賞賛の意で使われている文句です。

たとえるなら藤原竜也みたいなものでしょうか。
何を演じても藤原竜也。
何を演じても濁点がつく。
ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛
はい、違いますね。

冗談はさておき、彼もまごうことなき天才です。
その規格外の存在感で役すらも喰い、先輩俳優に「生まれついてのキリストのような存在」とまで言わしめるほどです。

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出典:『アクタージュ』 コミックス8巻より

 

 

彼ら彼女らが夜凪景とどのように関わっていき、どのような物語を展開していくのかはぜひともあなたの目で確かめてみてください。

 

 

4.舞台化も決定

『アクタージュ』ですが、なんと舞台化も決定しました。
講演は2022年。
演目は「銀河鉄道の夜」編。
岸田國士戯曲賞を受賞した劇作家・演出家、松井周が手がけます。
ぼくも都合がつけば、ぜひ観に行きたいです。

また、主演の夜凪景役はオーディションによって選出されるそうです。
求められるレベルは高そうですが、「我こそは!」と思う方はぜひ応募してみてはいかがでしょうか?
ぼくは大根どころかごぼうのような演技しかできないので、応募する可能性は一ミリもありません。