どうも、トフィーです。今回は『鬼滅の刃』について、その人気の理由を分析していこうと思います。
その勢いたるや特定の巻が入荷待ちだったり、今や無惨様や柱が料理したりするほどです。正直に言えば、ここまでウケるとは思っておらず、一過性のものだと思ってました。
けれども、作品の面白さ自体には納得です。そこまで売れてるならと5冊まとめて購入してみたら、気がつけば全巻読了しているくらいには面白かったです。
①アニメ化の影響
やはり火付け役としての大きな役割を担ったのは、2019年のアニメでしょう。
Google Trendを用いて、作品が発表された2015年2月15日から2020年2月15日の検索数の推移を調べてみると、以下のグラフのような結果が確認できます。
(https://trends.google.co.jp/trends/?geo=JP)
『鬼滅の刃』は昨年4月から9月にufotableによってアニメ化され、その圧倒的な作画と演出と、OPEDに人気歌手のLisaを起用したことも相まってファンを爆発的に増やしました。
検索数が最大の状態を100とした場合、19年3月30日までには1か2がずっと続いています。3月31日~4月6日が4、4月7日~13日では7となりそれ以降も上昇傾向。これはアニメ化のタイミングとほぼ一致します。メディアミックスの影響力がいかに大きいかを再確認できますね。
②テンポの良さ
ここからはネタバレを含みます。アニメ化後の話も含みますので、その点をご了承のうえお読みください。
アニメ化によってブームが訪れたことは疑う余地がありません。けれども漫画自体が面白くなければ、いくら優れた製作陣によって映像化されようともこれほどの人気を獲得することはなかったでしょう。
名作は最初から面白い
というわけで内容の分析に入ります。
まず最初の数巻時点では、確かに面白くはあるけれども、ここまで爆売れするほどの内容であるかといえば決してそうだとは思いません。実際に連載当初では名前すらも聞きませんでしたし、自分で目を通してみてもそう感じます。
1話だけを比較してみても、『ONE PIECE』や『NARUTO』、『進撃の巨人』と比べてみれば、飛び抜けた面白さがあるというわけでもありません。というのも「濃度」が違うのです。
以下にそれぞれの一話の要素を列挙します。まだ読んでおらず、ネタバレが嫌な方は飛ばしてください。
『ONE PIECE』
- 海賊全盛の世界観を説明。
- ルフィとシャンクスの正義感を描く。シャンクスを馬鹿にされたことで山賊へ歯向かうルフィと、片腕を失ってもルフィを守るシャンクス。
- トレンドマークの麦わら帽子への意味づけ。
- ルフィの夢とその動機付け。
- ルフィの成長とこれからの冒険への期待感。
『NARUTO』
- ナルトの境遇と過去の描写。
- 火影になるという主人公の夢と、「認められたい」というその動機の説明。(イルカ先生という最初の理解者の獲得)
- 命を賭してナルトを守り、自身の過去と重ね合わせて涙するイルカ先生との強い絆の形成。
- 落ちこぼれからの成長、禁術会得。
- 格上への勝利。
- アカデミー卒業。
『進撃の巨人』
- 世界観の説明。(巨人の存在と、人類との力関係。王による統治のもと、壁に守られてきた人類には100年間の平和が続いていた。)
- 調査兵団に入り、外の世界を知りたいという主人公の夢。
- 張り巡らされる伏線。(主人公はなぜ泣いていたのか? 地下室の秘密とはなにか? 王政府の方針への謎)
- 次回への期待感。(巨人に壁を壊されたシーンで終わる)
『鬼滅の刃』の優れている点は?
家族愛と妹を人間へと治すという目的は提示されてはいますが、鬼や時代についての説明が少ないために世界観の説明は薄い状態です。また妹を治すという主人公の目的への意識も、「生殺与奪の権を他人に握らせるな‼︎」のセリフによって弱く感じてしまいます。
これはあくまでも個人の感想ですが、一話時点では、いやその数巻後も含めても、格別に『鬼滅の刃』が優っているとは思いません。
では上記のような人気作と比較した場合の、『鬼滅の刃』が優れている点とはなんでしょうか。
それは、話のテンポの良さです。そしてそのテンポによって読者を飽きさせずに惹きつけながら、段々とギアをあげていき、面白さを爆発させていくタイプの漫画です。
『鬼滅の刃』はとにかく展開が早い。漫画の巻数が一桁であるにも関わらず下弦の鬼は全滅し、柱が死に、上弦の鬼との戦闘も描かれます。
これだけ超スピードで話が進むのにも関わらずに、キャラクターの魅力やストーリーの面白さを演出できているのは、作者の優れた構成力によるものだと言えるでしょう。
③王道ド直球の面白さ(伝統の踏襲)
三つ目はジャンプの伝統である、「友情、努力、勝利」をしっかりと踏襲している点です。
この漫画では同期が引き立て役とならず、しっかりと成長していく様が描かれます。共に生き残ってより絆を強くしていくのです。
特に伊之助の描写ではそれが顕著で、獣が人の心を獲得していくといった構成は、王道ながらも感動できるもの。上弦の弐との戦いでは、多くのファンが涙したことでしょう。
また『鬼滅の刃』には、主人公の強さに説得力があるのです。修行描写を前半に描き、ジャンプに求められる努力型主人公像を形成。謎の面の人物も登場させることで、どこかミステリアスな雰囲気も醸し出し、飽きられがちな修行描写であるにも関わらずワクワクとさせる構成となっています。
それからも主人公の修行は続きます。ひたすら修行し、強くなり生き残るという努力のスパイラルを続けているのです。だからこそ、努力と勝利にも説得力があり、ストーリーが熱く滾るものとなっているのです。
『鬼滅の刃』は、他の要素でも、連綿と続くジャンプの伝統をしっかりと組み込みつつ、ある程度のオリジナリティーも出しています。これは簡単なようでいて非常に難しい芸当でしょう。
わかりやすい悪役像もこれに当たります。無惨様がマジ無惨です。圧倒的な強さと、鬼たちの上に立つ絶対的カリスマ性、そして鬼を作り出せるという唯一性は、物語のラスボスとしての魅力は十分でしょう。
また、魅力的な技の数々は少年の心をがっしりと掴んだことでしょう。呼吸法や剣技の型など、思わず真似したくなるような名前をつけられています。大人の方でも、小中学校を思い返してみてください。クラスのワンパク男子たちが「北斗百烈拳」や「螺旋丸」、「月牙天衝」などの必殺技を叫んでいたと思います。
④幅広いニーズを狙った工夫
恋愛描写が薄いこともファンの獲得に貢献したのではないでしょうか。恋愛描写は劇薬です。下手に扱えば、ファンが離れる原因となりかねません。
たとえば、「AとBがくっついちゃったから、この漫画はもういいや」とか、「CがDに惚れる理由が納得いかん」とかいった理由から読むのをやめてしまう層は意外といるのです。
また、異世界をかんじられる点も、最近のライトノベル界隈の流行と合致しているのかなと思います。大正時代という多くの少年に(あるいは大人ですらも)馴染みのない時代に、鬼を登場させることで、異世界を演出しています。
もう一つ、ライトノベル界隈と関連してモノローグが多いことも挙げられます。最近の読者は、とにかく分かりやすいものを好む傾向があります。
まとめ
①アニメ化の影響
②テンポの良さ
③王道ド直球の面白さ(伝統の踏襲)
④幅広いニーズを狙った工夫
以上が、『鬼滅の刃』がここまで人気になった要因だとぼくは思います。「他にも、こんな要素が良かったんじゃない?」といった意見があれば、ぜひぜひ教えてください。
長くなりましたが、今回はここまで。さらば。