貴族の普段着である直衣が欲しいAuraです。でも軽く調べたところウン万円するみたいなのであきらめました 笑
さて、今回ご紹介しますのは、『平安貴族 嫉妬と寵愛の作法』という本です。
平安貴族 嫉妬と寵愛の作法(Amazonへのリンクです)
本書の魅力は、平安時代の貴族の生活や日常を、分かりやすく解説しているところにあります。
「貴族の暮らしってどんな感じだったんだろう?」と気になるけど、ライトな本で読みたいという方にうってつけの構成になっています。
表紙からしてポップな感じなので、とっつきやすいのではないでしょうか 笑
「貴族の実生活」を知ることの意義
本の内容についてのご紹介に入る前に、僕の所感を軽く書いておきます。
「貴族の実生活」がどんなものだったかイメージできる人はそう多くないんじゃないかな?と個人的には思っています。
僕たちは学校で、『枕草子』や『源氏物語』など、数多くの古典作品を習いましたが、そこで「時代背景とか文化が分からんから、内容も入ってこない……」という壁にぶち当たることも少なくないでしょう。
現代を扱う作品であれば、そういったものへの解説は少なく済みますから、内容になじみやすいですからね……笑
本書を読み、平安時代の貴族文化を理解すれば、古典文学への理解をもさらに深めることになるのです。
文学的なことを抜きにしても、当時の習俗が分かるということそれ自体に楽しさがあるのではないかとも思います。
そして、ただ雅なだけじゃない貴族の面白おかしい実態が分かっちゃいますからね 笑
では、ここから『平安貴族 嫉妬と寵愛の作法』の特長や内容についてご紹介していきます!
特長と内容
本書の章立てと、掲載している事項は主に以下の通りです。
一章 後宮の作法
……宮仕え、女性貴族
二章 暮らしの作法
……日常、食事、服装、医療・薬、信仰
三章 通過儀礼の作法
……幼少期、青年期、老齢期
四章 年中行事の作法
……行事
五章 住まいの作法
……住居、娯楽
出典:繁田信一 監修『平安貴族 嫉妬と寵愛の作法』GB(2020年)
本のタイトルには「嫉妬と寵愛の作法」と書かれているので、恋愛関連のことを中心に載せているように思えるかもしれませんが、こうして見ると、貴族文化全般を広く扱っていることが分かりますね。
またこの他にも、コラムや平安時代の年表なども載っています。
各章には、対応する「〇〇の作法」がそれぞれ10~20個ほど収められています。
一章の「後宮の作法」には15個、二章の「暮らしの作法」には22個……といった具合に、全部で70個近くあるという充実した内容になっています。
たくさんありますけれども、ひとつの作法につき「解説文1ページとイラスト1~3ページ」で書いてあります。
なのでスラスラ読めますし、イラストも多いのでイメージがつかみやすいです。
具体的な中身としましては、
「平安時代の美人は丸顔でぽっちゃり体型」
「結婚相手の素顔を見られるのは、基本的に初夜を過ごした翌朝」
といった、わりと定番(?)な知識から、
「貴族の持つ見た目が豪華な太刀は、実戦では役に立たない」
「雪が降ると男性貴族たちは雪だるまを作って遊んだ」
のような、意外に思われることまで書いてあります 笑
せっかくなので、次項では2つの「作法」について、内容を一部引用しご紹介しようと思います。
紫式部は初出仕の日に職場イジメに遭った
結婚後3年で夫と死別した紫式部は、かの有名な『源氏物語』を書くことで現実逃避をしていました。
この物語が宮中で高い評判となり、これをきっかけとして一条天皇の中宮である彰子に仕えることになりました。しかし……
そして迎えた初出仕の日。初日は誰だって緊張するもので、紫式部にしても同様。しかし、それ以上に紫式部の心にダメージを与える出来事が宮中では待ち受けていた。イジメである。周囲に無視され、ショックを受けた紫式部は出仕を拒否して5カ月ほど引きこもってしまう。
(中略)
こうしたイジメへの回避策として紫式部がとったのが、バカキャラ作戦である。「自分は“一”という漢字も書けないトロい女ですよ」というフリをしたのだ。嫌味に対し間の抜けた返事をすることで、同僚たちは紫式部を「才能を鼻にかけない、おっとりした女性」だと認識するようになったという。
出典:繁田信一 監修『平安貴族 嫉妬と寵愛の作法』GB(2020年)
うーん、いつの時代でもやっかみはコワイコワイ。
大変な目に遭っていた紫式部ですが、一方で『紫式部日記』に清少納言の悪口を書いたりもしてますし、ただ受け身な女性だというわけでもないですね。ドロドロしてるなぁ……笑
労働時間は4時間程度だが、たまに夜勤
現代社会では8時間労働(+残業)が基本ですが、平安の貴族たちは違っていた……!!
出勤時間も早かった。日の出が早い夏至には4時30分、日の出が遅い冬至でも6時40分には、職場である宮城の門が開いていたのである。
仕事は曹司(ぞうし)と呼ばれる部屋で行った。始業時間は早いが、仕事が終わる時間も早かった。勤務時間は3時間半~4時間程度で、夏場は9時30分、冬場は11時過ぎには退勤した。
午前の仕事が終わっても帰宅せず、職場に残って働くことを命じられた人もいた。これを「宿直(しゅくちょく)」という。夜の勤務を「宿」、昼の勤務を「直」と呼び、どちらかだけを担当することはなく、午後から翌朝まで働いた。
出典:繁田信一 監修『平安貴族 嫉妬と寵愛の作法』GB(2020年)
労働時間は長くても4時間程度って、現代人の半分しか働いてない!
たまに夜勤するとはいえ、これは羨ましすぎる……!!笑
まぁ、当時は今と違って空調設備がありませんから、夏なんかは暑くなる前に仕事を終えるのが合理的ではありますよね。
おわりに
『平安貴族 嫉妬と寵愛の作法』という書籍のご紹介をしました。
「貴族の生活や文化をライトに読みたい!」という方へおすすめできる、貴族の日常が幅広く、簡潔に分かる良書です。
王朝文化について、さらに詳細かつ学術的に書いている本は多々ありますが、こちらは入門として気軽に読めるという点が大きなメリットでしょう。
僕自身、日本文学部出身の者ですが、こういうゆるい本も好きなんですよね 笑
ソファに寝そべりながらでも読めますし……笑
もちろん、この本をきっかけとして関心が深まったら、専門書などを読むのもいいと思います!
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